茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【哲学的ゾンビと、因果性】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

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てい（１）意識をめぐる議論の一つに。「哲学的ゾンビ」がある。私たち人間と、客観的に全く区別ができない振る舞いをするのに、一切の意識現象が伴わないような存在（哲学的ゾンビ）が考えられるかどうか。さまざまな論者が議論を提出しているが、未だに解決されていないのには、理由がある。

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てい（２）それはつまり、「哲学的ゾンビ」の問題が、心脳問題の核心そのものであるから。もともと、この宇宙は因果的に閉じている（ように見える）。量子力学の導入するランダム性は、私たちの自由意志の起源にはなりそうもない（そもそも、淘汰圧の下での適応性がないから）。

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てい（３）宇宙の進行が、因果的に閉じている以上、意識に一切言及せずに、私たちの脳を含む身体を力学系の方程式で記述すれば、それで足りることになる。だから、科学は、実際に、人間を含む生命現象を哲学的ゾンビとして扱って、何の不足も感じない。心脳問題は、その意味で慣習科学の外にある。

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てい（４）意識の起源は、今までの科学的アプローチでは扱えないとも言えるし、逆に言えばそれを超えた問題であるとも言える。核心となるのは、やはり、「因果性」の概念である。ある物質系が、時間や空間といった枠組みの中で時間発展する、そこにいかにして意識が随伴するのか。

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てい（５）意識が、閉じている因果性に対して、付加的なものに見えるということは、意識の存在論的地位を反映しているというよりは、私たちの世界認識の限界を示している可能性が高い。McGinnの言うように、cognitive closureでそれ以上は無理だという可能性もある。

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てい（６）私はこう考える。意識は、この宇宙の明白な性質であり、その意味で、「自然現象」の延長である。それが、因果的に閉じた宇宙に対して余計な付加物のように見えるのは、私たちが、因果的発展の前提条件の何かを、見落としているためではないかと。つまり、その先ではなく、前景にあるのだ。

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てい（７）たとえば、時間の発展ということ。McTaggartの１９０８年の論文で論じられているように、時間の進行は、数直線のような構造では扱えない。だから、McTaggartは時間は実在しないと論じる。一方、時間は、私たちが物理学で扱う時間発展の外側にある何者かである。

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てい（８）あるいは、「視点」ないしは「カット」の問題。相互作用する素粒子同志を結ぶ世界線を、その「横」から見るのではなく、世界線の真ん中でカットすると、どのように見えるか。意識が、前頭前野を中心とするネットワークの世界線のカットから生まれるとすれば、問題はつながっていく。

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てい（９）つまり、哲学的ゾンビが存在するかどうかを含む意識の難問題は、結局、私たちが科学的世界観の下で前提としている因果性の概念の根幹に抵触するのであろう。その意味で、同時性の前提条件を再検討することで矛盾を突破した相対論と同型の理論が、必要とされる可能性がある。

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以上、連続ツイート第８６８回「哲学的ゾンビと、因果性」でした。