シマウマ(f_zebra)さんと考える「エネルギー供給の最適化」って?

勉強します...
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Flying Zebra @f_zebra

エネルギー供給の最適化、ということについて考えてみる。需要側の調整を考慮すると話がややこしくなるので、ここでは需要は手を出せないものとして、供給側だけでどのように最適化できるかに絞って考えてみたい。

2012-11-27 00:30:21
Flying Zebra @f_zebra

輸送用燃料と大規模な工業利用を除いた、家庭と小規模産業へのエネルギー供給はほぼ電気とガスという2つの形で行われている。先進国でも国や地域によっては家庭へのガス供給を廃止して電気だけとなっている場合もあり、これは火災に対する安全性が理由とされていることが多い。

2012-11-27 00:30:38
Flying Zebra @f_zebra

少し補足すると、日本の100Vや北米の120Vの給電では家庭向けであっても電気だけで十分な動力、熱量を得るのはあまり効率が良くない。ヨーロッパはほとんど(全て?)の国で220V以上なので、調理用や暖房用の熱源を電化しやすいという事情もある。

2012-11-27 00:31:41
Flying Zebra @f_zebra

消費財などの場合、生産においてスケールメリットが大きいほど、あるいは単価に対して輸送コストが小さいほど、集約の効果が大きくなる。逆の場合は、いわゆる地産地消のメリットが大きくなる。エネルギーの場合はどうだろうか。

2012-11-27 00:31:59
Flying Zebra @f_zebra

ガスについては日本では輸入原料を精製するだけなのでほぼ輸送効率で決まる。都市部ではガス管による供給が高効率で、すでに整備は完了している。現在ボンベ配送を行っている地域は、ガス管の敷設がコスト的に割に合わない地域のみだ。

2012-11-27 00:32:42
Flying Zebra @f_zebra

電気については一度作ってしまうとそのままの形では溜めておくことができないという特徴がある。また、輸送は送電線による送電がほぼ唯一の手段となり、距離が長くなればコストが嵩むことになる。その点では、小規模な発電施設が消費地近くに分散しているのが好ましい。

2012-11-27 00:33:41
Flying Zebra @f_zebra

一方で、発電というエネルギー変換はとにかく効率が悪く、熱エネルギーからの変換の場合最大でも6割程度しか電気エネルギーを取り出せない。発電方法による効率の差が大きいため、輸送コストよりも発電効率が支配的になり、そちらで最適解が決まることになる。

2012-11-27 00:34:11
Flying Zebra @f_zebra

深くは踏み込まないが、発電は方法によって効率以外にも負荷追随性などの特性が異なり、オールマイティーの最適解が1つだけあるわけではない。実際には、冗長性なども考慮して複数の方法を組み合わせている。

2012-11-27 00:35:27
Flying Zebra @f_zebra

電気はそのままでは溜めておけないが、それではあまりにも不便なので別の形に変えてある程度は蓄えている。位置エネルギーで蓄えるのが揚水を含むダム、化学エネルギーで蓄えるのが蓄電池である。

2012-11-27 00:36:44
Flying Zebra @f_zebra

従来、発電の効率は設備の規模が大きいほど高く、臨海部などに大規模な発電所を建設して消費地まで送電するのが最も効率的と考えられてきた。この常識を変えたのが、小型のガスタービン発電機である。

2012-11-27 00:37:19
Flying Zebra @f_zebra

ボイラーで蒸気を作る代わりに高温の燃焼ガスを直接タービンに吹き付けて回すガスタービンは小型でも効率が高く、更に廃熱を利用して水を沸かし、蒸気タービンも併用するコンバインドサイクルだと大型の蒸気タービンを凌ぐ効率を弾き出す。(ただし設備は比較的大型になる)

2012-11-27 00:37:59
Flying Zebra @f_zebra

小型の場合、建物や商業施設に組み込むことができ、廃熱を空調、給湯用などの熱源として再利用できる場合もある。熱電併給、コジェネなどと呼ばれる。設備の発電・発熱特性と施設側の需要特性がうまく一致すれば、総合効率では高い効率が期待できる。

2012-11-27 00:38:20
Flying Zebra @f_zebra

では、小型の分散電源をうまく整備すれば原子力発電所や大型火力発電所のような大規模発電設備は不要になるのだろうか。残念ながらそうではない。条件がうまく合致するごく一部を除き、大部分では大規模発電所からの送電の方がトータルでは高効率となる。

2012-11-27 00:39:16
Flying Zebra @f_zebra

非常時のバックアップとしての電源は分散している方が好ましいが、常用電源が分散しているとメンテナンスコストが増加し、更に燃料輸送コストも嵩む。大規模発電所が臨海部にあるのは、冷却水の確保だけでなくタンカーで直接燃料を輸送できるという理由が大きい。

2012-11-27 00:39:48
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所などは消費地から遠く離れた立地が多いが、長距離の大量送電では50万kVの超高電圧で送電しており、送電ロスはそれほど大きくない。送電ロスは電圧が低いほど、つまり電流が大きいほど大きくなり、日本全体の平均送電ロス約5%の大部分は地域内配電で失われている。

2012-11-27 00:40:21
Flying Zebra @f_zebra

結局、電力供給についてはある程度以上の規模の発電設備でベースロードを確保しつつ、条件が合致するところは熱供給と組み合わせたシステムを積極的に導入し、更に消費地近くに分散したバックアップ電源をなるべく多く確保する、というのが答えとなる。単体の発電効率だけでは決まらないのだ。

2012-11-27 00:40:55
Flying Zebra @f_zebra

電力供給の話ばかりになってしまった。ガスを含めたエネルギーの最適化、というとつまりオール電化の是非になるのだが、これについては前提条件が複雑になるので踏み込まない。ただ、電力会社の陰謀、といった単純な話ではないことは指摘しておきたい。

2012-11-27 00:41:24
Flying Zebra @f_zebra

エネルギーインフラというのは整備に多大な時間とコストがかかり、一度できてしまえば変更は難しい。部分的な最適化だけを追求すれば全体としては非効率となることも多く、総合的な検討が求められる。思い付きで弄れるような軽いものではないのだ。議論しようという人は、心して勉強して頂きたい。

2012-11-27 00:42:14