フー・キルド・ニンジャスレイヤー? #5

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー・キルド・ニンジャスレイヤー?」 #5

2012-12-19 17:11:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ!下ろしてくれ、もう大丈夫だ!やれる」ガンドーに抱えられたエーリアスが我に返り、顔を上げた。「やれる?バカ言うな。スイスチーズの分際で」ガンドーは彼女を担いだまま言った。エーリアスはガンドーのやや後ろを続くニンジャスレイヤーを見た。「……ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン」1

2012-12-19 17:23:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」彼らはビル屋上のプールサイドに着地した。「アイエエエ!」水着オイランとチョンマゲ・ヤッピーが悲鳴を上げてプールから這い出した。「ニンジャ!ナンデ!」「アーアー、お構いなく!楽しんでてくれよ!マッポは呼ばんでくれ!」ガンドーは彼らに手を振った。 2

2012-12-19 17:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このビルはマルノウチ・スゴイタカイビル前の広場に隣接している。目的地は広場を挟んですぐ先だ。ガンドーはエーリアスを下ろし、パラソル付きベンチにひとまず座らせた。エーリアスはテーブル上に残されている蛍光トロピカルドリンクを無意識に掴み、ストローで飲んだ。「悪い」彼女は言った。3

2012-12-19 17:34:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……俺らだけでどうにかしようと思ったんだ。なのに、引っ張り出しちまって」「傷はどうだ」ニンジャスレイヤーは言った。エーリアスは笑おうとした。「このオッサン、荷物の扱いが乱暴だからよォ……だが大丈夫だ!何がスイスチーズだ」「自力で帰る元気はあるか?え?」とガンドー。 4

2012-12-19 17:42:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何で俺らの所に?何でわかった?」エーリアスが訊いた。ニンジャスレイヤーは言った「交差点で何か言おうとしておったろう」「あそこで気づかれてたッてのか?」エーリアスが顔をしかめた「ウカツかよ」「私はニンジャだ。錆びついてはいるが」「どこまで知ってる?」ガンドーは実弾を装填する。 5

2012-12-19 17:54:48
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「ある程度」ニンジャスレイヤーは答えた。彼は懐から携帯端末を取り出し、テーブル上に小型モニタを展開した。IRCチャネルが表示される。ログインしている他者アカウントが二つ。「ナンシー=サンと、ハッカーがもう一人。シバカリ=サンだ」「二人か」ガンドーは装填を完了した「大掛かりだな」6

2012-12-19 18:03:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「正直時間が無い」ニンジャスレイヤーが言った。「このまま手短かにブリーフィングをやる」画面上にスゴイタカイビルのフレーム図が形成されてゆく。「あの男には複数のハッカーのバックアップがある。結果的にそこから足がついた」「逃げただけじゃねえのか?何やらかそうってんだ?」とガンドー。7

2012-12-19 18:08:36
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スゴイタカイビルのフレーム図に、「重点可能性」のマークが無数に出現した。時間と共に、徐々にそれらのマークが減少し、絞られてゆく。「二人がポイントを吟味している。爆薬、そしてビル内のハッキングポイントだ」ニンジャスレイヤーは言った。ガンドーが息を吐く「ッてことは……」8

2012-12-19 18:22:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……そういう事になるな」ニンジャスレイヤーは低く言った。「理由は何だ?」ガンドーは呻いた「お前の偽物になって暴れる。百歩譲ってそれはいい。わかった事にするさ。だが、ナンデ?吹っ飛ばすだと?スゴイタカイビルを?」ニンジャスレイヤーを見た。「狂ってやがるのか!?」 9

2012-12-19 18:39:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは端末を操作した。「情報はそう多くない。ドージョーに展開していた包囲システムを基点に、ナンシー=サンが親を辿り、計画の一端を掴んだ。今こうしてリアルタイムで入って来る解析情報だ。シバカリ=サンが先程加わった。ナンシー=サン一人では手に余る」 10

2012-12-19 18:53:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「因縁ふっかけられた甲斐があったか?」ガンドーが言い、エーリアスを見た。「サイオー・ホースかも知れねえとよ!だからお前も浮かない顔してねえで……」「データを同期させる。オヌシの端末を」ニンジャスレイヤーが促した。「ああ、よし」ガンドーは懐から12面体の小型端末を取り出す。 11

2012-12-19 18:59:06
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「重点!」赤い光の帯を引いて、小型ドロイドがテーブル上に飛び乗った。「驚いたか?モーターチイサイだ。元気なもんだろ」ガンドーが言った。ドロイドは端末にケーブルを伸ばし、みずからLAN直結した。「ヌンヌンヌンヌンヌン……」 12

2012-12-19 19:10:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「二手に別れ、爆破ポイントの解除作業、ウミノ=サンの救出を並行して行う。『ニンジャスレイヤー』は……」ニンジャスレイヤーは言った「……私がケリをつける」「おう」ガンドーは頷いた。「俺もビルに行く!」エーリアスが言った。ガンドーは肩を竦めた「勝手にしろ。痛くてもZBRはねえぞ」13

2012-12-19 19:26:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「シューッ……ニンジャスレイヤー……俺がニンジャスレイヤー……俺がニンジャスレイヤー……俺以外にニンジャスレイヤー無し……」(((ニンジャスレイヤー……ニンジャスレイヤー……ニンジャ……ニンジャを殺す……)))「そうだ……もっともっと殺す……俺が俺になる為に……」 15

2012-12-19 20:00:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セイジは独り、タタミ上でアグラし、不定形の影と対峙している。廃テンプルめいたその一室は、彼のニューロン内に築かれたローカルコトダマ空間である。「ニンジャスレイヤー」不定形の影が呻き、「忍」「殺」の漢字を表面にエンボスさせる。それらがまた溶けて渦巻き、今度は無数の目になる。 16

2012-12-19 20:03:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今更あいつが戻ってきたぞ、ニンジャスレイヤー。いけない事だ」セイジは不定形の影を睨んだ。無数の目が瞬きした。「イケナイ」「そうだ。イケナイ!奴は俺の権利を奪おうとしている。追って来ている。浅ましい存在だ。この俺の行動を今迄見ておきながら!今になって!奴は惜しくなったのだ!」17

2012-12-19 20:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オオ……オオ」不定形の影は震え、嗚咽めいた音を漏らした。「恐れる事は無い」セイジは言った。エーリアス・ディクタスのサイコ攻撃は彼を相当に追い詰めた。だが彼は打ち克った!その際、彼は、己のニンジャソウルとより深くコネクトするすべを副次的に得た。より深い対話を! 18

2012-12-19 20:14:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もっともっと力が必要だ」セイジは責めた。「お前は出し惜しみをしている」「出し惜しみを……」不定形の影が震えた。セイジは怒りに満ちた目を向けた。「やはりそうか!よこせ!」「よこせ……」「そうだ!よこせ。既に俺はニンジャを沢山殺したぞ。その力をよこせ!」「オオ……」 19

2012-12-19 20:18:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不定形のソウルが燃える枝をセイジに伸ばす。セイジの身体に蔦めいて巻きつく。炎が脈打つ。「よこせ……」「そうだ。力をよこせ。俺はニンジャスレイヤーだ」「ヨコセ……」セイジの身体に炎が巻きつき、徐々に紅蓮の装束を形作る。それにつれて不定形のソウルがしぼんでゆく。セイジは笑った。 20

2012-12-19 20:29:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セイジはアグラを解き、立ち上がった。「イヤーッ!」パンチ!「イヤーッ!」水面蹴り!「イヤーッ!」回し蹴り!彼は呟いた。「奴と切り結んでわかった。俺は奴に勝てる。奴は永く不在だった。俺は戦いの中で己を磨き続けて来た!俺は勝つ!」彼は叫んだ。コトダマ空間に彼の声は吸い込まれた。 21

2012-12-19 20:33:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……サン?」セイジは目を開いた。UNIXモニタが点滅している。ナブケだ。「準備は?万端か」セイジはたずねた。ナブケが返す。「いいナビゲーションが出来て自画自賛したい。全員、保守管理の人員に化けて、うまい配置をしていってますよ」「この初回で必ず成功させるぞ。警戒されたら難儀だ」22

2012-12-19 21:06:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あととととは、例のアレです、オリジンですよね」カツラの言葉が光った。「……?」セイジは眉根を寄せた。「どうした?今、何か」「ラグですかね」「ちょっと頻度が多いな」とナブケ。「まさか攻撃を受けているか?」「再確認重点」「警戒しろよ」「勿論ですよニンジャスレイヤー=サン」23

2012-12-19 22:28:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエ、アイエエ」床に転がされたウミノがもがく。後ろ手に縛られている。彼らが居るのはマルノウチ・スゴイタカイビル、コントロールセンター……部屋の隅には無残に殺された警備職員達の死体が寄せられていた。「君達は、何が目的だね?コワイ……」「目的?」セイジはウミノのもとへ歩く。24

2012-12-19 22:32:38
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