◆自分のためのスケッチ:in Twitter 「リブート(その七)」◆

真上犬太氏(@plumpdog)によるtwitter連載小説 第8回目
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真上犬太 @plumpdog

◆コンピュータのように検索結果を1から順を追うのではなく、『拾い読み』をして重要なものだけを取得していく。同時に、いくつもの定義を軸に複数回検索を掛け、同じように拾い読む。勘を機械に持たせるのではなく、勘を扱える存在をネットワークに接続させる、それがNBCの重要コンセプト。◆

2012-10-08 15:27:47
真上犬太 @plumpdog

◆とはいえ、その「勘」というものが経験則と経験値に裏打ちされた情報蓄積の量と、論理思考の統合力に由来するものである以上、『生まれたばかり』のクイにはまねの出来ないことだ。分かっている、分かっているけど、なにか自分が無力な存在のように思えて、毛皮の下の顔が熱を持ってしまう。◆

2012-10-08 15:38:40
真上犬太 @plumpdog

◆『あせらないでいいんだよ。ちょっとづつできるようにするんだ』ともすれば、巨大な情報ストレージの中に没入しそうになる思考を、カピバラは丁寧に導いていく。『ぼくらはどうぐだけど、じぶんでかんがえることもできる。それがどういうことなのかも、そのうち、こたえがだせるよ』◆

2012-10-08 15:51:17
真上犬太 @plumpdog

◆『所在不定性不安:NBCのリブートによって起こる『故障』。プライオリティの焼付け失敗による「人間への従属感」を理解できなくなった個体が主に発症する。自我や自己といった人間性に属する精神作用を強く意識することが特徴。人間に対する反抗・不信感が表出される』◆

2012-10-08 16:08:38
真上犬太 @plumpdog

◆『はい、よくできました』「このぐらい簡単だろ」『そうだねー。でも、あせってけっかをもとめようとして、すぐにしっぱいするよね。だからきみを、じょうほうけいのおしごとにすいせんできないんだよ』ニコニコと笑いながらさっくりと釘を刺すモードに、クイはそっと肩をすくめた。◆

2012-10-08 16:17:36
真上犬太 @plumpdog

◆『りろんじょうこうちくとか、じょうずなんだから、あとはせーしんのあんていをだね……ん? ごめんちょっと』そういったきり、目の前のモードが消える。歩調が少し鈍くなるが、カピバラは別のリンクに繋ぎ、何かを処理中らしい。『だめだよ』伸ばしたこちらの『手』に気が付き、注意が飛んだ。◆

2012-10-08 16:22:38
真上犬太 @plumpdog

◆『じょうほうべっけんは、じゅうはんざい』『そういう仕事も斡旋してるんだろ?』『してない。ぼくたちは』『欺瞞だろ、そんなの』『でも、してないよ』モードの言葉は頑なだった。『ちゃんと、あいてのみもとをしらべて、ほしょうされたところにしかいかせてない』『……ごめん』◆

2012-10-08 16:30:09
真上犬太 @plumpdog

◆『まったく……』ほっとため息をつきつつ、モードはクイに振り返る。『しょうがないね。もうすこし、オリエンテーリングしてからにしよーとおもってたけど、むつかしいしごとをやってもらうよ』「難しい仕事?」その途端、脳の中にポップする画像。「こいつ……!」◆

2012-10-08 16:34:59
真上犬太 @plumpdog

◆『すこし、よのなかっていうものを、べんきょうするといいよ』宇都宮警察所属、遠山佐衛門、と書かれたIDを睨むクイに、カピバラは仔細らしく頷いた。『かれのしごとをほさすること。それがつぎのきみのしごとだ』◆

2012-10-08 16:35:29

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