〔AR〕その24 セクション2
「幻影は、人里だけでなく、幻想郷のあちこちで見られるって話。今の幻想郷で、あまりにも無差別に、広範囲に異変を起こすのは、リスクが大きすぎるわ。少なくとも、私は、犯人がいるにしても無自覚に起きている類だと推測する」 「幻想郷、あちこち」
2012-11-16 20:32:57幻想郷の、広い範囲にわたる現象。阿求は、人里の住人故、人里を中心にした視点に偏っていた。だが、アリスの説明で、何か漠然とした感覚が浮き彫りになってくる。
2012-11-16 20:33:19「ともかく、人里に手がかりはなさそうね。私は一旦慧音の家に戻るから、貴方も家に帰ったら?」 「そうしますね。家の者には出掛けるとしか言っていないので――」 人々が往来する街道。夕闇が炎で照らしあげられていく様に、目を眩む。阿求は、アリスと会話しながら、せわしなく目を瞬かせていた。
2012-11-16 20:33:53幾度の瞬きをしただろう。キネマのフィルムをコマ落ちさせたかのような視野の中で。 阿求は、その能力故。瞬きしたある一瞬の前には決してなかったものが、一瞬の後に現れたことを見逃さなかった。 「あ!」
2012-11-16 20:34:13現れたのは――犬だ。薄い小麦色の毛並み、垂れた耳、ふりふりとした尻尾。 最近、さる事情で犬図鑑を読んだことから、その特徴が印象に残っていた。ラブラドールレトリーバーという犬種。人里どころか、幻想郷全体を見ても滅多に見かけない外来種だ。
2012-11-16 20:34:32「どうしたの?」 突如声を張り上げた阿求を、アリスは不振そうに見つめた。アリスにはまだ、多くの人妖が行き交う道に現れた違和感を気づけていない。 そのアリスを後目に、阿求は犬を凝視していた。犬は、あたかも阿求と視線を重ねるように首を巡らせる。
2012-11-16 20:35:00犬は阿求の目をじっと見つつも体を反転させ、ついには阿求達とは別の方向に歩きだした。 「あれ? 人里にレトリーバーなんていたっけ――」 アリスも、ようやくその犬の存在に気づいたが。 瞬間、阿求はこの場から立ち去る犬を追って駆けだした。 「阿求!?」
2012-11-16 20:35:37アリスは驚きのあまり出遅れた。その一瞬は大きく、阿求はあっという間に人並みをかき分けて往来を突き進んでいった。 「ど、どうしたのかしら」 困惑しつつも、追いかけようか、と足に力をこめたところで。
2012-11-16 20:36:05(おかしい) アリスは、自分の視界の異常に気づいた。 (いくらこの街道は酒場が軒を連ねてるとはいえ) 瞬きするごとに、増えていく。 (人が、多すぎる!?)
2012-11-16 20:36:23