ゴフマンが警鐘を鳴らした「原子力社会の成熟」

結論は【表49】と【表53】になります。そして最後のチェルノブイリ事故による癌死も含めて注意するべきことは、ゴフマンの見積もりが正しかったとしても、非常に広域かつ何十年にも渡っての過剰癌死なので「統計学的有意差は出ない」という事です。小児甲状腺癌以外は有意差がなかったとする種々の疫学調査と矛盾する内容ではありません。ゴフマンは疫学調査ではとらえられない過剰癌死を、それまでに得られていた有用なデータと、妥当な仮定や近似を用いて論理的に見積もった訳です。 【旧単位】1Ci=370億Bq、1ラド=10mGy、1レム=10mSv ~ジョン・W・ゴフマン~ 続きを読む
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スカルライド @skull_ride

(24)125gの細胞に1μCiが分布しているなら被曝線量は15040レムとなる。しかし1μCiを吸入した場合、細気管支・肺胞組織には0.15μCiしか残留しないから、これらの組織が受ける被曝線量は2256レムとなる。

2012-12-10 12:31:54
スカルライド @skull_ride

(25)プルトニウム239の場合16.3μgが1μCiである。だから1μgのプルトニウム239を吸入したときの被曝線量は、①喫煙者の高感受性気管支→1051.2レム、②非喫煙者の高感受性気管支→52.6レム、③細気管支・肺胞→138.4レム、となる。

2012-12-10 12:32:06
スカルライド @skull_ride

(26)表29(「人間と放射線」参照)に示すように25歳の米国男性の肺ガン線量は567人・ラドである。喫煙者の場合肺ガン死率は男性全体の2.4倍なので、肺ガン線量は236.3人・ラドである。非喫煙者の場合肺ガン死率が全体の0.24倍なので、肺ガン線量は2363人・ラドとなる。

2012-12-10 12:32:19
スカルライド @skull_ride

(27)従って喫煙男性のプルトニウム239の気管支原性肺ガン吸入量は0.225μg、非喫煙男性の気管支原性肺ガン吸入量は44.9μgとなる。同様に喫煙男性の細気管支・肺胞ガン吸入量は17.1μg、非喫煙男性の細気管支・肺胞ガン吸入量は170.7μgとなる。

2012-12-10 12:32:31
スカルライド @skull_ride

(28)女性の場合、肺ガンの危険度は男性の1/3であるから、肺ガン吸入量はすべて男性の3倍とすればよい。そして原子炉プルトニウムには短半減期の同位体が混じっているため、同じ重さの純粋なプルトニウム239に比べてα放射能が約5.4倍強いことは先に示した。

2012-12-10 12:32:42
スカルライド @skull_ride

(29)本章の初めに示したビーグル犬の細気管支・肺胞ガンの吸入プルトニウム量は112μgであった。この値は非喫煙者について求めた細気管支・肺胞ガン吸入量170.7μgとよく一致している。(ビーグル犬は煙草を吸わない)

2012-12-10 12:32:53

核実験のプルトニウムによる気管支原性肺ガン

スカルライド @skull_ride

(30)1962年までに大気中に放出されたプルトニウムは、現在ほとんどが地表に降り落ちている。世界中に拡散したプルトニウム総量の最良な推定値はプルトニウム239に換算して320000Ciである(Hardy, 1974)。

2012-12-10 12:33:03
スカルライド @skull_ride

(31)ベネット(Bennett, 1974)は1972年までの積算吸入量は約42pCi/人と評価している。そして人体組織内蓄積量の分析から、降下物中のプルトニウムを含む粒子は二酸化プルトニウムと同様の挙動をすると指摘している。(肺からの排出半減期は500日)

2012-12-10 12:33:14
スカルライド @skull_ride

(32)pCiをμgへ変換する。42pCi/人という積算吸入量はプルトニウム239当価量として表されているので、1pCiは16.3pgとしてよい。すると1人当り吸入量は6.85×10^-4μgとなる。

2012-12-10 12:33:24
スカルライド @skull_ride

(33)プルトニウムによる発ガン数を正確に評価するためには当時の人口構成に応じた年齢別の計算が必要である。それを行うこともできるが、当時の平均的男性が25歳であるとして近似計算してもそれほど誤った結果は出ないと思われる。

2012-12-10 12:33:35
スカルライド @skull_ride

(34)当時は現在より男性喫煙者は多かったので50%が喫煙者と仮定する。子供は喫煙しないので大人の50%以上が喫煙していたことになる。全米人口は約2億人、男女がおよそ半分ずつであった。

2012-12-10 12:33:45
スカルライド @skull_ride

(35)つまり1960年代には全男性1億人のうち5千万人が喫煙者で、5千万人が非喫煙者であった。この二群はそれぞれ34300μgのプルトニウムを吸入したことになる。

2012-12-10 12:33:54
スカルライド @skull_ride

(36)男性喫煙者の気管支原性肺ガン吸入量は0.225人・μg、気管支原性肺ガン死の数は34300/0.225=152400件となる。男性非喫煙者の気管支原性肺ガン吸入量はプルトニウム239で44.9人・μg、気管支原性肺ガン死数は34300/44.9=764件である。

2012-12-10 12:34:05
スカルライド @skull_ride

(37)ここで一つ重要な補正をしなければならない。ここで用いた肺ガン吸入量は1980年の自然発生肺ガン死率に基づいている。しかし1960年代初頭から自然発生肺ガン死率は大幅に増加している。

2012-12-10 12:34:15
スカルライド @skull_ride

(38)米国ガン協会の概略値によると、1960年代初期は1975年の0.61倍である。それゆえ降下物による肺ガン死誘発件数は上の評価値の0.6倍に補正するのが合理的であろう。従って米国男性のプルトニウム降下物による肺ガン死数は0.6×153164=92000件となる。

2012-12-10 12:34:25
スカルライド @skull_ride

(39)気管支原性肺ガン線量は25歳男性では567人・ラド、25歳女性では1695人・ラドである(「人間と放射線」表30参照)。従って25歳の女性喫煙者の気管支原性肺ガン吸入量はプルトニウム239で0.225人・μg×(1696/567)=0.673人・μgとなる。

2012-12-10 12:34:36
スカルライド @skull_ride

(40)25歳女性非喫煙者の気管支原性肺ガン吸入量はプルトニウム239で44.9人・μg×(1696/567)=134.2人・μgとなる。1960年代初頭、女性の喫煙率は男性と比べてはるかに低かったので、女性喫煙者の割合を20%とする。

2012-12-10 12:34:48
スカルライド @skull_ride

(41)女性喫煙者のプルトニウム239の総吸入量は6.85×10^-4μg/人×2千万人=1.37×10^4μgである。女性非喫煙者の総吸入量は6.85×10-4μg・人×8千万人=5.48×10^4μgとなる。

2012-12-10 12:34:59
スカルライド @skull_ride

(42)女性喫煙者に誘発される気管支原性肺ガン数は1.37×10^4/0.673=20357件、女性非喫煙者では5.48×10^4/134.2=408件。総数は20765件、年代補正を行って0.6×20765=12460件となる。

2012-12-10 12:35:11
スカルライド @skull_ride

(43)米国でのプルトニウムによる肺ガン死数は男女合わせて92000+12460=104460件と評価される。ただしこの値は大気圏から地表に最初に降り落ちたプルトニウムだけを吸入したとして得られたものである。

2012-12-10 12:35:21

プルトニウム社会における気管支原性肺ガン

スカルライド @skull_ride

(44)プルトニウムを基本とする核燃料サイクルは、二酸化プルトニウム(PuO2)微粒子や他の不溶性粒子といった危険な形状で大量のプルトニウムを放出する。このことをプルトニウム社会の推進者たちは軽視している。

2012-12-10 12:35:33
スカルライド @skull_ride

(45)核燃料棒の製造工程では、プルトニウム酸化物やウラン・プルトニウム混合化合物が1ミクロン程度の微粒子で扱われる。このような状態のプルトニウムを取り扱うことほど肺ガンに関して危険なものはない。

2012-12-10 12:35:46
スカルライド @skull_ride

(46)推進者たちは、プルトニウムは重すぎて空気中に浮遊しないと言う。しかしコロラド州ロッキーフラッツ工場では100~200gのプルトニウムがドラム缶から地表に漏れ出し、最終的に微粒子となって風で飛ばされ、工場から東に何十マイルも離れた地点にまで到達した。

2012-12-10 12:35:55