【低線量被ばく測定法】γ-H2AXアッセイのバイオドシメトリーとしての可能性

福島など放射能汚染地域における正確な線量評価が求められている。下記はその新しい評価法として近年注目されているγ-H2AX法についてのまとめ。 参考:中村麻子(大阪医科大学)「γ-H2AXを用いた生体内DNA損傷レベルのモニタリング」, 放射線生物研究, 47(3), 2012
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waresama @waresama1

MP(モニタリングポスト)および個人線量計を超えるバイオドシメーターについて、大阪医科大学の中村Dr.が放射線生物研究会会報 Vol.47 3号で報じているので簡潔に紹介したい。

2012-11-09 16:48:48
waresama @waresama1

福島事故を受け、MPやガラスバッジでは正確な被ばく量が測定できず、また装置や測定場所による差異がさらなる困難を招いていることは言うまでもない。

2012-11-09 16:50:14
waresama @waresama1

MPはその地域の目安となる線量しか提供できず、ガラスバッジは方向依存性が問題視されている。現状ではその両者を超える線量計は存在せず、したがって福島事故に対応した新しい測定法を開発しなければならない。

2012-11-09 20:05:34
waresama @waresama1

中村Dr.は被ばく線量の新しい評価法について、γ-H2AXというDNA近傍に存在するヒストンタンパク質の観測に着目し、低線量被ばくへの応用を説いている。

2012-11-09 20:09:09
waresama @waresama1

DNAは通常、ヒストンに巻きついて存在している。ヒストンの一つがH2AXである。γ-H2AXとはリン酸化型H2AXを指すが、ガンマ線照射後の細胞で初めて発見されたことからこの名称が付けられた。放射線によってDNAが損傷を受けるとH2AXがリン酸化され、γ-H2AXになる。

2012-11-09 20:12:47
waresama @waresama1

DNA、ヒストンから染色体(クロマチン)の関係図 http://t.co/L8k62ZJp 参照:第三版分子生物学(田沼靖一)http://t.co/6MrROzil

2012-11-15 18:17:06
waresama @waresama1

DNAが損傷を受けるとこのヒストンがリン酸化され、その反応は広範囲であることから、染色して顕微鏡によって明瞭なフォーカス(斑点)を観察できる。このフォーカスをDNA損傷と考え、DNAダメージを与える放射線などによって、細胞のDNAがどの程度損傷を受けたのかを定量することができる。

2012-11-09 16:58:04
waresama @waresama1

補足:γ-H2AXアッセイの結果は点状に観察される→http://t.co/NIXCxXtf この斑点をフォーカスといい、γ-H2AXを染色することで得られる。

2012-11-09 19:59:17
waresama @waresama1

福島事故の場合のバイオマーカーは、血液中のリンパ球である。リンパ球は生体内で最も感受性が高く、被ばく後に染色体異常や突然変異頻度の解析をすることで影響を調べることができる。チェルノブイリでも、4月26日の事故直後から搬入された患者にリンパ球減少が広く認められた。

2012-11-09 17:07:13
waresama @waresama1

しかし従来のそうした方法で時間と労力がかかりすぎ、現実的ではないと中村Dr.は言う。そこで中村Dr.のグループはリンパ球および毛根細胞にγ-H2AXアッセイを行い、バイオドシメーターとしての可能性を検討した。

2012-11-09 17:09:12
waresama @waresama1

その結果、0~20mGyの放射線(記述はないがおそらくγ線)で、γ-H2AXフォーカス数が線量依存的に上昇した。その最少量は5mGyであり、非常に感受性が高いことが示された。

2012-11-09 17:11:52
waresama @waresama1

中村Dr.によるγ-H2AXアッセイの結果 http://t.co/4wi9NATL

2012-11-09 20:34:51
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waresama @waresama1

γ-H2AXによるDNA損傷のモニタリングは、迅速性と定量性を兼ね備えており、放射線量評価として有用と言える。実際、コロンビア大学のGuy Gartyらは1日に30000件のサンプルを処理する自動検出システムRABiTを開発した。(論文) http://t.co/sZtMtwbi

2012-11-09 17:17:21
waresama @waresama1

中村Drによれば、γ-H2AXアッセイは低線量被ばくにおいても、バイオドシメーターとして利用できる可能性は高いと言える。しかしこの手法で検出されるDNA損傷は、修復されずに固定した損傷であり、修復酵素によって修復を受けた損傷は検出できない、という欠点がある。

2012-11-09 17:19:47