モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring VI~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーターサイクルダイアリー~Episode of Spring VI~ #mor_cy_dar

2013-05-17 19:53:04
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(今日は……結構、気合い入ってるやつが多いな……)  大多磨周遊道路においてピークタイムというものがあるとすれば、それは朝一や夕方ではなく、昼を挟んだ数時間だろう。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:54:06
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 あふれかえる観光客の四輪に匹敵する数の二輪が、都民の森駐車場を埋め尽くし、ふるさと村手前のストレートでは、警察が『店』を広げている。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:54:30
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おっと」  流す程度の時速70km。月夜見第一駐車場へのぼっていく途中、ドコドコという爆音が、三鳥栖志智(みとす しち)の駆るVT250スパーダの背後に迫ってきた━━と思う間もなく抜かれた。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:55:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 特徴的なトラスフレーム。Lツインエンジンが吐き出す排気が、こちらのヘルメットを叩くのではないかと思えてくるほどの音圧を伴って押し寄せてくる。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:56:56
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ドゥカティのモンスター……だっけな。はっえーな)  前を行くその速度、目測で100kmには満たない程度だろうか。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:58:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 VT250スパーダでも、あの速度で走ることはできる。  だが、問題は加速だ。  250ccのモーターサイクルがよりパワーのあるマシンを追いかけて、峠の上りを走るときに逃れられないハンデ。 #mor_cy_dar

2013-05-17 19:59:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「アクセル開けてるときは速い……けど、コーナーは遅い」  志智は今『流して』いるだけだ。大きくスロットルをひねることもないし、ブレーキングを詰めることもない。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:00:04
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 そもそも、重力が車体を引っ張ってくれる上りでは、エンジンブレーキだけでも事足りてしまうくらいだ……。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:00:15
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ふーん……)  おおげさに腰をずらして走る、ジーンズとライディングジャケット姿のドカモン乗り。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:00:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 胸の前には大きなタンクバッグ。カメラでも入っているのだろうか。  くたびれたグローブは、ハンドルから伝わる振動に必死で耐えているようにも見える。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:00:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(なんか……アレなんだよな。でも、抜くのは無理か)  直線番長、という言葉を思い出す。  四輪ならば単なる蔑称でしかないこの呼び名も、モーターサイクルにとっては無視できない意味を持つ。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:01:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 100メートルにも満たない直線があれば、安全に前走車をパスできるのが二輪という乗り物だ。それほど四輪と二輪の間には、実用域における加速力の差がある。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:02:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 だが、二輪同士であれば、加速はエンジンの排気量におおむね比例する。  つまり、基本的に直線では排気量の劣る側は、相手を抜き去れないということになる。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:03:00
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 そしてブレーキングやコーナー途中で相手を抜き去る行為が、公道において危険すぎる行いであることを考えれば━━抜けるはずなのに抜けない、という状況がしばしば発生するのだ。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:04:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……ダメか」  コーナーの手前でぴったりと背後につける。コーナリング中もそのままだ。つまり、『こちらはお前より速く走れる』という意思表示だ。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:04:36
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 先行するドゥカティ・モンスターがミラーでそれを確認していないはずはない。  しかし、一度前に出た手前か、あるいはビッグバイクを操る者のプライドか、道を譲る気配はない……。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:05:46
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ドゥカティ・モンスターって何ccまであるんだっけ……400もあったよな……俺があれに乗ったら、どんな走り方ができるのかな) #mor_cy_dar

2013-05-17 20:06:13
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 まもなく開けたロングストレートだ。これ以上つついても仕方ない。  志智(しち)があきらめてスロットルを戻そうとした、その瞬間だった。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:06:32
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「っ!?」  真後ろで高音。先月に聴いたCBR250RRの絶叫とは異なる、爆発的な音。  どこまでも響き渡っていく4stのそれではなく、一気に膨張し、そして雲散霧消する儚さを内包した高い排気音。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:07:00
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(黒……それに、白!?)  右側。志智の視界を一瞬、黒い車体が横切った。  それは先行するドゥカティモンスターと同じように、パイプをくみあわせたトラスフレームで、VT250スパーダにも劣らない細身の車体だった。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:07:17
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 しかし、ヘルメットのバイザーごしに、志智の視界を覆ったのは白。  左右にふりわけられた二本のサイレンサーから噴き出る白煙である。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:08:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ツンと鼻をつく石油の匂い。しかしガソリンのそれとは違う。  それは、かつてのバイクブームを駆け抜けた者達なら、高い確率で「赤缶だな」と当てることができる特徴的な香り。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:08:57
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(そうか━━これ、2ストロークエンジン……)  志智が確認する暇もなく、先行する黒い2stのマシンはみるみるドゥカティ・モンスターに肉薄する。 #mor_cy_dar

2013-05-17 20:09:17
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