選挙制度構造についての考察

斎藤環氏の連続ツイート
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東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自民党の勝利について「ヤンキー化」という視点からコメントしたところ、予想以上にたくさんの反響をいただきました。当初の予想よりは批判が少なかったのがちょっと意外でしたが。私の批判スタンスへの反発はあっても、論理的な批判がほとんどなかったのは寂しい限りです。

2012-12-30 09:42:45
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ちょっと注釈すると、自民圧勝の背景にあるメンタリティのヤンキー性については批判しましたが、自民支持者がヤンキーばかり、と言いたいわけではありません。むしろ私自身の中にすらちょっとはある「自民政権に対する安堵感」みたいなものへの自己批判でもある。「がっかり安心」的な。

2012-12-30 09:43:41
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

こういうムードヤンキー的な要素は、濃いか薄いかの違いはあれ、きっと誰もが持っている。オタ芸とソーランが似てたりとかね。その意味でヌエ的な自民党がジャンプなら、維新の会はもうちょっとこうヤンマガとかチャンピオン系の濃さとマイナー感が。

2012-12-30 09:44:18
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

たぶん小選挙区制がなかったら、2009年の政権交代だってありえなかった。国政ではなく地方議会の状況を仄聞する限り、自民党以外の政党が安定した多数派でいられる可能性はきわめて低いように思われるから。

2012-12-30 09:44:48
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

その理由の一つが日本独特のドブ板選挙の構造にある。想田和弘監督の映画「選挙」とか、その被写体となった山内和彦『自民党で選挙と議員をやりました』(角川SSC新書)を読むと、日本の選挙の仕組みそのものが巨大政党=自民党に有利に出来ているとしか思えないからだ。

2012-12-30 09:45:42
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

「地盤・看板・カバン(金)」の三バンというのがこれ。要は組織力と資金。山内さんは自民党の公認があったため、その組織力をフル活用できた。公職選挙法のマイナーチェンジを繰り返すよりも、ドブ板選挙を是とするメンタリティが変わらなければどうしようもない。

2012-12-30 09:46:12
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

印象的だったのはポスターの件。たとえば選挙告示前に張り出していい「弁士型ポスター」は、名目上は政治活動目的なので、自民党がバックにいる方が制作しやすいし、貼り出せる場所も圧倒的に多い。自民支持者の地主とかが場所を提供するから。

2012-12-30 09:46:33
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ポスター貼りにしても選挙用ハガキの発送にしても、組織力のある候補者に圧倒的に有利にできている。ネット選挙が認可されない背景として、この構造を温存したい勢力が協力に反対していたとしても不思議ではない。安倍さんは参院選までには解禁すると言ってるけど、本気ならここは評価したいところ。

2012-12-30 09:50:09
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

山内さんはドイツの映画祭で「日本の街頭演説」を披露して喝采されたそうだけど、それは「変なパフォーマンスをするコメディアン」と誤解されたかららしい。つまりわれらが「ドブ板選挙」こそは、文化人類学的な検討に値する「○人の風習」かもしれない、ということ。

2012-12-30 09:50:33
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

こういう日本の特殊な選挙制度って言うのは、普通の人間を「政治家人格」に変えてしまうような、強力な自己啓発装置として機能しているのではないか。

2012-12-30 09:51:01
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

どんな場面でも自分のことだけを喋り、誰であろうと鉄板の笑顔で握手を求め、群衆の中で自分の名前を連呼してはばからず、挙げ句に土下座までしてしまう。それにしても土下座って日本人の風習にはなかなか面白いものがあるね。マゾヒスティックな暴力のきわみだよ。

2012-12-30 09:51:27
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

連日の街頭演説やビラ配り、至るところでお辞儀と握手、有力者への挨拶回り、大して信じていない政策のアピール、究極的には自分の名前を喉が枯れるまで連呼するという「苦行」。かくも蹂躙されつくした主体性の残骸に注ぎ込まれる甘い承認の水。これは転ぶね。

2012-12-30 09:52:15
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

奉仕すべき対象は「社会のため」「国のため」から、「党のため」、「支援者のため」、「後援会のため」と限りなく縮小していくだろう。この構造を温存したまま、その必然的な産物たる「口利き政治」や「利益誘導」だけ批判してもしかたない。

2012-12-30 09:53:34
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

知識人の多くが政治に参加したがらない理由の一端もこの構造にあるだろう。選挙そのものが個人のプライドを蹂躙する仕組みで成り立っている以上、敬遠されるのは当然。当選したら万歳三唱、って風習も「美学に反するから嫌」って人も多かろう。

2012-12-30 09:53:58
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

そうかと思えば、周囲に担がれていやいや参加したはずブンカジンが、当選してみたらあんがい政治にはまってしまうのも、自己啓発後の変化と思えばわかりやすい。

2012-12-30 09:54:32
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

日本の選挙制度、というか選挙という風習は、まさに「フェイクの伝統」として、ムードヤンキー的な人々のメンタリティに親和性が高すぎる。そうでない人々の参入をはばむ上でもこの「心情的な壁」はなかなか良くできた仕組み。たぶん自生的に成立した構造に特有の、巧緻を極めた集合知の手触りがある。

2012-12-30 09:55:30
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

しかしまあ「きれいごと言わずに現実をみろ」と言われても、その「現実」なるものがフェイクの伝統ファンタジーだったらどうする? 結局は「お祭り」形式にしないと民主主義が維持されにくい国民性だったりしたらどうしよう。

2012-12-30 09:55:52
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

以前僕が、ひきこもりやニートに地方議員に立候補することを勧めたのは、単に就職先として競争率が低い(平均で5人中4人は当選している)からで、それでいて年収は高いし議員年金は手厚いし仕事はヒマだしという素晴らしい仕事だから。

2012-12-30 09:56:16
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ハードルはやはりこの特殊な選挙制度を超えられるかどうか、ということかな。その意味で、ネット選挙が解禁されれば無駄なコストは大幅に下げられるし、無党派層を動かすことも今よりは容易になるだろう。

2012-12-30 09:56:37
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ちなみに僕の知人が某市の市会議員に無所属新人で立候補した(当選した)時は、塚脇永久の漫画『(当)タネダミキオでございます』(新潮社)をマニュアルにしたとか。確かに面白いし使える作品。お薦め。

2012-12-30 09:56:59
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

そうでした失礼しました…ただOB議員には税金から支払われ続けるんですね。総額1兆円以上という試算に驚きました。RT @htsutomi 議員年金は廃止になったと思います

2012-12-30 19:08:22