マンドリンで演奏するシベリウスの交響曲第6番について

メトロポリタン・マンドリン・オーケストラ 音楽監督/アレンジャーの @udupho が2010/9/12の演奏会のプログラム「シベリウスの交響曲第6番」についてつぶやきます。
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笹崎・T・譲 @udupho

9/12のプログラム、最後にシベリウスの交響曲第6番です。去年おととしと、交響曲第5・7番、ヴァイオリン協奏曲を取り上げ、楽団員もシベリウスの表現手法に次第に慣れてきていると思います。こういう曲の取り上げ方もいいんじゃないかと。

2010-09-03 15:54:15
笹崎・T・譲 @udupho

さて、シベリウスの後期作品については分析資料も少なく、まだまだ研究が進んでいない作曲家なのかもしれません。ドイツ・ヨーロッパの音楽に対する分析手法がほとんど通用しないのもその一因なのかもしれません。

2010-09-03 15:54:24
笹崎・T・譲 @udupho

したがって、数少ない資料、カレワラなどフィンランドに関する資料、スコア、数々の録音からシベリウスの意図を推定するところから編曲開始。James Hepokoskiの交響曲第5番の分析(洋書)は視点がずいぶん役に立ちました。(ただ、お名前が・・・笑)

2010-09-03 15:54:45
笹崎・T・譲 @udupho

シベリウスは交響曲第5~7番を同時並行で作曲を進めたようなのですが、とくに第6・7番はできるだけ対照的な交響曲に仕上げようとしていたように思われます。共通点も多いのですが。

2010-09-03 15:54:50
笹崎・T・譲 @udupho

1つ注目すべき点は、交響曲第6番、7番では教会旋法が多用されていること。シベリウスは交響曲第2番作曲時点からパレストリーナ研究を開始しており、その成果が反映されているのではないかと推測。

2010-09-03 15:54:55
笹崎・T・譲 @udupho

おそらくパレストリーナ研究は、シベリウス自身の音楽のルーツを自己分析する手段だったのではないかと推測しています。第6番ではドリア旋法中心。第7番ではミクソリディア旋法が中心。これは対照的な交響曲を目指した証拠かもしれません。

2010-09-03 15:55:02
笹崎・T・譲 @udupho

ドリア旋法はレミファソラシドレのこと。第1楽章の冒頭など、シャープもフラットもつかない小節が続きます。17小節目でCisが初めて出現、しかし全体的には白っぽいページがしばらく続きます。この部分は独特の美しさです。

2010-09-03 15:55:07
笹崎・T・譲 @udupho

パレストリーナの教会旋法は順次進行が特徴です。シベリウスの交響曲第6・7番でも順次進行が中心ですね。6番冒頭は下行順次進行、7番冒頭は上行順次進行。このあたりもシベリウス自身、意識していたのでしょう。

2010-09-03 15:55:13
笹崎・T・譲 @udupho

和声交代も特徴的です。7番では、長い倚音からの解決や、和声が時間をかけてゆっくり変容する箇所が多いのですが、6番では大胆な並置が目立ちます。これもシベリウスは意識して使い分けているように想像します。

2010-09-03 15:55:18
笹崎・T・譲 @udupho

交響曲第6番の無窮動的なリズムは、この時期の作品群にあっても特徴的です。たとえば第1楽章67小節にはじまった8分音符連続のリズムは、223小節目まで、ほぼ間断なく現れます。リズムが途切れたところから、また別のドラマが始まるのが素晴らしい。

2010-09-03 15:55:24
笹崎・T・譲 @udupho

ところがこのリズム、実演ではあまりよく聞こえないケースが多いのです。ハープに割り当てられた8分音符はとくに聞こえにくい。これは、当時のハープの楽器の違い(余韻が短い)、その後のハープ以外の楽器の性能向上(大きい音が出る)によるものかと。

2010-09-03 15:55:29
笹崎・T・譲 @udupho

幸い、マンドリン・オーケストラにはギター・パートが含まれるので、これをうまく活用してリズム・セクションの輪郭を出していくことで、シベリウスの本来の意図が出てくるのではないかと考えました。

2010-09-03 15:55:35
笹崎・T・譲 @udupho

楽器編成は、ティンパニ、ハープ、鍵盤楽器、8つのソロ・パートを含む20パートからなるマンドリン・オーケストラ。コントラバスを2段で書いているので、26段譜。原曲より段数が増えていますが・・・。よくあることです。僕の編曲スコアでは多くも少なくもない段数。

2010-09-03 15:55:40
笹崎・T・譲 @udupho

そうそう、この曲は対向配置で演奏します。各楽章の聴きどころに移る前に、ちょっと出かけてきます。またのちほど。

2010-09-03 15:55:45
笹崎・T・譲 @udupho

シベ6の第1楽章はリディア旋法で始まります。これがきれいなんだ。途中で第1主題が出るのですが、断片的な提示(ソロ楽器が担当。この編曲も確信犯的)。これが次第につながって旋律になっていく仕掛け。

2010-09-03 21:31:19
笹崎・T・譲 @udupho

Cis-E-G-Hがcresc.し、C-E-Gの和音が残ります。これも印象的な場面です。これが終わると次の場面で8分音符のリズムが開始します。この場面の旋律はあたかもマンドリンのために書かれたような軽やかなもの。

2010-09-03 21:31:58
笹崎・T・譲 @udupho

8分音符の動きだけが残るところから展開部。これが、また高音部のマンドリンに合っています。途中で今までの主題断片が組み合わさった旋律が出現します。異なる和声が並置され、リディア旋法に戻ったところが再現部。

2010-09-03 21:32:12
笹崎・T・譲 @udupho

再現部からしばらくして、原曲では木管の速いパッセージの難所。編曲ではソロ楽器群の非常に弾きにくいクーレ奏法。下行と上行で微妙に音が違うパートも。まあ、見てください。

2010-09-03 21:32:21
笹崎・T・譲 @udupho

8分音符の動きが突然止まり、それまで出番が少なかった低音部が急に活躍しはじめます。黒い雲が急に立ち込めたかのように。そして、不思議なコーダ。急にリディア旋法に戻って終わるところも不思議な印象を残します。

2010-09-03 21:32:28
笹崎・T・譲 @udupho

第2楽章に移ります。ソロパートとトゥッティのパートはほぼ独立させた編曲になっています。ソロというよりは、1人で演奏する1つのパート。このような1人1パートとしてのソロ楽器の扱いは僕の編曲の特徴だと思います。

2010-09-03 21:32:34
笹崎・T・譲 @udupho

冒頭はわざと何拍子かわからない書き方がされています。これが次第に整い、拍節感が出てきます。そして、異なる和音の並置。ここは面白いオーケストレーションになっていると自己満足。

2010-09-03 21:32:42
笹崎・T・譲 @udupho

マンドリンのtuttiがとぎれとぎれに歌を歌い始めます。その歌も次第に8分音符の連続に。ここにシベリウスの計算が見え隠れします。8分音符は次第に8分音符の3連符に、そして16分音符へと細分化されていきます。

2010-09-03 21:32:48
笹崎・T・譲 @udupho

16分音符の伴奏になったところで、とぎれとぎれだった主題がつながって提示されます。この箇所はなかなか感動的です。

2010-09-03 21:32:53
笹崎・T・譲 @udupho

突然始まる「森のざわめき」。トレモロパートと単音パートに分けて演奏するのですが、まだ最終的にどう分けるのかは実は未定・・・。もちろん仮決めはしていますが、響きを確認しながら臨機応変に対応予定。シベリウスらしい響きを優先。

2010-09-03 21:33:00
笹崎・T・譲 @udupho

第3楽章。8分音符の連続の主部と騎行のリズムのトリオが交代するわかりやすい形式ですが、シベリウスの工夫がそこここにあります。もともとヴァイオリン協奏曲第2番を想定して作曲していただけあって、弾くのがたいへんな楽章でもあります。

2010-09-03 22:54:26