あざらしさん( @azarashidayou )による叙述トリック犯罪学教程
- moritapodesu
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「犯人は坂丹と阿久田である」、これだけシンプルに書けてしまいます。こう見ると分かる通り、犯人が二人などというのは、かなりありきたりな真実ですね。しかしあなたは言葉の魔術師。これをどんどん言い換えていくのです。
2013-01-03 23:34:30「犯人は坂丹と阿久田である」→「犯人は二人である。坂丹と阿久田である」→「犯人は坂丹一人ではない。阿久田も犯人である」→「犯人は坂丹である。しかし犯人は一人ではない」
2013-01-03 23:35:33ここまで言い換えることができたら、真実を1と2に分割するのです。そして「犯人は坂丹である」という真実の一端を、序盤から右手として派手にかかげる。つまり捨て駒にする。そして、それにより、もう一端の真実である左手を隠す。まさしくマジシャンズギャンビットです。
2013-01-03 23:36:42ありきたりな真実を言い換えることで、どこまで新鮮な小説にできるか。マジシャンズギャンビットが無限の可能性を秘めているとは、つまりこういうことなのです。
2013-01-03 23:37:08オマケコラム1:「アンジャッシュのすれ違いコントについて」 今回「逆叙述トリック」でググってみたところ、お笑いコンビ・アンジャッシュのすれ違いコントが逆叙述トリックである、とのコメントを何人かの方が書いてあるのが引っ掛かりました。
2013-01-03 23:39:42プラマイ叙述トリックとの差を理解してもらうため、これについても説明しようと思います。ただし私もアンジャッシュのコントのすべてを見たわけではないので、もしかしたらホントにプラマイ叙述トリックもののコントもあるのかも知れません。その場合はご容赦を。
2013-01-03 23:40:17と言ってもアンジャッシュを知らない人もいると思います。ですからすれ違いコントの例を作ってみました。コントのネタバレが良いか悪いかよくわからなかったので。
2013-01-03 23:40:42事前に言っておくとこのコントにオチはないですし、笑いのレベルも低いです。それと登場人物二人はどちらも男性です。
2013-01-03 23:41:06コント-1:大島「畑部さんと吉永さんと飲み会かー。吉永さんとは本当に久しぶりだなー。元第三高校女子剣道部主将! 個人戦日本一! 付いたあだ名が女武蔵だもんな~。って言うかあの人飲むからな~。今日もオールかな~、嫌だな~」
2013-01-03 23:41:53コント-2:畑部「いやー、大島と吉永さんと飲み会かー。最近吉永さんと会ってないなー。元第三高校男子柔道部主将で、世界柔道銀メダリスト! 男の中の男だよなー。また語り明かしたいなー」
2013-01-03 23:42:19コント-3:大島「畑部さん!」 畑部「おお大島!」「今日吉永さんも来るんですよね?」「おお、来るって言ってたぞー。まだ約束までちょっと時間あるけどな」「俺吉永さんとすげー久しぶりなんですけど、噂ではちょっと女らしくなったって」
2013-01-03 23:42:51コント-4「はぁ!? なるわけないだろ! 男の中の男だぞ!」「ええっ、畑部さんそんな辛口キャラでしたっけ」「別に辛口じゃねえだろ」「あ、そんな悪く言って、ホントは吉永さんに惚れてるってパターンじゃないでしょうね~?」
2013-01-03 23:43:04コント-5「バカ、俺にその趣味はねえよ! う~ん、でもそうだな、俺が女だったら惚れてただろうな」「うわー、それはマジわかります。男らしいですもんね~…あ!」「何だ?」「男らしいで言えば、畑部さん知ってます?」「何を?」
2013-01-03 23:43:34コント-6「吉永さん、ブラジャー付けてないんじゃないかって噂が」「付けてねえよ! なんで付けるんだよ!?」「え、見たんですか!?」「見たよ何度も」「うわうわうわ、やっぱりそういう関係…」「違うわ! 普通に部活ん時の着替えを見たんだよ!」「覗き!?」
2013-01-03 23:44:05コント-7「なんでだよ! あれお前知らないのか? 俺らの部室棟AとBに分かれてて、その間に中庭みたいのあったろ?」「ああはい」「吉永さんな、夏は部室が暑苦しいつって、あそこでよく着替えてたんだよ」「え、あんなところでですか!? ブラなしで!?」
2013-01-03 23:44:44コント-8「ブラから離れろ、なんだお前は。あ、でその時気付いたんだけどな、吉永さん、パンツ、黒しか履かないんだよ」「えっ、よりによって!? イメージにないわ~~…」
2013-01-03 23:45:02コント-9「でな、それがあまりによさそうだったんで、どこで買ったか聞いて、俺も同じの買ったんだよ」「あんた何してんすか!」「実は今も同じの履いてんだ」「自分で!?」「もちろん最近買ったやつだけどな。お、今周りに人いないからちょっと見せてやるよ」
2013-01-03 23:45:29コント-10「いやいやいやいや!いいすいいす! 見たくないすよ!」「遠慮すんなよ。すごいかっこいい黒のボクサーパンツだぞ」「ボクサー!? えっ、じゃあ吉永さんもボクサー!? ノーブラで黒のボクサーパンツ!?」「だからノーブラは普通だろうが! なんだお前は」
2013-01-03 23:46:11さて、面白くはなくても、これでなんとなく「すれ違いコント」のイメージがわかってもらえたのではないでしょうか。このコントの真実をプラマイ叙述トリックの型にハメて書くと
2013-01-03 23:46:33真実1:「大島と畑部は自分たちが同じ人物について語っていると勘違いしている」 真実2:「しかし二人はそれを知らない」
2013-01-03 23:46:52となります。しかしもうお分かりの通り、このコントでは1も2も事前に観客にバラしているので、ここに言い落としの要素はありません。ですから「逆叙述トリックではないか?」というのは間違いなのです。
2013-01-03 23:47:37