【怪談】 たまには実話怪談の話をしてみようか 【恐怖譚】

怪談と実話怪談の違いというのは、一言で言うと「鯛と真鯛」みたいなものです。 どっちも鯛だし、昔は「真」とか付けずに「鯛」で罷り通ってたんだけど、当時は「黒鯛、金目鯛、甘鯛、エボダイ」もひっくるめて全部が鯛だったので、その中から「鯛の中の鯛、The鯛を特に【真鯛】と呼ぶ」ようになったわけですが、怪談もかつては作り話も噂話もひっくるめて全部怪談呼ばわりwの中に実話らしき話も混じってる形だったのが、「怪談の中の怪談、本当にあった(とされる)The怪談を特に【実話怪談】と呼ぶ」ようになた、という経緯があります。 まあこの「実話怪談」という概念は共有されていても「怪談実話」だったり「実話恐怖譚」だったり「怪異実話譚」だったりと、呼び方の乱立はあります。 続きを読む
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江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

【怪談緩募】怪談作家屋さん(僕の本業)としては次回作のためのネタ帳整理などしてる段階なんだけど「実はこういう話おまっせ」というお話、ご体験をお持ちの方がいらっしゃいましたら http://t.co/cBYvSbNk こちらでお伺いしてます。まだ書き始めてないので間に合います

2013-02-17 11:28:49

ところで忘れられがちですが、僕の本業は実話怪談作家ですw

というわけで、ここから本題(ヽ́ω`)

江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

怪談について詳しくないか興味がない人のほうが世の中には多いと思うので、怪談についてちょっと幾つか書いてみる。ただし怪談のカテゴライズみたいなのは怪談業界w内でもかなりセンシティブなテーマで、線引きに当たって学会論争みたいな意見対立もあったりするので、ここらへんは僕の見解てことで。

2013-02-17 11:58:33
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

始めに、僕の本業の守備範囲は主に「実話怪談」とされるもの。ジャンル/カテゴリ名としては他に、「怪談実話」「恐怖実話」「実話恐怖譚」「実話怪異譚」「本当にあった怖い話」などなど色々あるけど、概念としては「体験者が実在しそこから聞き取った、或いは体験者当人が書いた話」になる。

2013-02-17 12:00:20
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

昔は特に「実話怪談」とは呼ばずに「怪談」と呼んでいた。が、昔は「実話ではない(=採話元の体験者が存在せず、全てが作者の脳内で創作されたフィクションの)怪談」と、採話元の体験者が存在する話との区別は、あまりはっきりとはされていなかったので、実話怪談も創作怪談も合わせて怪談だった。

2013-02-17 12:02:17
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

これにはもっともな事情もあって、「そもそも幽霊を見たという体験者の発言について裏が取れない、体験者が作り話をしているかもしれない、だから怪談と付くモノは実話も創作もなく、全て作り話である」という認識があったからじゃないかなあ、とは思う。

2013-02-17 12:03:28
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

まあ、どこかの段階で「有名な人、著名人、嘘を吐きそうにない(吐いたらまずい)立場の人」など、信憑性の高い人の採話・逸話として語られたものと、戯作・講談・落語など完全な創作のものとの線引きがされていったんじゃないかなあ、とは思う。誰がいつ何を根拠に明確な線引きをしたのかはわからない

2013-02-17 12:06:01
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

ただ、過去の「戯作・創作・講談」に分類されている怪談の中にも、作者の完全な創作ではなくて「当世に流行った噂話、名前の残らない第三者からの伝聞」など巷間収拾譚の類は結構あった。例えば小泉八雲の「怪談」などは収拾譚聞き書きの黎明の作と言えると思うし。

2013-02-17 12:07:56
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

これを、「小泉八雲が事実として聞いて書いた話だから信用できる」と見なせば小泉の怪談は「実話怪談」になるし、「小説家・小泉八雲が嫁の聞いてきた噂話をヒントに彼が創作した作品」と見なせば同じ作品は「小説、創作怪談」になる。

2013-02-17 12:09:13
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

ここらへんの「特定できないが元ネタはあるが、それを書きまとめたらその人の作品になる」みたいな話は、会田誠氏の渦中のアレをちょっと思い出させなくもないw 文章の世界では「一言一句表現が変わらない」といういことは起きにくく、著作権は文章そのものに発生するので、会田氏の例には当たらない

2013-02-17 12:10:53
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

体験者の言葉をそのまま引き写した場合でも、それが「それ以外の文章(主)に対して、分量として少ない(従)のであれば32条の適用内になる。ここら辺りはノンフィクション/ルポルタージュなどでインタビューイの弁を引用するときのそれと同じ処理になってると思う。

2013-02-17 12:12:16
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

で、話は戻って、今、「実話怪談」と呼ばれてるものは、特にどういう話を扱っているか、について。

2013-02-17 12:12:58
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

一口に「怖い話」と言うと現代ではその範囲はかなり広くなっていて、「幽霊、呪い、祟り」「神様、妖怪」などオカルト・スピリチュアルに含まれる系のものから、「サイコホラー(狂人、ストーカー、猟奇殺人)、サスペンス、犯罪」などの人災系、「事故、自然災害、戦争」などの大規模災害系まで幅広い

2013-02-17 12:16:04
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

「幽霊、呪い、祟り」は明らかに怪談の範疇だけど、「神様、妖怪」については著者によって見解が微妙に異なるようで、「神様話=スピリチュアルであって怪談じゃない」とか「妖怪は民間俗習によるもので学術的には実在しないから怪談じゃない」という立場を取る人もいる。

2013-02-17 12:18:21
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

また、「幽霊、呪い、祟り」の類についても、「それは思い込みに過ぎない。科学で説明できる」という立場の人もいるし、「幽霊、呪い、祟り」の他に「人格を持ったモノではないが不可解な現象」を怪談に含む考え方や、「UFO、宇宙人」を「神様、妖怪」のバリエーションとする考え方もある。

2013-02-17 12:20:05
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

この、「UFO、宇宙人」を怪談のうちに含めてしまうというのは些か乱暴で網を広げすぎのように思えるけど実は逆で、1980年代以前の怪談ではUFOや宇宙人のみならず、「世界の七不思議」の類まで怪談のカテゴリに入れられていた、というかそのくらい怪談は「懐が広くて鷹揚で曖昧」だったw

2013-02-17 12:22:57
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

その後、「UFO、宇宙人」の類は怪談から分離されるんだけど(たぶんだけど、これは映画「未知との遭遇」などから続く、リアルSF作品からの影響が大きいんじゃないだろうか)、「神様、妖怪の正体はUFO、宇宙人である」みたいな話は大昔からあって今後も在り続ける気はする。

2013-02-17 12:25:18
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

妖怪の存否については、怪談を書いている人、読んでいる人でも、妖怪の実在は認めない人のほうが主流派だと思う。かつては柳田国男、近代では水木しげる先生の仕事が高く評価され、妖怪が広く認知されたことによって、それらは「民話伝承」「創作物」「マンガのキャラ」として定着した。

2013-02-17 12:27:41
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

民俗学には「聞き書きの書きまとめ」「言い伝えの整理」という側面があるけど、「語られていることが、そのまま在るわけではない」という視点に立ってまとめられた学問であるのに対して、実話怪談は「見た人、体験者がいるなら、少なくともそれは在った、起きたことだろう」という視点に立つ。

2013-02-17 12:29:11
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

例えば大津波は目撃者がたくさんいたから実在するが、目撃者が被害者一人しかいない掏摸は実在しないかというとそういうことはないわけで、「釈明可能な目撃者の人数は、それが証言する事態の存否を肯定否定する材料たり得ない」んじゃないかなー、と思うなど。

2013-02-17 12:31:04
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

目撃者、体験者が一人しかいなくて、同じ場所同じ時間に行っても必ずしも再現するとは限らないから、怪談の多くは「その一人だけの証人の誤謬、誤認」とされてしまいがちだし、運良く怪異の再現に立ち会った人や目撃者が複数いても「集団ヒステリー」と言われてしまう(^^;)

2013-02-17 12:32:36
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

まあつまり、体験者/目撃者の人数は大いに越したことはないのだろうが、例え一人だけだったとしても、その人数の少なさが「目の前であったることを完全否定するだけの絶対的な材料にはなり得ない」。要するに実話怪談は、「ないとは言えない」「ゼロとは言えない」のニッチに存在しているとも言える。

2013-02-17 12:34:15
神沼三平太@2月末に凄惨蒐 @3peta

@azukiglg 個人的に心理屋なので、色々否定するための材料は持っているんですが、「体験者さんが恐怖を感じた」という事実を否定はできない、という立場です。体験者は自分から嘘はついてないんですよ。

2013-02-17 12:35:35
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

特に、「裏の取りようがない話」「裏を取っても取材者が追体験できない話」「様々な事情(特に身内の事情や個人情報に深く関わる)」などと怪談は密接な繋がりがあるので、聞いた話をそのまま全ては出せない場合もあるし、体験者そのものを伏せなければならない場合はさらに多い。

2013-02-17 12:36:06
江川太郎左衛門英龍 @azukiglg

例えば、体験者Aさんから聞いた話を、「Aさんの体験談」として書いたとする。読者は必ずしも肯定的ではないから、内容の真否に対する疑いを持つ。先にも述べたように怪談は再現性が低く実証が難しい。(実証のための要件が何なのかを誰もくまなく特定できない)そうなると、

2013-02-17 12:37:24