“individual”(=分割不可能なもの)と「個性」という翻訳語について

はいおくたんさん(@highok)のツイートを中心にまとめました。
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渡邊芳之 @ynabe39

成長というのもやっぱり「学校教育の言葉」なんだろうなあ。おそらく使われるようになったのは明治以降だからまた @highok さんに聞いてみたらいいな。

2012-07-08 22:14:35
はいおくたん @highok

せっかくおもしろいネタ振りをしてもらったのにスルーしてた・・・。 @ynabe39 成長というのもやっぱり「学校教育の言葉」なんだろうなあ。おそらく使われるようになったのは明治以降だからまた @highok さんに聞いてみたらいいな。

2012-09-26 19:41:33
はいおくたん @highok

文脈を正確に掴めないので独り言だけど。教育学には「成長」という言葉を「発達」という言葉と明確に区別して使おうとする傾向がある。おおざっぱにまとめると、「成長」は量的かつ自然な変化を意味し、一方の「発達」は質的かつ意図的な働きかけの結果を意味する場面が多い。

2012-09-26 19:44:02
はいおくたん @highok

「発達心理学」とは言うけど「成長心理学」とは言わないとか、「発達障害」とは言うけど「成長障害」とは言わないとか、このあたりに「成長/発達」の使い分けが見えるような感じ。まあ一般的にはそれほど厳密ではないけれども、教育原理の教科書ではきちんと分けているケースが多いかも。

2012-09-26 19:46:07
はいおくたん @highok

言葉自体としては、「成長」は平安時代の『今昔物語』にも用例があるなど、前近代でも比較的なじみのある漢語なのに対し、「発達」は江戸中期の用例は見られるものの広い範囲に流布したのは幕末のオランダ語からの翻訳以降。

2012-09-26 19:48:16
はいおくたん @highok

明治初期には「発達」ではなく「開発」と翻訳されて大流行するので、渡邊先生のお察しの通り近代的な概念で間違いないような気がする。ヨーロッパでは"develop"という言葉は16世紀以降に使われるようになった、と教育原理の教科書に書いてあった。

2012-09-26 19:51:37
はいおくたん @highok

ただ一般に「発達」という言葉が流行したのは戦後のような気がしていて。ピアジェとヴィゴツキーの流行以後のようなイメージ。日本人だと勝田守一『能力と発達と学習』が決定的な印象。ということで「成長」よりは「発達」のほうが近代ぽいのかな。

2012-09-26 19:53:08
渡邊芳之 @ynabe39

@highok 勉強になりました。そういえば「個性」についてはちょっといま書き物をしています。

2012-09-26 21:11:46
はいおくたん @highok

富野監督は本当に爆弾が大好きみたいで、新造人間キャシャーンの演出回も人間爆弾だったし、ファーストガンダムで唯一脚本としてクレジットされている第14話『時間よ、とまれ』もガンダムに仕掛けられた無数の爆弾をアムロが孤独に解除する話だった。

2012-09-27 00:05:14
はいおくたん @highok

おおー、お仕事楽しみにしております。わけのわからない日本語は結構たくさんありますが、その中でも「個性」は最たるものな気がします。 @ynabe39 そういえば「個性」についてはちょっといま書き物をしています。

2012-09-27 00:14:14
はいおくたん @highok

バルディオスとかテッカマンとか鬱なアニメは数々あるけど、個人的にいちばん鬱なアニメは『闘士ゴーディアン』だと思ってる。

2012-09-27 00:19:36
はいおくたん @highok

「個性」という言葉について、ちょこっと思ったこと。江戸時代には存在しなかった「個性」という言葉が、individualからの翻訳語として明治に誕生したことはほぼ常識だと思うけれども。まず問題は、individualの理解。軽くググってみたら、私の理解とは違う見解がぼろぼろ現れた。

2012-09-27 17:24:53
はいおくたん @highok

in-dividualは、「~できない」という接頭辞inに「分割する」という意味のdivideがくっついた形、よって「分割できないもの」という意味であることまでは、ほぼ常識。ただ、このあとの私の理解は、web上に転がっている多数の見解と異なる感じ。

2012-09-27 17:28:15
はいおくたん @highok

finalvent氏などは「分割できないもの」を「社会を分割していって最後に分割できなくなったもの」と理解しているようだけれども、本当にそうか。分割のスタート地点が「社会」というのは非常に恣意的な見方だと思う。私としては、「一人の人間」を分割することがスタート地点だと思う。

2012-09-27 17:30:39
渡邊芳之 @ynabe39

@highok ああそれは私もそう思います。

2012-09-27 17:32:41
はいおくたん @highok

一人の人間は、さらに細かく分割することができる。一人の人間をどんどん分割していって、それでも最後に分割しきれずに残ってしまう「これ以上は分割不可能なもの」がindividualだと思う。

2012-09-27 17:32:24
渡邊芳之 @ynabe39

@highok 個性の「直接の原語」と思われる"individuality"を調べるとこれも面白いですよ。

2012-09-27 17:34:22
はいおくたん @highok

というのは、「分割不可能なもの」という術語は近代ヨーロッパにいきなり現れたものではなく、プラトンやアリストテレスの古代から存在し、プロティノスやボエティウスを経由し、明らかにエックハルトやクザーヌスにも見いだすことができるような、西洋に古来からある伝統的な思考様式。

2012-09-27 17:35:07
はいおくたん @highok

「分割不可能なもの」という術語が古代ギリシャから明らかに中世まで連続していることを考えれば、individualという「分割不可能なもの」を意味する言葉がその伝統的な思考様式と無関係であるとは普通は考えられない。

2012-09-27 17:36:51
はいおくたん @highok

ということで、individualを「社会を分割していって最終的に残った個人」と考えるのでは、individualという言葉の本質をまったくわかっていない疑いが強い。

2012-09-27 17:38:12
渡邊芳之 @ynabe39

「個性」と「個人(個体)」との関係はどうなっているのか,「個人(個体)」であることは個性の構成要素ではあるけれど全体ではないよねみたいなことをいま考えている。個体差と個性は何が違うのかとか。

2012-09-27 17:39:45
はいおくたん @highok

プロティノスの場合は、同心円状に、タマネギの皮のようにむいていってる感じです。 @The_Oldwiseman 縦ですか?横ですか?

2012-09-27 17:41:47
はいおくたん @highok

「個性=分割できないもの」というテーマについて初めて真正面から書かれた本は、個人的にはプラトン『国家』ではないかと思っていて。『国家』は政治がテーマだとか教育がテーマだとかいろいろな読み方を許容する本だけど、私としてはいずれも付随的な読み方に過ぎないと判断している。

2012-09-27 17:47:05
はいおくたん @highok

プラトン『国家』の前半部分のテーマは「善とは何か」だけど、最終的にプラトンが示す最高の「善」とは「分割されないこと」。『国家』の解説書がここを強調しないものばかりなのは不可解なのだけど、とても重要な事実だと思っている。

2012-09-27 17:50:42
はいおくたん @highok

で、『国家』の後半部分は、「分割されないとはどういうことか」について延々と述べていく部分。ここで一人の人間を分割しては小さすぎて分からないので、喩えとして「国家」を分割して議論を進めるという段取りが、とても興味深いのだった。

2012-09-27 17:53:05