ゴフマンが警鐘を鳴らした「原子力社会の成熟」
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(47)また燃料棒製造工場であるシマロン工場で18kgものプルトニウムが消えたこと(カレン・シルクウッド事件)も見過ごしているようである。彼らはプルトニウムの完全閉じ込めを約束しながら、軍事用や商業用で扱って来たプルトニウムの98~99%しか行方を説明できないことを忘れている。
2012-12-10 12:37:05(48)プルトニウムを確実に軽量する方法が貧弱であるため、100g中の1gが環境に流出したのかどうか全く知りようがないのである。原子力産業では99.9%の閉じ込めさえ確認することができない。まして99.9999%の閉じ込めなどとても確認できない。
2012-12-10 12:37:16(49)私は科学者として長年放射性物質を扱ってきた。放射性物質が沸騰したり、こぼれ出したり、漏出したり、吹き出したりするのを日常的に見てきたし、機器の誤作動や人の誤操作を見てきた。その経験から言えばプルトニウムを99.9999%以上閉じ込められるという話を信じることはできない。
2012-12-10 12:37:28(50)米国で原子力社会が成熟すれば、プルトニウムを主燃料とする核種増殖炉が1000基以上稼働すると考えられる。標準型増殖炉の1基は約3トンのプルトニウムを内蔵し、毎年その1/3が再処理に回され、新たに燃料に組み込まれていく。
2012-12-10 12:37:38(51)ベネット(Bennett, 1974)によればニューヨーク市の1972年までのプルトニウム積算降下量は2.65mCi/km2である。米国での平均降下量はニューヨークと変わらないと仮定すれば米国48州の面積7.6×10^6km2での全降下量は2.01×10^7mCiとなる。
2012-12-10 12:38:31(52)mCiからmgへの変換係数は16.3なので、1972年までの米国内の全降下量は328kgとなる。この降下量からは104460件の致死的肺ガンの発生が予測される。
2012-12-10 12:38:54(53)この値は人口を2億人としているが、将来人口は2.5億人になると予想される。もし人口が増えれば同じプルトニウム降下量に対しては人口増に比例して肺ガン死も増加する。この場合米国で1kgのプルトニウム239当り398件の肺ガン死が発生することになる。
2012-12-10 12:39:05(54)1kgのプルトニウム239で生じる米国での398件の肺ガンは、1962年の自然発生肺ガン死率に基づいている。1962年の自然発生肺ガン死率は1980年の6割である。従って1980年時点の予測では米国でのプルトニウム1kg当り663件の肺ガン死があるとしなければならない。
2012-12-10 12:39:18(55)将来のプルトニウム社会では、毎年100万kgのプルトニウムが扱われる。そのとき生じる年間の肺ガン死数を、閉じ込め率に応じて推定し【表49】に示す。(平衡人口2.5億人、漏洩プルトニウム1kg当りの肺ガン死数は663件) http://t.co/eMgYGNdV
2012-12-10 12:39:52(56)表49の評価では、プルトニウムが米国内に一様に拡散する必要はない。忘れてならないのは、100人が1μgずつのプルトニウムを吸入した時と、1000人が0.1μgずつ吸入した時とでは同数の肺ガンが生じることである。
2012-12-10 12:40:10核実験のセシウム137による被曝
(57)セシウム137による被曝は大きく分けて二つの部分からなる。①地表に沈着したものからのγ線による外部被曝。②飲んだり食べたりして取り込んだものからのγ線、β線による内部被曝。外部被曝は内部被曝に比べてかなり大きいと評価される。
2012-12-10 12:40:21(58)UNSCEAR報告(1977)の表を用いると、地表に一様に沈着した場合の空気中線量を求めることができる。放射線の後方散乱や、人体や建物による遮蔽効果を考慮し、UNSCEARは最終的に0.32という補正係数をかけることを勧めている。
2012-12-10 12:40:30(59)北半球中緯度地域での被曝線量を評価してみよう。セシウム137の沈着量は136mCi/km2である。UNSCEARの表から1mCi/km2の沈着があったときの線量預託は1.44ミリラドである。従って1.44×136×0.32=62.7ミリラドが各人の受ける線量である。
2012-12-10 12:40:41(60)UNSCEARは、北半球の中緯度地方での内部被曝線量を27ミリラドとしている。ここではこの値を受け入れることにするが、UNSCEAR自身が過小評価の可能性を示していることに留意しよう。この点をUNSCEARは次のように言っている。
2012-12-10 12:40:51(61)「上記の線量預託27ミリラドは、土壌中のセシウム137が植物中へ移行しにくい地域でのデータであることに注意しなければならない。異なる土壌で育つ食物を摂っている人口集団の線量預託は高くなると思われる。」
2012-12-10 12:41:01(62)従って136mCi/km2の沈着量(北半球の中緯度地方)の場合、セシウム137による全被曝量は62.7+27=89.7ミリラド/人となる。そして1mCi/km2の沈着当りの被曝線量は89.7/136=0.66ミリラドとなる。
2012-12-10 12:41:11(63)先に米国48州の広さを7.6×10^6km2とした。その面積にセシウム137が1mCi/km2の濃度で一様に分布しているなら、米国民はすべて1人当り0.66ミリラドの被曝を受けることになる。このときの総沈着量は760万mCiとなる。
2012-12-10 12:41:24原子力社会でのセシウム137による過剰発ガン
(64)10億キロワット・年の原子力発電によって1年間に発生する使用済み燃料中には3.55×10^9Ciのセシウム137がある。このすべてが米国中にばらまかれるとすれば各個人が平均的に受ける被曝線量は3.08×10^5ミリラド/人(約300ラド/人)
2012-12-10 12:41:35(65)もし「原子力社会アメリカ」での被曝線量を0.1~1.0ミリラド/年に制限しようとすれば、セシウム137の99.999%以上を完全に閉じ込めたうえ、数百種類の核分裂生成物と超ウラン元素を核燃料サイクルのどの部分からも一滴も漏らしてはならないことになる。
2012-12-10 12:41:44(66)「完全無欠でない人間や機械が、セシウム137を99.999%以上の完璧さで閉じ込め、その上他の核種すべても完全に閉じ込められるのだろうか?」もしこの問いにイエスと答えられる人がいるとすれば、その人は原子力について救いようのない楽天家である。
2012-12-10 12:41:55(67)核燃料サイクルから出た漏れ出た1mCiのセシウム137による外部および内部被曝線量が、核実験により地表に沈着した1mCiのそれと同じであるとは証明できない。根拠となるデータがないうちはこの二つの被曝は同程度と仮定するのが合理的であろう。
2012-12-10 12:42:03(68)もう一点、セシウム137の広がりが米国48州に限られると仮定しているが、この仮定はセシウム137が燃料サイクルから拡散するという条件のもとでは良い仮定であろう。48州外に出て行くセシウム137は、他の国の原子力施設からの拡散によって相殺されよう。
2012-12-10 12:42:14(69)閉じ込め率に応じて生じるガン死の数を求めてみよう。この結果を平衡人口に対するガン死者として【表53】に示す。(ガン線量として「人間と放射線」表23, 24の男性235人・ラド、女性300.2人・ラドを使用) http://t.co/mlB6LzOI
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