『日本人を考える 司馬遼太郎対談集』 三

再読しながら、印象に残った部分を引用中。 十二名との対談→四名を区切りとします。(三で完結) 桑原武夫(くわばら たけお) 貝塚茂樹(かいづか しげき) 山口瞳(やまぐち ひとみ) 続きを読む
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白汀 @hakutei0528

→今西 まあ、いまの大学では百人、二百人の学生を前にしてマイクの講義でしょう。あれではどのようにえらい先生が講義しても、その影響力が薄まってしまってダメですね。やはり個人接触でないと……。 司馬 やはり塾ですね。#日本人を考える

2013-03-31 07:16:50
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 人類の社会には、人類がそれを理想としたり目的としたりしている文明形態がありますね。あそこまで行ったら最高なんや、というまあ合意の目標のような。だから、文明が進むことは無条件にいいことだ、と思われてきたし、私などはいまでもそう思っています。しかし、最近では→

2013-04-01 09:24:33
白汀 @hakutei0528

→いまの文明がもたらす害がふえてきて、進歩への信仰の手前、当惑したり、信仰が揺らいだりして、じつにやるせないことですな。 今西 このままでいったら、やはり良うはないと思いますけど、これだけ声を大にして人類は滅びるといっていれば、すこしは薬がきくのやないでしょうか。#日本人を考える

2013-04-01 09:25:58
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 今西 いま、人類は滅びるかもしれないといいだしているでしょう。しかし、そういっているのは文明中毒患者なのですね。もし本当に文明に中毒して滅びるのがいやなのやったら、文明を断(た)ったらよい。どうせ人間のつくった文明なのだから、それが命取りになるというのやったら→

2013-04-02 08:20:07
白汀 @hakutei0528

→そんな文明はこわしてしまってもかまわないはずやないですか。そして、もっと、よい文明をつくったらよいやありませんか。しかし、そうはいっても、いうとおりにはできぬところに問題がある。文明をつくりかえるのは、着物を着かえるようなわけにゆかぬ。#日本人を考える

2013-04-02 08:20:19
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 今西 どんなものでも無限に上昇を続けることはできない。進化にしてもそうです。テンポが早くなる時期があって、そのあとは、段々ゆるくなり、最後に変化のないような状態になる。人類の歴史もそういうことの繰り返しではないやろうか。→

2013-04-03 09:02:11
白汀 @hakutei0528

→アメリカの学者で「これからは一層変化のはげしい時代が来る。それに適応できなければ、その時代を背負えん」という人がいうけれど、そんなめまぐるしい時代は、誰も喜ばへんでしょう、人間の生理的条件からいってもね。#日本人を考える

2013-04-03 09:02:21
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 偉大なる支配者が現われて、その人物に偉大なる権力を持たせないとできないことかもしれませんな。まあ、ギリシャ以来の民主主義というものも、そういう面から電池が切れかかってくるかもしれないですね。 今西 その通りかもしれませんな。学問をコントロールする→

2013-04-04 09:17:07
白汀 @hakutei0528

→ってことは、昔、秦の始皇帝が書物をみんな燃してしまったような、ああいう決断がいるわけやからね。 司馬 いわば大破壊の能力も潜在的にもった大権力でしょうね。そういう大権力は、人間の形をしていないかもしれませんよ。電子計算機の形をしているかもしれない。#日本人を考える

2013-04-04 09:17:29
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 今西 人より先に、百年も前にええこというても、誰も聞かんでしょう。その時代に合わなければダメなんです。だから、世の中が満ちたりているようなときはダメやね。もっともっと人類が悲惨な生活をするようにならなければ、いままで話しているようなことは実現しませんよ。→

2013-04-05 08:20:33
白汀 @hakutei0528

→科学文明が行き詰まって悲惨になった実状を眼のあたりにみんうちは、創造力も働かんのと違いますか。 司馬 そうなんだ。それはそうなんだ。 今西 つまり、とことんまで行かないと、人類は救われんということなんやね。(笑) #日本人を考える

2013-04-05 08:21:03

今西錦司(いまにし きんじ)
明治三十五年生まれ。京大卒。
自然史学、生態学専攻。理学博士。
著書に『生物社会の論理』『山と探検』『カラコラム』など。