◆自分のためのスケッチ:in Twitter 「リブート(その十)」◆

真上犬太氏(@plumpdog)によるtwitter連載小説 第11回目 第1回目はこちら http://togetter.com/li/372910
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真上犬太 @plumpdog

◆的の小さい自分に対し、刻むような攻撃をするつもりだろう。「始めっ」その声が掛かると同時に、クイの体が弾けた。溜めたバネを一気に開放し、間合いを詰める。それにあわせるように牛が僅かに後退、打ち下ろしの左拳が降る。◆

2012-11-10 23:57:35
真上犬太 @plumpdog

◆その動きにあわせるように、麦わら色の体が地面へと沈み込んだ。下半身狙い、自分より大きな相手と戦うなら当然の戦略。同時に牛が膝を折り、スライディングを敢行したクイの行く手を阻んだ。思惑の一切を寸断する分厚い太腿が、堤防のようにクイに立ちふさがった。だが。◆

2012-11-11 00:01:58
真上犬太 @plumpdog

◆「シッ!」鋭い呼気と共に小麦色の体が跳んだ。地面すれすれにあった体は一瞬で膝を突いた牛の顔面の高さに届き、丸めた体が虚空で縦に回転、両足が振り下ろされた。「ガァッ!」小兵でも全身の体重を乗せれば威力は上がる。体操選手のような身ごなしが生み出した威力が、後頭部に突き刺さる。◆

2012-11-11 00:03:50
真上犬太 @plumpdog

◆「ウゴオオッ」強烈な浴びせ蹴りに大きな牛の頭が激しく揺れ、同時にクイの体が地面に降り立つ。「ふっ!」強烈な振動によろめく牛の首にするりと滑り込むクイの右腕。瞬く間にその体が背後に回り、胴着の襟を締め上げた。「くはっ!?」◆

2012-11-11 00:05:51
真上犬太 @plumpdog

◆必死に振りほどこうとする腕をかわし、体を締め上げるクイ。牛の動きが次第に緩慢になり、やがてくず折れた。状況を理解できず、遠山達は呆然とこちらを見ている。「肩襟締めです。相手の衣服を利用して頚動脈を締め、行動不能にする」「そんなこと分かってる! ……分かっているが」◆

2012-11-11 00:09:22
真上犬太 @plumpdog

◆おそらく攻防は一分にも満たなかっただろう。その動きについて こられなかった人間をよそに、淡々と告げた。「性能検査はこれで終了ですか?」「……ああ。いいだろう。ネットワーク進入能力は、向こうの資料にあったからな」すっかり毒気を抜かれた遠山に、クイは笑いを堪えるので必死だった。◆

2012-11-11 00:15:18
真上犬太 @plumpdog

◆『クイ刑事』唐突に意識に繋がる感覚、オペレーターの一人から注がれる情報が頭蓋を満たしていく。『本部からの緊急連絡を伝えます。遠山警部、井垣警部補にも連絡をお願いします』『了解』未だに不満そうな顔をしている中年親父に向けて、口を開いた。◆

2012-11-11 00:20:05
真上犬太 @plumpdog

◆「警部。本部から緊急連絡です」「なんだ」「殺人事件発生、至急現場に向かわれたし」その途端、遠山の顔が陰険な中年のそれから刑事のそれに変わる。「現場に急行するぞ。車両一台押さえておけ! マスターサーバに繋ぎっぱなしにして情報を逐次拾え!」「了解しました」◆

2012-11-11 00:22:12

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