DNA二本鎖切断の線量効果関係が1mGyの低線量まで比例直線となり、その修復能が1mGy以下の極低線量で阻害されることを示したPNAS論文
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関連まとめ
論文紹介
(1)Evidence for a lack of DNA double-strand break repair in human cells exposed to very low x-ray doses. PNAS 2003. http://t.co/sLfIfEsV
2012-11-19 12:45:57(2)リン酸化されたヒストン蛋白を蛍光抗体法で観察し、DNA損傷と修復のバイオマーカーとして定量化。2種類のヒト線維芽細胞を用いて1mGy以下の極低線量領域までその影響を調べている。
2012-11-19 12:46:10(3)広島長崎に代表される疫学調査は高線量放射線の発癌リスク推定には利用できるが、公衆の発癌リスクとして重要なのは低線量放射線である。低線量放射線の発癌リスクの推定には細胞レベルの実験によるアプローチが必要である。
2012-11-19 12:46:28(4)DNA二本鎖切断(DSBs)の最初のステップは、クロマチンと呼ばれる核構成蛋白の一つであるヒストン蛋白のサブクラス、H2AXのリン酸化から始まる。リン酸化されたH2AXをγ- H2AXと呼ぶ。
2012-11-19 12:46:41(5)γ- H2AXは蛍光抗体法において明瞭な焦点(foci)として観察される。この論文ではDSBsとγ- H2AXとfociを同義として扱っている。細胞周期はG1期に統一。以下図表を中心に紹介。
2012-11-19 12:46:53(6)【図1-A,B:蛍光抗体法によるfociの観察】DNA修復能の高いMRC-5細胞(A)の方が、修復能の低い180BR細胞(B)より24時間後のfoci残存が少ない。 http://t.co/GPmIpSNk
2012-11-19 12:53:58(7)【図1-C,D:foci細胞の分布図】黒色のグラフは3分後、灰色のグラフは24時間後の分布。Cが修復能の高いMRC-5細胞、Dが修復能の低い180BR細胞。 http://t.co/rIBVMe1N
2012-11-19 12:54:46(8)【図1-E,F:時間経過によるfociの減少】灰色のグラフが修復能の高いMRC-5細胞、黒色のグラフが修復能の低い180BR細胞。 http://t.co/6Z3CTRfM
2012-11-19 12:55:10(9)【図2:DSBsの線量効果関係】MRC-5細胞で照射3分後に観察。1mGy付近の低線量領域まで比例直線になることを示している。 http://t.co/g6eskmmT
2012-11-19 12:55:32(10)【図3-A:時間経過によるfociの減少】グラフの黒色部分はバックグラウンド。時間経過とともにfociは減少していくが、1.2mGyでは減少せず残存する。 http://t.co/9GDlrYQy
2012-11-19 12:55:57(11)【図3-B:foci細胞の分布図】1.2mGy照射時のMRC-5細胞で観察。バックグラウンド(黒色)でもfociは観察されるが、その割合は照射群より少ない。 http://t.co/LKC4SRu1
2012-11-19 12:56:17(12)【図3-C:24時間後のfoci残存数】1mGy以上では残存数がほぼ同じだが、1mGy以下で徐々に減少。fociの残存は0.1mGyの極低線量まで観察される。 http://t.co/d1FTJRuh
2012-11-19 12:56:38(13)【図4-A:foci残存数の経過】グラフの黒色部分はバックグラウンド。24時間以降fociはゆっくりとしか減少しない。 http://t.co/O0gm46X8
2012-11-19 12:57:00(14)【図4-B:複数回照射の影響】複数回照射でも1細胞あたりのfoci残存数はあまり変わらない。 http://t.co/yvDXbqd4
2012-11-19 12:57:20(15)【図4-C:照射後に細胞を培養】図4-Aと比べて7日後にfoci残存率がぐっと下がる。 http://t.co/P66FDTd2
2012-11-19 12:57:43(16)【表1:低線量放射線の細胞への影響】照射あるいは培養を行うことで、細胞にアポトーシスや小核化が認められるようになる。 http://t.co/zF4XfFSa
2012-11-19 12:58:05(17)【表2:線量とMRC-5細胞生存率】独立した3つの実験系で、線量の増加に伴い生存細胞の減少が認められる。 http://t.co/AcMR7tqK
2012-11-19 12:58:23(18)興味深いことにDNA二本鎖切断の修復に関しては閾値が観測され、およそ1mGy以上では修復されるが、それ以下では修復されないことが分かった。これは1細胞につき平均で1つの電子飛跡のレベルである。
2012-11-19 12:58:39(19)LNTモデルは高線量でも低線量でもDNAの修復能は同じと仮定して成り立っているが、この実験結果からLNTモデルでは極低線量領域の発癌リスクを過小評価してしまうことになる。
2012-11-19 12:58:49(20)しかしDNA二本鎖切断のレベルが同じでも、照射によってアポトーシスや小核化を起こす細胞が増加しており、DNA二本鎖切断が修復されない細胞が排除されている現象も同時に確認された。
2012-11-19 12:59:01(21)つまり極低線量領域ではLNTモデルと比較して発癌リスクを上げるようなメカニズムと下げるようなメカニズムが同時に存在すると推定される。
2012-11-19 12:59:13(22)DNA二本鎖切断の修復能は高度なダメージの時しか必要ないのかも知れないが、極低線量領域の変異リスクが評価できないためこの考え方は推測の域を出ない。
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