山本七平botまとめ/【虚報とは何か③】/情報の総量を掴まない限り、バレない「虚報」/~”虚報発表者”浅海特派員や本多勝一がうそぶいていられる理由~

山本七平著『私の中の日本軍(上)/すべてを物語る白い遺髪/246頁以降より抜粋引用。 (注)…13】から19】の間のツイートがありませんが、番号の振り間違いによるもので、欠落ではありません。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】ではここで大本営にあてはめた虚報作成の原則を「百人斬り」にあてはめてみよう。浅海特派員が入手した情報の総量を知っているのは、原則的にいえば向井・野田両少尉だけである。従って向井・野田両少尉を処刑させてしまえば、この虚報は永久に事実で通る。<『私の中の日本軍』

2012-10-21 12:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

2】従って関係者は皆平然としていられるわけで、それは次の二つの言葉が雄弁に物語っている。《最後の手段として、この二人の少尉自身に直接証言してもらうより他はありませんね。でも、それは物理的にできない相談です。二人は戦後、国民党蒋介石政権に逮捕され、南京で裁判にかけられました。

2012-10-21 13:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

3】《そして野田は1947年12月8日、また向井は1948年1月28日午後1時、南京郊外で死刑に処せられています…惜しいことをしました。ともうしますのは、それからまもない1949年4月、南京は毛沢東の人民解放軍によって最終的に現政権のものとなったからです。

2012-10-21 13:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

4】《もしこの時まで二人が生きていれば…日本人戦犯にたいする毛沢東主席の扱いからみて…死刑にはならなかったに違いありません。そうすれば、当人たちの口からこの時の様子をくわしく、こまかく、全部、すっかりきいて、ベンダサンさんにもお知らせできたでしょうに。/本多勝一

2012-10-21 14:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

5】《「諸君!」にあのように書かれて、私が十分に答えなくても私は一つも損などしない。私の周囲のインテリはあのような指摘があっても、一つも私がかつて書いた新聞記事のような状況がなかったとは疑いませんからね。何か真実かは、大衆と歴史が審判してくれますよ。》

2012-10-21 14:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

6】《鈴木明さんもジャーナリスト、私もジャーナリスト。彼の私の書いた記事によって二人の生命が消えたという見方は、むろん異論はあるが、私のプライバシーを損なわない限り、ジャーナリストが一つの考えにもとづいてお書きになる事は、それが当然だ、私は文句はいいません。/浅海特派員

2012-10-21 15:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

7】おっしゃる通り、情報の総量がつかめない限り、絶対に虚報はバレない。 この点では、海軍などとは比べものにならぬほど完璧である。 従って、以上の両氏の言葉が、いかに厚顔無恥なものであるかは、いずれ情報の全てを検討して読者に証明するが、(続

2012-10-21 15:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

8】続>しかし総量はわからなくとも、どこを欠落させたかを知っている者には、はじめからこれが虚報であることがわかっているそれがすなわち向井少尉の部下であって、彼らをだますことは不可能である。鈴木明氏は、向井少尉の旧部下の言葉をそのまま記しておられる。

2012-10-21 16:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

9】《僕は…向井少尉の部下に当る人が、今京都のさるところで料理屋をやっているという話をきいた。ただ、その人はマスコミなどに語るのを極度に嫌がる人で、正面から取材に行ったのでは、とても応じてくれないだろうということだった。僕はそこの店に客として食事をしにいき、(続

2012-10-21 16:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

10】続>そこのご主人から問わず語りに向井少尉のことをきき出した。彼は向井少尉には好感をもっていない事を初めから明らかにしていたが、こと「百人斬り」の話になるとそんな事誰が信じてるもんですか」といい「一人斬ったなんていう話も信じませんなァ」と吐き捨てるようにいった。

2012-10-21 17:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

11】そういうのが当然であろう。そして総量はわからなくても、何を消したかは、佐藤カメラマンその他の証言でわかる。すなわち虚報の実体は、消した部分が明らかになってくればくるだけ、はっきり姿を現わしてくるのである。

2012-10-21 17:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

12】では何を消したか、系統的指揮権と職務と兵器が消された。野田副官の直属上官である大隊長と向井歩兵砲小隊長の直属上官である歩兵砲中隊長が消され、ついで本人の職務、すなわち副官と歩兵砲小隊長が消され、ついで兵器、すなわち歩兵砲が消された。

2012-10-21 18:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

13】前にも書いたが、軍隊とは系統的指揮権と職務と兵器で成り立つもので、この一つが欠けても成り立たない。従って三つを消せば二人は軍人ではなくなってしまう。確かに向井少尉・野田少尉と書かれ、軍装した写真は載っている。

2012-10-21 18:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

19】それだから軍人だというなら…徴兵保険の勧誘員の退役の佐官だって、何々少佐、何々中佐と呼ばれ、軍装をして町を歩いていた。しかしいかに彼らが軍人らしく見えても、その実体は保険勧誘員で軍人ではない。 というのは退役した彼らには指揮権も職務も兵器もないからである。

2012-10-21 19:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

20】彼にもし部下がいるといったら、それは子分すなわち私兵である。「百人斬り」に兵士が登場すると、否応なく私兵になってしまうのはこのためである。 軍隊には「部下しかいない」ということはありえない。「部下しかいない」のは天皇だけだからである。

2012-10-21 19:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

21】「ドコまで行っても上がある。ホンマに軍隊いやなトコ」とはこのことを歌った歌で、これはおそらく、世界いずれの国の軍隊でも同じであろう。

2012-10-21 20:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

22】『西部戦線異状なし』に、兵士たちが総司令官ヒンデンブルク元帥の噂をしながら「ヒンデンブルクだって、カイゼルの前じゃ不動の姿勢なんだろうなあ」というところがあるが、軍隊経験者でこういった感慨を抱かなかった者はいないであろう。

2012-10-21 20:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

23】その人の前では不動の姿勢を取り「命令」といわれたら絶対に服従しなければならぬ「ある者」、すなわち「上官天皇」のいない軍人はいないのである。…従って浅海特派員はそういった軍隊の本質をまず完全に消してしまった

2012-10-21 21:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

24】これが虚報作成の原則のうち「入手した情報の一部、特に最も重要かつ不可欠の部分を故意に欠落させて……」の部分である。 そうしておいて二人をあくまでも軍人として描く。するとこの虚報の受け手は無意識のうちにそれを補ってしまう

2012-10-21 21:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

25】それが「……その部分を、情報の受け手が無意識のうちに創作して補うよう誘導する」という部分である。すなわち、二人を前述のように、あくまでも第一線の歩兵小隊長という印象を与えるように書く。

2012-10-21 22:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

26】当時の日本人の通念では、歩兵小隊長とは着剣して…散兵の先頭に立ち…日本刀を振りかざして敵陣へ突入するものであった。そしてそう思わせる描写に誘導されると、この架空のニ小隊長の直属上官即ち中隊長までがごく自然に創作されてしまう。これが本多版「百人斬り」に登場する「上官」である。

2012-10-21 22:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

27】いわば「上官」のいない軍人は、天皇以外にはありえないから創作されてしまうわけである。 こうなると「百人斬り」はまさに「虚報作成の原則」の通りであり、これが私か「大本営発表」も「浅海特派員発表」も同じ原則で構成されているといった理由である。

2012-10-21 23:28:06
山本七平bot @yamamoto7hei

28】以上が虚報の原則だが…虚報と、発表された部分と事実との誤差とは関係がないという事である。例えば野田少尉は正しくは野田毅だが、これが記事の一つでは野田巌になっている。これに対して本多勝一記者は注をつけている。「ここは野田巌になっているが本籍の戸籍係によると『毅』が正しい」と。

2012-10-21 23:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

29】勿論ないよりあった方がましであろう。しかしこれは大本営が「先二撃沈セリト発表セシ巡洋艦一ハ、ソノ後ノ調査ノ結果、駆逐艦ナルコト判明セリ」と訂正発表をしたところで、これも、しないよりましであろうが、虚報か否かという問題には関係がないのと同じである。

2012-10-22 00:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

30】むしろ逆であって、虚報ほど、発表された部分の一部は正確か、あるいは正確だという印象を与えるように構成されているのが普通である。この関係は非常に面白いもので、「虚報ではないか」と疑われだすと、虚報の発表者は必ず証人をつれてくるのである。

2012-10-22 00:57:42