ソイ・ディヴィジョン #1

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「周囲を取り巻くこの廃ビルも、ジョウゾウ・コーポレーションの私有地だ……俺は危険を承知のうえで、潜入取材を続けている……」男は工場へと出入りする大豆輸送トラックや、ショーユ・タンクローリーなどの画像を念入りにウォッチングした。上空を所属不明のヘリが威圧的に飛び去ってゆく。 24

2013-01-13 22:53:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

潜伏開始から既に1時間近く経過。「そろそろ潮時だろうか……一旦バックアップが必要だ……」ジャーナリストは物理LAN直結ができないもどかしさに歯噛みする。無線LANや電波はネオサイタマ全域に溢れているが、サイバーマッポの監視やハッカー教団による汚染など、リスクが高過ぎるのだ。 25

2013-01-13 23:00:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがジャーナリストの直感が、彼をその場に留まらせる。そして彼の望遠レンズは……天性のカンによって会議室へと引き寄せられた。「あれは……ジョウゾウ社の重役!何故ドゲザを?クソッ、顔が見えん。こちらに背を向けているあの男は誰だ。黒い服を着て、頭には……バケツめいたヘルメット?」 26

2013-01-13 23:10:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次の瞬間、ジャーナリストは謎の男が窓に向かって振り返る決定的瞬間を見た。その体を覆うのはニンジャ装束!十字軍めいたヘルメットの奥で、不吉な目がギラギラと輝き……遥か遠く離れた場所にいるジャーナリストを……睨んだ!?「アイエッ!」彼は反射的にサイバーゴーグルの動作を停止する。 27

2013-01-13 23:19:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「目が合った!?……そんなバカな、気のせいだ。落ち着け。いや、それ以前に何故あいつはニンジャ装束を着ていたんだ。もしかしてニンジャか?そんなバカな。ニンジャなんか実在しない」ジャーナリストは狼狽しながら階段を駆け下りる。ショーユのように黒い胸騒ぎが、彼の心臓に巣食っていた。 28

2013-01-13 23:23:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男はレインコートのフードを目深に被り、二階の割れた窓から飛び降りて裏路地へと急ぐ。そこにバイクを隠してあるのだ。「ニンジャ……十字軍……ニンジャ……十字軍……」男はうわ言のように呟きながら、重金属酸性雨の中を走り、バイクに跨がる。ガキュキュキュキュキュ!エンジンが入らない。 29

2013-01-13 23:30:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワッタファック……!」男は悪態をつき、次の瞬間には顔を青ざめさせた。いつの間にか、電子配線が切断されていたのだ。キックスターターを使うためにスタンドを立てる。「「「ザッケンナコラー!」」」「アイエエエエエエエ!」不意に、細い路地の前後からヤクザスラングが響いた! 30

2013-01-13 23:35:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤクザたちは懐中電灯と銃を構え、一糸乱れぬ動きで迫る。…そして蹄音!ヤクザたちの背後に、背高い影がひとつ!「そ、そんなバカな……あいつは……工場内の会議室に……!」男はその場にへたり込み、前方を指さした!ヤクザの背後に、長剣を持つ馬上の十字軍騎士ニンジャの姿が見えたからだ! 31

2013-01-13 23:41:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「し……信じられない……あれほどの距離を……まさか……本当に、ニンジャ……」ジャーナリストは愕然とした。マツオ・バショーのニンジャ伝説が脳裏に去来する。「ドーモ、クルセイダーです。何故ここがアマクダリ・セクトの支配領域と解った……?貴様の正体をじっくりと確かめてやろう……」 32

2013-01-13 23:49:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエエエ!アイエエエエエエエエ!」哀れなジャーナリストの叫び声が、ジョウゾウ社の私有地に響き渡った。その声を聞き遂げる者などいない。重金属酸性雨の雨脚はいよいよ強くなり、ジャーナリストの悲鳴をしめやかに握り潰す。上空には陰鬱な排煙が、重く、重く、垂れ込めていた。 33

2013-01-13 23:54:26