山本七平botまとめ/「天」賦ではなく「多数決」賦人権を民主主義と考える日本人/~「内外規範の峻別」をせず「一致同心」を求める日本的伝統とは~

山本七平著『1990年代の日本』/Ⅱ日本人の履歴書ー中国からの学習と勤労思想の確立ー/人民絶対と聖人待望「天意=人心論」/72頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【天意=人心論】前にクラスの中で持てあましている子供を、クラスの全員が一致して懲罰に付すると決議し、その子供を裸にして「さらし者」にしたという事件があった。<『1990年代の日本』

2013-03-24 18:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

②それが問題になったとき、教師が 「クラスは自治で民主的な決議に基づくのだから、それを否定したら民主主義がなくなる。 また、純真な子供の決議なのだから誤っているはずがない」 という意味のことを言ったという。

2013-03-24 19:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

③新聞記者から意見を求められたので「そんな事は民主主義と関係ない」と返事をした処、投書が来た。 その多くは民主主義の誤用、行きすぎ、民主的教育の試行錯誤といった見方で、それを「当然だ」とする反論は…なかったものの「民主主義と無関係」には賛成できないという趣旨が殆どであった。

2013-03-24 19:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

④それらの返事に私はまず簡単に民主主義の前提は「天賦人権論」だと記し「天賦」とは「天から与えられた」の意味、いわば絶対者によって与えられた絶対的権利であるから、多数決をもってしてもこれは剥奪できない。また多数決をもってしても、人権のない者、例えば動物に人権を附与する事はできない。

2013-03-24 20:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤いわば「多数決賦人権論」ではない。 さらに、これに関連する問題として次の例をあげた。 例えばクラスに一人だけキリスト教徒の子供がいる。ところが、皆が 「食前に一人だけお祈りなどされると気分をこわす、キリスト教をやめてもらおう」 と全員一致で決議したらどうなるか。

2013-03-24 20:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥それも民主主義だから当然だというなら「思想・信仰の自由」を否定することになる。 それらはすべて西欧民主主義とは関係ない、 むしろ「一致同心」と内的・外的規範の同一化を要請する日本的伝統であると記した。

2013-03-24 21:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦これに対して反論はなかったが、それを受取った人が、完全に納得したとは思わない。 「山本さんはよくパウロなどを引用して『内外規範の峻別』といわれるが、それは具体的にはどういうことですか」 「きわめて簡単なことで、いわばマージャンをやるようなことです」 「マージャン?」

2013-03-24 21:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧「…例えばイスラム教徒とユダヤ教徒とキリスト教徒とマルクス主義者の四人でマージャンをするとしましょうか。 各人の宗教的もしくはイデオロギー的な教義は全く違い、従ってそれに基づく内的規範は全く別ですが、マージャンの世界に遊ぶのならそれに関係なく共通の『法』が守られねばならない。

2013-03-24 22:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨勿論このルールは、四人の合意で変更はできる。 しかし、そのルールをもって各人の天賦の人権は勿論、いかなる内的規範も侵すことはできないということです。 世俗法とは元来そういうものでしょう。 そうでなければ思想・信仰の自由などはあり得ない」。

2013-03-24 22:57:45