蓼沼宏一『幸せのための経済学』まとめ

アマルティア・センに始まる厚生経済学。 一般的な新古典派に違和感を持つ人が、本当に社会の為になる経済学を学びたい時、一つの重要な選択肢を示してくれる。
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H.Takano @midwhite

功利主義を批判したアマルティア・センは、福祉評価の基準として「機能」という概念を提唱した。機能とは、各個人が財やサービスが持つ様々な特性を利用して、実際に「なし得ること」「なり得るもの」であり、個人的属性や社会的環境に規定される。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-26 16:18:33
H.Takano @midwhite

先進国から最貧国に食糧を送っても、同時に医療システムや公衆衛生が改善されなければ、食糧の「栄養を摂取する」「食事を楽しむ」といった特性を利用して、「健康状態を良くする」という機能を十分に発揮できない。特性と機能は併せて考える必要がある。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-26 16:26:41
H.Takano @midwhite

福祉の基準として機能に注目すれば、必然的に社会的存在としての人間の在り方に目が向く。所得や富、財やサービスの量を見るだけでは、各個人が実際に「なし得ること」を知ることができない。「機能」は差別や公共サービスの欠如などにも目を開かせる。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-26 16:32:28
H.Takano @midwhite

人々の労働能力には差があり、労働資源として時間を見ると、例えば他人よりも2倍生産性の高い人は、2倍多くの時間を保有していると見なすことができる。物理的な時間の利用可能量は同じでも、労働資源としての時間の分配は必ずしも均等ではない。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-27 19:03:42
H.Takano @midwhite

多様な個々人の価値判断を集約して社会的な価値判断を形成するという問題は、人類の歴史上、古くから存在した。その現代的な理論の枠組みを創造して「社会的選択理論」という学問領域を確立したのは、20世紀を代表する経済学者ケネス・アローだった。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 13:26:41
H.Takano @midwhite

私たちの価値判断やモラルは、後天的に親や社会から教えられ、自分が納得することで身につけたものである。規範理論の役割は、それを学ぶことで人々が規範的判断を修正し、そのような内省を経て社会的な合意形成に資することにある。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 13:41:09
H.Takano @midwhite

経済の目的が人々の福祉の向上ならば、経済学の役割は人々の福祉を高める社会経済システムを立案することだ。その為に経済学は非常に広い領域の問題をカバーしなければならない。本書はそのうち、社会改善の道標となるべき規範的問題について取り上げた。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 14:30:21
H.Takano @midwhite

経済学はその他に、現実の社会経済システムが動く仕組みを解明する必要があるため、個々の消費者や企業の行動分析から積み上げて経済現象を説明する。近年は産業組織、労働経済、国際経済、公共経済などシステムの構成する各パートの分析も進んでいる。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 14:35:18
H.Takano @midwhite

他方、現実の社会経済は長い歴史の中で進化してきた。グローバル化により市場システムの基本的なルールは共通化されてきたが、文化や宗教などの影響で取引慣行や行動パターンは異なる。従って社会経済システムは広く歴史背景も含めて理解する必要がある。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 14:41:47
H.Takano @midwhite

さらに、公共政策や制度改革を実行する為には、規範的目標を遂行するためのメカニズムを設計しなければならない。各人のインセンティブなどを考慮して、制度設計の問題を考えるのがメカニズム・デザイン論と呼ばれる学問領域である。(蓼沼宏一『幸せのための経済学』2011)

2012-10-29 14:45:10
H.Takano @midwhite

【読了】『幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)』蓼沼 宏一 ☆5 http://t.co/xClUCFrI #booklog

2012-10-29 15:12:13