かおるさとーさんの『氷菓』最終話 解説

約半年間、アニメと併せて毎週楽しみにしていました。 ありがとうございました。
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かおるさとー @kaoru_sato

千反田さんはこの場所が、神山市陣出が終着点です。進学でこの場所を一時的に離れることはあっても、別の場所に骨をうずめることはないでしょう。それを悲しいとは思わないと言いました。そのために何ができるか、彼女は既に考え始めています。

2012-09-22 22:57:30
かおるさとー @kaoru_sato

彼女がかつて言った、「パーツではなくシステムを知りたい」という言葉は、このことを考えていたから出た言葉ではないでしょうか。システムは一つではありません。彼女は自分に合う方法を探していたのかもしれません。そんな中、彼女は奉太郎に出会い、彼の能力を知りました。

2012-09-22 22:57:59
かおるさとー @kaoru_sato

しかしその能力は、やり方は、彼女にはできない方法です。文化祭のときも、彼女なりにいろいろ動いてはいましたが、交渉役をしっかりと果たせたとはいえませんでした。入須先輩にも指摘されましたし、本人ももうこりごりと言っていました。では彼女にできることとは何なのか。

2012-09-22 22:58:23
かおるさとー @kaoru_sato

千反田さんは「商品価値の高い作物を作ることで、皆で豊かになる方法」を選びました。自分に合っているから選んだわけではないようです。もう一つの「経営的戦略眼を持つことで生産を効率化し、皆で貧しくならない方法」が自分に合わないから、消去法で前者を選んだのかもしれません。

2012-09-22 23:05:12
かおるさとー @kaoru_sato

商品価値の高い作物を作るとは言いますが、商品開発が他のあらゆる場所で進み、競争が激化している今の時代、独自の商品を作り出すことはそう簡単にできることではありません。できれば千反田さんは、経営的戦略眼を持ちたかったのではないでしょうか。

2012-09-22 23:05:56
かおるさとー @kaoru_sato

(入須先輩にある種の尊敬と憧れを持っているのも、そのためかもしれません。女帝陛下は千反田さんが持ちえない人心掌握術によって、効率的に物事を推し進めることができますから)

2012-09-22 23:06:13
かおるさとー @kaoru_sato

それが叶わなくて仕方なく前者を選んだのだとしたら、彼女はこれからもいろいろと悩み、苦労を重ねるでしょう。失敗もたくさんするかもしれません。しかしそれもきっと覚悟の上なのでしょうね。彼女は責任を果たしたいと、役目を全うしたいと思っていますから。

2012-09-22 23:06:34
かおるさとー @kaoru_sato

たぶんこんな風に自分のことを語った相手は、奉太郎が初めてなのではないでしょうか。彼女が奉太郎に特別な想いを抱いているのは明らかですが(アニメでははっきり恋慕の情を抱いているように映りますね)、特別な相手だからこそより自分のことを知ってほしいというのは、自然なことだと思います。

2012-09-22 23:06:57
かおるさとー @kaoru_sato

ただ、その知ってもらいたい中身は普通とは少し違うもので、とても軽々しく話せることではありません。それでも話したというところに、千反田さんの奉太郎に対する想いの深さが窺えます。別に何かをしてもらいたいのではなく、ただ知ってほしかったのだと思います。千反田えるという人間のことを。

2012-09-22 23:07:18
かおるさとー @kaoru_sato

対して奉太郎はどうでしょうか。将来の夢や目標は特に持っていないようです。真剣に向き合える何かがあるわけでもありません。いずれ特別な何かを胸に抱くことがあるのでしょうか。彼は省エネ主義を標榜していますが、果たして省エネで何か特別なものを獲得できるでしょうか。

2012-09-22 23:07:49
かおるさとー @kaoru_sato

なにより、千反田える。奉太郎にとって彼女は、その“特別”になりうる存在です。省エネ主義を致命的に脅かすほどに。しかし、彼女の傍らにい続けることが、彼にできるでしょうか。特別な世界にいて、大きな責務を背負っている彼女の傍に立つことは、今の彼にはあまりにも難題です。

2012-09-22 23:09:06
かおるさとー @kaoru_sato

(それに恋愛ごとを省エネで扱えるかというと、それは微妙です。省エネとは無駄を省いて物事を効率的に、低コストで済ませることですから、感情を揺さぶられ、ときに論理では扱えなくなる恋愛ごとを、手短に済ませることができるとはとても思えません。執着無しには扱えない気がします)

2012-09-22 23:09:32
かおるさとー @kaoru_sato

まだ彼は高校1年生です。その身に何の責任も負っていません。特別な才能を持っているかもしれないとはいえ、千反田さんの諦めた分野を代わりに修めるということを軽々しく言えるはずもありません。まして、省エネ主義の彼が、自分から責任を負うなど。

2012-09-22 23:10:15
かおるさとー @kaoru_sato

も、彼は言いたかったはずです。想像の中とはいえ、千反田さんに向けて口にしたあの言葉は、彼の素直な気持ちが込められているのではないでしょうか。彼が今回、千反田さんからの頼みを二つ返事で受けたように、その言葉も気軽に言えたならどんなにかよかったでしょうね。

2012-09-22 23:10:53
かおるさとー @kaoru_sato

言いたくても言えないことはあります。里志が摩耶花の想いにずっと応えられずにいたように。千反田さんが伯父のことを、自分の過去を他人になかなか話さなかったように。摩耶花もあの笑顔の裏でいろんな想いを抱えているでしょう。しかし口にできない想いは誰もが少なからず持っています。

2012-09-22 23:13:58
かおるさとー @kaoru_sato

それがあの瞬間、あのときに、奉太郎の胸にはっきりした形で現れたというのは、彼の成長の証だと思います。あんな言葉を口にしようとするなんて、4月の頃の彼ではありえなかったはずですから。いつの日か、言いたかった言葉をはっきりと口にすることができるでしょうか。

2012-09-22 23:14:16
かおるさとー @kaoru_sato

彼らが今後どうなるかはわかりません。2人はまだ高校生で、未来への道はどこまでも伸びています。しかしその伸びた道を、果たしてどこまで共に歩めるのか、先は見通せず、その道のりは遥かに遠い。千反田さんの方がほんの少しだけ先を見てはいますが、彼らはまだ未熟な雛です。

2012-09-22 23:14:39
かおるさとー @kaoru_sato

今の想いがやがて時効になってしまうのかどうかは、彼ら次第です。彼らは未熟ですが、これからいろいろな経験を重ねて大人になっていきます。その中で時効にさせないような毎日を送ることができれば、きっと大丈夫でしょう。「きっと十年後、この毎日のことを惜しまない」と言った折木供恵のように。

2012-09-22 23:17:35
かおるさとー @kaoru_sato

細かい話その1。冒頭のカレンダーが4月になっているのですが、4月29日月曜日は休日のはずなのに、平日の黒字表示になっています。昭和の日です。昭和天皇の誕生日です。昭和の頃は天皇誕生日、平成に入ってからはみどりの日、昭和の日は2007年から施行されました。

2012-09-22 23:18:11
かおるさとー @kaoru_sato

細かい話その2。川沿いに咲いている桜は、その鮮やかな色から八重桜か何かかと思いましたが、たぶん染井吉野なのでしょうね。染井吉野は薄桃色で、白っぽい色をしているのですが、咲き始めの頃は濃い桃色になることがあります。飛騨高山の桜の開花時期は例年通りなら4月下旬くらいになるそうです。

2012-09-22 23:18:53
かおるさとー @kaoru_sato

細かい話その3。原作を読んだときははもう少し小さな規模のものをイメージしていたのですが、水梨神社が思っていたよりもずっと大きくて新しい造りであることにびっくりしました。大きな鳥居に広い境内、自動ドアつきの社務所……。荒楠神社も大きな神社でしたが、こちらも負けていませんね。

2012-09-22 23:19:27
かおるさとー @kaoru_sato

(前にも言及したかと思いますが、5話で出てきたあの鳥居は、12話で千反田さんがお参りをした神社みたいですね。水梨神社ではありませんでした。私、勘違いしていました。ごめんなさい)

2012-09-22 23:19:44
かおるさとー @kaoru_sato

細かい話その4。内裏雛とは本来男女雛の一対を指す言葉ですが、今ではお内裏様=男雛、お雛様=女雛、という認識が一般化していますね。この男女雛は天皇、皇后を表します。その下に三人官女、五人囃子、右大臣左大臣、仕丁(衛士)と続きますが、奉太郎が務めた傘持ちはこの仕丁のうちの1人です。

2012-09-22 23:20:21
かおるさとー @kaoru_sato

(仕丁は雛人形の中で唯一庶民を表す役ですが、奉太郎の立ち位置を表しているという意味では、ある意味ぴったりな役どころなのかもしれません。仕丁は3人1組なので、他にも役を務めている方がいると思われます。画面ではよくわかりませんでしたが)

2012-09-22 23:20:49