ザイバツ・ヤング・チーム #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チャリチャリチャリ……チャリチャリチャリチャリ。鎖を巻き上げる陰鬱な音を聴き、くたびれたガウン姿のやつれきった男は顔をしかめる。すぐ目の前の闇の中からバカにしたような笑いが発せられた。「ウフフフフ……クッフフフフフ」「ご、ご満足で」やつれきった男は笑顔を作ろうとした。 1

2013-03-07 22:28:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とてもいい。とてもいいぞナミコモ=サン。そなたは実にカワイイ茶菓子……」含み笑いまじりの声に、やつれきった男は震え上がり、発作的にドゲザする。「助けてください」「ウフフフ……」チャリチャリチャリチャリ。音を立てて上へ上がってゆくのは金属製の鳥籠である。中には……気絶ニンジャ!2

2013-03-07 22:36:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「助けてくださいとは異な事を。おれがいつ危害を加えると言ったかね?こんなにもかいがいしく働いてくれるモータルを、どうして……クフフ……いたぶるなどと」「許してください」「許してくださいとは異な事を。おれは何も責めてなどおらぬではないか。愛しきハチミツダンゴ……」「アイエエエ」3

2013-03-07 22:42:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドゲザするナミコモの後頭部を、そのニンジャの足がゆっくりと踏みつける。然り。ニンジャだ。彼は愉悦に濁った目で頭上空間の闇を見渡す。天井から鎖で吊られた金属鳥籠が幾つもある。鳥籠?そのサイズはあきらかに人間を想定したものだ。それぞれの籠には住人がある。意識のあるものもいる。 4

2013-03-07 22:47:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カシャ、カシャ……弱々しく内側から揺さぶられる籠の音。声は無い。「解放してください。どうか私を」ナミコモは言った。「データの放流は十分の筈です。これからもここにどんどんやってきます。ウィッカーマン=サン……どうか」「ウィッカーマン?」ニンジャが訊き返す。「そうだ。おれの事だな」5

2013-03-07 22:52:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは後頭部に置いた足をねじるように動かした。「だが、なぜ解放を?」「アイエエ……私は何もかも差し出し、何もかも……何もかもお膳立てをして、全てを捧げました」「その通り。ウフフ……利発でよく気がつくカンテン……だが、なぜ解放を?」「どうか」「なぜ、おれが解放すると?」6

2013-03-07 22:57:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私はもうお役に立てません」「確かに少し痩せたな、モータル……」「ただの老いぼれです。貴方に何もかも捧げてしまいました」「なかなか、ウフフ、馬鹿げて楽しい城ではないか。文明のいじましさがカワイイ……」「どうか解放してください」「おれに命令してはダメだ」「アイエエエ」 7

2013-03-07 23:02:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは足をどけた。そして、逆の足で踏んだ。「今の……」上を見る。「奴はニンジャだな……一人でやって来たと言う事はあるまい。複数のニンジャか?」「わかりません」「そうだろうとも。ニンジャはいい。とてもいい。おまえたちはカワイイだが、滋養の点ではちと物足りぬゆえに」8

2013-03-07 23:08:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「殺してください。楽にしてください」ナミコモが泣き声を漏らした。「なぜ?」とウィッカーマン。「その必要がどこに?おれに命令してはダメだ」「アイエエエエ!」「フームム……フム?」ウィッカーマンは足を離し、踵を返して奥へ歩いた。そして、台座の上の拳大の陶器を見下ろす。……墨壷。 9

2013-03-07 23:18:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは手を伸ばし、白磁の墨壷の蓋をいとおしそうに撫でた。バチバチと火花じみた音が微かに鳴り、蓋の隙間から緋色の脈打つ光が漏れた。光は台座に、さらにその周囲の床に、謎の緋色の文様を一瞬だけ閃かせた。文様は葉脈めいて、広間の壁を伝い、天井を伝い、鎖を、籠を光らせた。 10

2013-03-07 23:24:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウィッカーマンは台座の傍の操作台に触れた。操作パネル液晶が反応し、ガゴン、と軋む音が頭上から降って来る。そして、チャリチャリチャリ……鳥籠がひとつ、降りて来た。「ウフッ、グフッ」嗚咽しながら、ナミコモは鍵束を手に取り、床に降りた鳥籠へ向かう。籠の中の人影は動かない。死体だ。11

2013-03-07 23:33:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナミコモが震える手で解錠し、籠を開く。「オゴーッ」歪んだスモトリが荒々しく歩み寄り、ナミコモは泣きながら横へ退いた。歪んだスモトリは死体を引きずり出した。「よき時だった。ウフフ……あのニンジャ。よき補充」ウィッカーマンは呟き、ミイラめいた死骸に屈む。その額を爪で傷つけた。12

2013-03-07 23:38:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ……アイエエエエエ……!」ナミコモは後ずさり、床を這いずるように遠ざかる。ドクン!ドクン!大きな鼓動音が死骸の中から聴こえたかと思うと、その枯れ果てた身体は電気ショックを受けたように痙攣した。額に爪でつけられたのは傷ではない。とある神話時代の印である。邪悪な印だ!13

2013-03-07 23:47:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドクン!ドクン!やがて死骸は歪み始めた。「アー、イーアアアー」死骸は呻き始めた。ウィッカーマンはそれを振り向きもせず、スタスタと歩き、ナミコモを追いつめる。「どこへ行く?モータル」「アイエエエ!」ニンジャはナミコモのガウンを掴み、元の場所へ引き摺った。失禁の跡が床に筋を作る。14

2013-03-07 23:53:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウフフフフ……まだ容器の半分も満たせていない。ニンジャが必要だ」「アイエエエエー!アイエエエハハハハ!」絶望のあまり、ナミコモは笑い出す。ウィッカーマンはうっとりと呟いた。「我が君カツ・ワンソー……これでは失望されようから……ウフフフ」「アハハハハハハハ!」15

2013-03-08 00:02:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……クアースは目を見開き、眼下の狂笑光景に打ちのめされた。檻!籠か?鳥籠!彼は格子に手をかけ揺さぶった。(((何だ?これは?)))彼のニンジャ視力は下で狂笑するガウンの男をまず捉えた。見覚えが……どこかで……そして男の後頭部を無造作に踏みつけたニンジャを!奴は今、何と言った?16

2013-03-08 00:07:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カツ・ワンソー?カツ・ワンソーの名を出しはしなかったか?脳裏に先程垣間見た映像がフィードバックする。あの身なり……頭を踏みつけられたあの男は、まさか、ナミコモ……?あの太った男の成れの果てだというのか?そして、おお、ナムサン!眼下のニンジャがクアースの覚醒を知覚!目が合った!17

2013-03-08 00:16:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのニンジャの瞳の奥には、奇妙な老いの影が……否、老いというのは正確ではない……永い時間の影があった。それがクアースを震撼せしめた。彼がザイバツにおいて知る、あるいはクエストにおいて敵対した、他のどのニンジャとも違う目……「ドーモ。ウィッカーマンです」ニンジャがアイサツした。18

2013-03-08 14:19:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ」クアースは唾を飲み込んだ。震える手を抑えながら、アイサツを返した。籠の中から。「クアースです」「ウフフ……クアース=サンか。ウフフフ。時代は様変わりした」ウィッカーマンは話しだした。「ハトリの系譜のハラキリ者だな?この時代の……ウフフ……姑息な真似の……」19

2013-03-08 14:25:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴様はどこのニンジャだ」クアースは呻いた。ウィッカーマンは眉をしかめた。「フゥーム、やはり話にならぬ。おれは今後永劫、この手の不作法に耐えねばならぬ定めか。よいか、これは尋問だ。おれが問うたのだから、お前の問いは、おれの問いに答えてからだ。お前はハトリのハラキリ者だな?」20

2013-03-08 14:31:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハラキリ者」クアースは呆気にとられた。ウィッカーマンはかぶりを振った。「もうよい。質問をしくじったな。で、何だ?」「お前は何者だ」「ウフフフ!おれはニンジャだ。そしてお前らハトリ者の不倶戴天の敵」ニンジャの目に不穏な表情がよぎった。「最後に眠りについたは、アルマダ海戦の折」21

2013-03-08 14:48:07