偽問題設定1

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金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(前提1)ある悪徳Aがあるとしよう。レイシズムでもホモフォビアでも、何か思い当たるものを当てはめてもらえばいい。同時に、その悪徳と一般に関連があると信じられている別の特性Bがあるとしよう。ナショナリズムでもセクシズムでも、何か思い当たるものを当てはめてもらえばいい。

2012-08-12 02:14:51
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(前提2)何らかの物差しを使えば、悪徳Aと特性Bの強さを測定できるとしよう。測定された結果を、それぞれ悪徳aと特性bとする。そうすると、両者の関係性が明らかになる。例えば、両者は区別する必要がないほど一体的な関係なのか、関連はあるけど別の次元の概念として論じるべきものなのか。

2012-08-12 02:15:03
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(前提3)分析の結果、悪徳Aと特性Bは同一概念と呼べるほど密接な関連はないものの、独立だとは到底いえないほど強い相関関係があるとわかったとしよう(r=0.5とか)。要するに、悪徳aが強い人は特性bも強い傾向がある/特性bが強ければ悪徳aも強い傾向があるということだ。

2012-08-12 02:15:16
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(前提4)ただし、物差しを使って測定した悪徳aは案の定、問題視している悪徳Aと強い関連があるとわかったものの、特性bは(悪徳aの影響を除去すると)悪徳Aとは無関係だとわかったとしよう。

2012-08-12 02:15:40
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(問題1)この場合、特性bが強いという事実に対して悪徳Aの持ち主であると非難する行為は妥当かどうか。

2012-08-12 02:15:54
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(前提5)数は少ないながらも、「悪徳aは強いけど特性bは弱い」とか「悪徳aは弱いけど特性bは強い」という人たちがいることもわかったとしよう。「悪徳aと特性bがいずれも強い人」は悪徳Aに賛成、「いずれも弱い人」は悪徳Aに反対、ズレのある少数派は是々非々で判断している様子だとしよう。

2012-08-12 02:19:57
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

(問題2)この場合、悪徳A=特性Bとして一体的に批判する問題化様式は、妥当といえるかどうか。

2012-08-12 02:21:01
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

金先生(@han_org) の問題を考えてたら推定無罪とか馬鹿なことを思ってしまった。こういうのを理論的に考えられるようになるのは訓練なのか、はたまた…

2012-08-12 02:38:25
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

例えばナショナリズムの傾向の強さとレイシストに相関がみられたとして、とあるナショナリズムの傾向が強い人をレイシストだと批判する妥当性はあるか。これは貧困と犯罪を結びつける感じだよな。相関があるってだけ。

2012-08-12 02:44:57
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

これって、「よって妥当性はない」までどう展開させればいいんだろ。

2012-08-12 02:45:48
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

いや普通に相関関係は因果関係ではないので、妥当しません。っでだめか。

2012-08-12 02:52:03
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

因果関係の証明は難しいのではなかったか。しかし統計では相関を因果として利用する場合が多いとどこかで読んだが。

2012-08-12 02:56:37
みねぷわ .。.:*☆ @koe0505

いや、因果関係があったとしても批判は妥当ではない。困った…|ω・`)コソ

2012-08-12 03:01:14
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

拾ってくれてありがとうw RT @koe0505: いや、因果関係があったとしても批判は妥当ではない。困った…|ω・`)コソ

2012-08-12 07:19:33
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

そう、前提4から、かりに因果関係を考えたとしても批判は妥当ではないのですね(構造方程式モデルでは「直接効果がない」と表現する状態)。ところが、前提3から、批判は結果として間違ってはいない場合も少なくないと推定できる。それをどう考えるか。

2012-08-12 07:28:18
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

学術的な文脈からいえば、わるくすると「愚かな批判だ」で終わりになる問題でしょう。自説に有利な因果モデルを組んでも間接効果しか持たない要因を、まるで直接効果を持つようなかたちで批判するというのだから。ところが、実践の文脈ではまた別の論理が重要視されたりしますからね。

2012-08-12 07:38:41
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

レイシズムとナショナリズムの例でいうと、レイシズムは非倫理的だとされているので尻尾をつかむことは難しいけど、ナショナリズムは相対的に表出されやすいので指摘するのはたやすい。両者に強い相関関係があるなら、レを批判するのにナを利用して何が悪いということになりがち。

2012-08-12 07:54:24
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

統計のアナロジーでいえば、第1種の過誤と第2種の過誤のどちらを重視するかという話ですね。第1種の過誤は真実を見落としてしまうこと、第2種の過誤は誤りを見過ごしてしまうこと。

2012-08-12 07:56:50
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

刑事裁判でいう「疑はしきは罰せず」は、絶対に第2種の過誤(=冤罪)が起こってはならないというスタンスによるもの。一方で、医療界には「疑わしければ再検査」という基本ルールがあります。これは、絶対に第1種の過誤(=病気の見落とし)があってはならないというスタンスによるもの。

2012-08-12 07:58:11
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

不正義に対応する実践の場面では、現実にある社会的資源の非対称性に対抗するために、あえて「加害」側と「被害」側に異なる基準を設けることも少なくない。「加害」側には第1種の過誤を認めず、「被害」側には第2種の過誤を認めないというように。(したがって、時として司法と相性が悪い場合も)

2012-08-12 08:05:06
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

でも、そういうおおざっぱなスタンスで不正義に対応しようとするとき、どうしても、ある種の「冤罪」が発生することを避けられない。例えば、ナショナリズムをレイシズムの源泉の一つとして批判するとき、その批判が適合的な事例は多いだろうけど、当てはまらない事例もある。

2012-08-12 08:10:32
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

当てはまらない事例の存在は、どうしたって、批判の効力を削いでしまうことになるだろう。どうしようもない場合だとか、緊急事態でないかぎり、できるだけ精緻にターゲットを絞って正確な批判を繰り出すことが、実践の場面でも重要だと、ぼくは思う。

2012-08-12 08:14:33
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

問題はそれだけではない。ナショナリズム批判なんかだと傷つく人は少ないけど、あるマイノリティを護るために不正義を糾弾しようとして発した批判が、別のマイノリティ(あるいはマイノリティの中のマイノリティ)を抑圧することになったりする場合もあるからね。

2012-08-12 08:15:25
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

まさにまさに。 RT @6_so_e_no: @han_org 薬害エイズの際にありましたね。血友病患者の薬害エイズを守るために、ゲイのエイズとは差別するって具合です。

2012-08-12 08:18:52
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

目の前の問題に対処しようとして批判を繰り出すときでも、それが過誤を含んだものであるということに、つねに謙虚でいたほうがよい。

2012-08-12 08:20:56