山本七平botまとめ/フラウィウス・ヨセフス、民族の裏切り者であり、予言者であり、愛国者であり、臨床医であった男/~民族の滅亡を双方の立場から詳細に見続けた史上唯一の人物~

山本七平著『存亡の条件ーー日本文化の伝統と変容ーー』/第二章 民族と滅亡/ヨセフスの前半生/30頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

⑧いわば彼は、一民族の敗戦と滅亡を、双方の側からその現場において詳細に見つづけた、史上唯一の人かもしれない。 従ってその臨床の記録は、他に類例がなく、一民族の破滅という問題の最も重要な点をついているといえる。

2013-03-28 16:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨さらに彼は、以後はローマ″貴族″であり、前述のように生涯の半分を無事平穏に過ごし、公式文書やら関連資料を十分に活用し、落ちついて著作にふけることのできる立場にあった。

2013-03-28 16:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪明らかに公式記録の引用とわかる部分もある。 このような位置にいた人間も、また非常に珍しいといわなければならない。 彼については、本稿を進めるためには、以上で十分であろうが、最後に付記すれば、彼は同胞から徹底的に憎悪されたことである。 当然かも知れない。

2013-03-28 17:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫道連れにして一緒に死んでやろうといった陰謀すらあった。 だが、たとえどんなに憎悪されても彼自身は最後まで愛国者であり、あらゆる方法を講じて、自民族を弁護しつづけた。 彼に欠点があるとすれば、それは徹底的に冷静で絶対に熱狂せず、どんなときもカーッとしなかったことかも知れない。

2013-03-28 17:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬その「弁護」において、一見、感情の高まりを見せているようなときでさえ、実に冷静な論旨を一貫して進めている――。 それが、私が彼に臨床医を感ずる理由である。

2013-03-28 18:27:56