ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/10
#twnovel 宇宙の一角で、突如星が消える現象が発生した。しかもその現象は急激に地球方向に向かっていた。驚天動地の現象に対処できるはずも無く、やがて地球も太陽系ごと掬い取られた。星々は中央が細い巨大な容器に納められ、一つずつ下へと落ちていった。宇宙が終わり、星時計が産まれた。
2012-08-10 11:16:18#twnovel 本日からコックマーケット82が開催される。年に二度催されている同人料理の祭典で多くの参加者が集まるが、近年はカレー風味であるだけで売上が三割違うと言われ、売上目的で食べたこともない既存の商業料理をカレー風味にしただけの、いわゆるカレー同人が増加し物議を醸している
2012-08-10 11:44:47「過度な競争はいけない。参加することに意義があるのだから!」という世界中の声が高まった時代のオリンピック。予選は廃止された。参加できるのは、各競技につき3人まで。参加することに意義があるのだ。全ての選手は金・銀・銅のメダルのいずれかを手に入れ、にっこりしている。 #twnovel
2012-08-10 12:01:21#twnovel 「思慮深くありなさい」瞑目した師匠は、それだけ言って部屋を出た。何が悪かったのか?ただ、疑問の答えを求めただけだ。師匠はなんにでも答え、導いてくれる――私のどこかが「それでは駄目だ」と囁き、次の瞬間にそれは疑問となった。全ての疑問は師匠が答えてくれるのだから。
2012-08-10 13:17:21#twnovel 中古のクルーザーを手に入れて海での生活を始めた。プランターで花を育てていると、ときどき海の者が買いにくる。支払いは珊瑚や貝や錆びた金貨。ちょっとした小遣い稼ぎだが、髪に花を挿した美女から投げキッスを貰うのは悪くない、たとえ下半身が魚でも。さて次はどの種にしよう?
2012-08-10 19:59:01#twnovel 最近は分類タグやら参照リンクが現実世界を浸食している。人を含め様々な事物から無数の蜘蛛の糸めいたものが伸び、光の加減で煌めく透明な説明文字がついている。目の前の恋人。本人は気づいていないらしいが、後ろ髪から伸びた銀糸が、浮気相手に繋がっている。しがらみの可視化。
2012-08-10 21:16:50私の隣に寄り添う君は何も言わない。暗い空の月明かりの下で、人が作り出した眩しい芸術を見下ろす。高台の夜風を涼しそうに受ける彼の横顔を見つめる。視線に気付いた君は、私に向かって綺麗に笑ったよね。記憶の中の君は、こんなに綺麗なのになぁ。私は、夜空を一人見上げた。 #twnovel
2012-08-10 21:58:44山の上の建物の光や、鉄塔の上の赤い光。小さい頃はどれも星だと思っていた。星ではないと教わる度に、私の星空はどんどん狭くなって、代わりに本物の星や星座を覚えた。ベガ、シリウス、サソリとオリオン。見上げても、星は殆ど見えないけれど、いつか広い星空に出会う日のため。 #twnovel
2012-08-10 22:16:38#twnovel あれは本当は呪いだった。人は誰も死ななくなった。誰も。けれど赤子が生まれることもなくなった。いつしか、自分の生に飽きた者は、小舟に乗って海原へでていくようになった。そんなことは無駄なのに。決して死ねない人を乗せた、どんな嵐にも沈まない小舟が、あちこちの海を漂う。
2012-08-10 22:57:12苦難の旅の末、勇者が魔王の城で見たのは固く抱き合う姫と魔王。2人は駆け落ちしたのだと言う。「彼は姫ではない生身の私を見てくれる。」姫の冷たい瞳と魔王の剣が向けられる。「彼女は我のもの。この世界も。」強く繋がれた2人の手。敵わないと勇者は悟った。愛が世界を滅ぼす。 #twnovel
2012-08-10 23:25:26縁日で掬ってきた文字をプールに放した。家ではこれ以上文字を飼うことはできない。母親にそう言われたからだ。学校のプールなら水泳部の練習の時に世話をすることができる。月明かりと夜風が水面に罫線を引く。文字たちは隊列を組んでは散開、組んでは散開し、物語を紡ぎはじめた。 #twnovel
2012-08-10 23:30:25#twnovel 「あたくしの耳が凍ってしまいましたの。助けてくださらない?」大雪に見舞われた翌朝、我らのラボをいの一番で尋ねてきたのは、うさぎ夫人だった。お湯を沸かして飛び出すと、夫人愛用のうさ耳録音機が、雪に埋もれて凍っていた。「なぜここに…?」「雪の降る音を、同封したくて」
2012-08-10 23:40:27#twnovel 僕達人間はね、植物なんだよ。正確に言えば人間は植物の夢からできたんだ。彼らは動けないから、人間になっている夢を見ているんだよ。つまり私たちが現実だと思ってる今が植物にとっての夢。わかってくれたかな。植物は僕達なのだよ。ーーー 「あいつらは?」「新手の宗教だよ」
2012-08-10 23:48:25夏休みが始まるころ、銀行は少し忙しくなる。友だちを下ろしに来る子どもが増えるからだ。通帳にある友だちを金庫から出して記憶が失われていないか確認する。前回よりも少し成長したぶんが利子。最近はレンタルに押されぎみだが「たった一人の親友」はまだまだステータスなのだ。 #twnovel
2012-08-10 23:49:33