くじら製本さんが語る製本の歴史、アジロ製本とあれこれ

くじら製本さんの熱いつぶやきをまとめずにはいられませんでした。
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戦前から戦後の製本

くじらのおじさん @kujira_binder

今日は戦前から戦後、昭和40年代から始まる現在の製本技術の形、なんていう製本業者で興味ある人間以外が聞いてもさっぱりわからんという話を聞いたので、明日は図書館で製本百年史等々を漁って細かい時系列を確認する日ヴォー

2013-02-17 01:06:42
くじらのおじさん @kujira_binder

個人的には装丁よりも組版ですよ。文字だけの本なら組版とレイアウトを押さえれば文字だけの表紙であってもそれだけで違いますし、マンガ組版も作品の印象をガラリ変えます。レイアウトの意識が付くと作品の見え方がもっと変わる、カモ

2013-02-17 01:11:22
くじらのおじさん @kujira_binder

商業誌は敵だ!みたいな話もあったりしますが、よくよく見ると歴史に裏打ちされた要素がいっぱい詰まってますよ。たとえばルビは肩ツキにして親文字より多くなるときは親文字を下げる、というルールで組まれたものはルビを追っても文章を上から下に見続ける視線移動は変わらないから読みやすい、とかネ

2013-02-17 01:15:45
くじらのおじさん @kujira_binder

単純に中ツキベタでラノベみたいな造語を親文字より多いルビで表現すると目線が上下ジグザグな読み方になって読みにくいとか、ルビルールは統一しておかないと頻出する場合大変とか、どうでもよさそうなルールが実はガッチガチだったりするのを「当たり前」に読んでたりすることに気が付きます

2013-02-17 01:18:22
くじらのおじさん @kujira_binder

まぁでもそういう部分は自分の職にするか隣接した業種じゃなければ手に入らない。なんでかってまぁ聞かれないもの準備して話すようなことも話すような場所もなかったからっていう至極単純なジャパニーズ職人文化だからで終わっちゃうから、というだけだったりもする、秘密なようで聞かれてないだけ

2013-02-17 01:24:04
くじらのおじさん @kujira_binder

大きな図書館に行って、保管庫収納になってる本とか郷土資料の分厚い本に紛れた百年史を読むなどして大体の疑問は解決したのだが「印刷製本機械工業組合百年史」なる昭和五十年の本を探せ、という次の指示を見た気がしてトボトボ帰ってきた

2013-02-17 21:53:42
くじらのおじさん @kujira_binder

なんつーか、歴史探訪で資料を当たりだすと、「○○ページへすすめ」みたいなゲームブック状態になるから恐ろしい

2013-02-17 21:54:22
くじらのおじさん @kujira_binder

あらかじめいくつかの製本会社の長老に昭和戦前の製本様式を聞くことができていたので、製本工業組合百年史の資料数字を非常に有意義に読み解けたことは、一般的なデザイナー側からの装丁や製本の歴史アプローチとは異なる見解を出せるという点において非常に良かったと思う

2013-02-17 22:21:58
くじらのおじさん @kujira_binder

大正8年に製本工業組合から「刷本の移動は印刷所持ちでやるべき」という要望があって、その要望書を要約すると「刷り上がったっていうから取りに行ったらまだ刷ってんじゃん、マジ勘弁してよ」というのがあり、大正時代から印刷所は通称「蕎麦屋の出前」を行っていたことがわかる…ヴァー!

2013-02-17 22:25:54
くじらのおじさん @kujira_binder

「前項(引取の空振り)の場合、其苦痛は忍ぶと致しても製本業者は御注文主と印刷所の間に挟まりて相互の感情を害すまいと致す辛苦は到底難甚事に候」ともある。製本所は大正時代から苦労し続けでアルデバラン

2013-02-17 22:29:38
くじらのおじさん @kujira_binder

賃上げ交渉の部分などでは「向こうアゴ(食事を会社側で用意すること)を廃止するのは事実上の賃下げだからマジ勘弁」というエピソードもあり、製本会社に食堂と賄飯がある工場が多いのはこの辺の名残であるともいえます

2013-02-17 22:34:43

アジロ製本 2

くじらのおじさん @kujira_binder

アジロ製本についても裏取りできた。アジロ製本自体、昭和43年に発想し昭和44年に出版物に採用された日本独自の製本様式で本来的には糸カガリの代用法であったということから上製本用の製本方式に向いていることがわかる

2013-02-17 22:46:05
くじらのおじさん @kujira_binder

裏取りにあたっては装丁家の方が書いた「製本探索」という本を参考とさせていただいたものの、過去の本を買ってきて分解する労力は大変結構であるものの、姫糊とエマルジョンとホットメルトの混ざる時代を糸カガリと無線綴じでバッサリぶった切って製本を語っている部分はまぁ専門じゃないから仕方ない

2013-02-17 22:48:30
くじらのおじさん @kujira_binder

実際の聞き取りと資料に、あと日常の製本業務で得た結論としては、アジロ製本についてはカガリ代用なので上製のニカワに向いたものであり並製のメルトでは現在においても解決していない部分のノウハウ共有がないため、会社によって壊れやすいと丈夫という正反対の意見を持っている理由が確定

2013-02-17 22:51:46
くじらのおじさん @kujira_binder

知りたかった近代製本の変遷については大半が聞き取りと製本工業組合百年史でつかむことができた、けど材料知識や機械設備知識がなければ到底行きつかない部分でもあったので、この世界にいてよかったと思う。この世界にいなければこんな調べもしなかったことは置いておきたい

2013-02-17 22:59:33

圧縮空気の活用

くじらのおじさん @kujira_binder

印刷近代工業化と製本の工業量産化の一番のキーになる部分は印刷や製本の技術ではなく「圧搾空気の活用」というところもあるので、ここをいつどのように実用化していったのかは今後調べなければいけない

2013-02-17 23:01:11
くじらのおじさん @kujira_binder

と、いうのもコンプレッサーを活用する前後では「給紙」というものの概念と効率があまりに異なるからで、古い映像や実作業者の話を聞くと用紙入れは手差しであったことがわかる。活版なら手差しでもある程度可能だがオフセットとなるとこれは難しい、物理的なアテ機構と光学検知の境目である

2013-02-17 23:04:18
くじらのおじさん @kujira_binder

その辺のアプローチとりつつも専門化しないようにまとめていきたいし、まとめ切れたら次のコミティアでブツブツと呟こうかなと思っている次第

2013-02-17 23:10:41

アジロ製本とその他の製本

くじらのおじさん @kujira_binder

昨日調べたことを社長に聞いてみたら「あそこだろ?昔から付き合いアルヨ?」っていう話になり、アジロ製本は「カガリと比べて耳を出しやすいから上製本の作業性で有利だったんだよ」と普及の理由を話してくれた。なるほど無線に比べて有利ではなくカガリに比べてアジロの優位があったという事か

2013-02-18 10:01:28
くじらのおじさん @kujira_binder

アジロ製本のためにある一定間隔の穴をあける「アジロ刃」というのは実は正解じゃなく、無線製本の折加工時に袋状の部分に残った空気が折シワを発生させることからそれを抜くために取り付けられた「エア抜き刃」が正しい、当初は折機に別途付けるものだったのでエア抜き折は単価増しであったそうな

2013-02-18 10:17:16
くじらのおじさん @kujira_binder

並製本として無線トジと比較した場合、必ずこのエア抜き刃を使った折が必要であったことから、アジロは無線よりも単価が高くなった。となれば普及するはずもないが、上製本の糸カガリに対しては単価低減効果が大きかったことから爆発的に普及した、と考えるのが自然かな

2013-02-18 10:20:16