山本七平botまとめ/【空気の研究④】/対象を対立概念で捉え相対化せずに、ただひたすら絶対化することが「空気支配の原則」/~様々な物神によりあらゆる方向から逆支配され金縛り状態の日本人~
- yamamoto7hei
- 6280
- 8
- 1
- 2
26】今から三十年ぐらいたてば、日中国交回復の方法に、さまざまな批判が出るであろう。もちろん、何事であれ、後代の批判を免れることはできないから、それはそれでよい。
2012-10-03 09:57:4627】ただその時の田中元首相の言葉は恐らく「あのブーム時の空気では、ああするより他はなかった」「あの当時の空気を思い起すと、あれでよかったのだと当時も今もそう思っている」「当時の空気を知らない史家や外交評論家の意見には、一切答えない事にしている」という…ことになるであろう。
2012-10-03 10:28:0528】さてここで、空気支配のもう一つの原則が明らかになったはずである。それは「対立概念で対象を把握すること」を排除することである。
2012-10-03 10:57:4729】対立概念で対象を把握すれば、たとえそれが臨在感的把握であっても、絶対化し得ないから、対象に支配されることはありえない。それを排除しなければ、空気で人びとを支配することは不可能だからである。この言い方も抽象的だから、具体的な例をあげよう。
2012-10-03 11:28:0630】一人の人を「善悪という対立概念」で把握するという事と、人間を善玉悪玉に分け、ある人間には「自己の内なる善という概念」を乗り移らせてこれを「善」と把握し、別の人間には「自己の内なる悪」という概念を乗り移らせてこれを「悪」と把握する事とは一見似ている…が全く別の把握の仕方である
2012-10-03 11:57:4331】たとえ両者とも臨在感的な把握であっても、一方は、官軍・賊軍ともに、善悪という対立概念で把握し、他方は、官軍は善、賊軍は悪と把握していれば、この両者の把握が全く違った形になるのは当然であろう。
2012-10-03 12:28:0632】従って「善悪という概念をもっているから、世界いずれの民族でも、対象を善悪で把握する点では同じだ。ただ善悪の基準が違うだけだ」ということにはならない。ここにも、明治的誤解が未だにそのまま残っている。
2012-10-03 12:57:4633】前者はすなわち「善悪という対立概念」による対象把握は、自己の把握を絶対化し得ないから、対象に支配されること、すなわち空気に支配されることはない。
2012-10-03 13:28:0734】後者は、一方への善という把握ともう一方へのその対極である悪という把握がともに絶対化されるから、両極への把握の絶対化によって逆に自己を二方向から規定され、それによって完全に支配されて、身動きができなくなるのである。
2012-10-03 13:57:4435】言いかえれば、双方を「善悪という対立概念」で把握せずに、一方を善、一方を悪、と規定すれば、その規定によって自己が拘束され、身動きできなくなる。更にマスコミ等でこの規定を拡大して全員を拘束すれば、それは支配と同じ結果になる。即ち完全なる空気の支配になってしまうのである。
2012-10-03 14:28:0336】さらにこれが、三方向・四方向となると(日中国交回復のときは、大体、四方向の対象の臨在感的把握の絶対化に基づく四方向支配と私は考えている)もうだれも、その「空気支配」に抵抗できなくなるのである。
2012-10-03 14:57:4437】さて、ここで問題克服の要点は二つに要約されたと思われる。すなわち一つは、臨在感を歴史観的に把握しなおすこと、もう一つは、対立概念による対象把握の二つである。
2012-10-03 15:28:01