仮面ライダーW Rの脅威/帰って来てくれ仮面ライダー 『チャプター10・Wのキセキ/風の都の贈り物』
それでは、本日もスタートします。 仮面ライダーW Rの脅威/帰って来てくれ仮面ライダー『チャプター10・Wのキセキ/風の都の贈り物』 http://t.co/y5fw7z98Bx #WR
2013-05-19 21:02:13――絶望が、お前たちのゴールだ。 十数分ほど遡り、小島の入江を抜けた野原の上。 アクセルトライアルに変身した照井は、「サイクロン」メモリを挿したエンジンブレードで鷹村の六本の腕を剥ぎ取り、無防備となった胸部のメモリを蹴り砕く。1 #WR
2013-05-19 21:02:49その背後で、加賀があのビーム砲にエネルギーを集束させている。アクセルはブレードに「ヒート」のメモリを挿し、相手が発射するより先に砲口にブレードを投げ入れた。2 #WR
2013-05-19 21:03:54ヒートの熱量と充填されたエネルギーとが混ざり合い、爆発を起こして黒焦げになってしまう。アクセルは突っ伏したまま動かない加賀の体からブレードを抜き、右脇腹に露出したファイズのメモリを引き抜いて握り潰した。3 #WR
2013-05-19 21:04:12「これで終わり、か」 「さっすが竜くん! ヤバイよこれ、マジでホレちゃう五秒前!」 「なんだ? 既に惚れているんじゃなかったのか」 「ううん、うそうそ! 今も昔もあたしは竜くんにベタ惚れッ!」4 #WR
2013-05-19 21:05:12などと、照井と亜樹子が傍から見れば薄ら寒い会話を交わしていた中、眼前のビルの一部が倒壊し、瓦礫を巻き込む大きな風が吹き上がった。開いた穴から仮面ライダーが顔を出し、中に向かって飛びこんでいる。5 #WR
2013-05-19 21:06:10二人は倒壊したビルの中へと足を踏み入れる。戦いの影響からかあちこちに亀裂が走り、今にも崩れそうだ。黒いコートとフェルト帽が血溜まりに濡れ、瓦礫に引っかかって揺れている。「黒幕」が身に纏っていたものだろう。左翔太郎は血溜まりの中、空ろな目で力無く床にもたれかかっていた。7 #WR
2013-05-19 21:06:54「どうしたの? どうかしたの翔太郎君! うわッ、何よ、何なのよこの血は!?」 「左……、しっかりしろ、左!」 放心した翔太郎の肩を揺するが、反応がない。出血は既に止まっているものの、このまま放っておくわけには行かない。8 #WR
2013-05-19 21:08:32「何にせよ病院に連れて行かねばな。所長、左を抱えたまま俺の背に乗れるか」 「あぁ、うん。頑張る……。安全運転でよろしくね、竜君」 「努力しよう」9 #WR
2013-05-19 21:09:40アクセルに変身した照井は、バイクモードに変形し、亜樹子と翔太郎を自身の背に乗せる。彼の背で揺られたことが刺激になったか、うわごとのように何かを語り始めた。 「また会おう。”また会おう”……か。そうか、そうか……さよならじゃ、「さよなら」じゃ、ないんだな……」10 #WR
2013-05-19 21:10:28彼の異変に、抱きかかえていた亜樹子が気付く。「あ、翔太郎君! 無事なの? 平気なの!? 竜君竜君大変! 翔太郎君、なんか変なことぶつぶつ言ってる!」 「何ィ……、早すぎるぞ、耐えろ左! 直ぐに病院に連れて行ってやるからな」11 #WR
2013-05-19 21:11:46「勝手に殺すな……! 俺はまだ生きてるっての」 「おわっ、翔太郎君!」 「無事だったか、平気なら平気だとすぐに言え」 「すぐにって、無茶言うなよ。見ろよ俺のこの姿! あぁ、くそっ……離せってんだよ亜樹子ォ」12 #WR
2013-05-19 21:13:16亜樹子の手を振り払った翔太郎は、まだ痛む腹を押さえつつ強引に体を起こす。 「……終わったよ。もう奴らが悪さすることはねぇ。サンキューな、照井。亜樹子」 「気にするな。大した手間じゃない」13 #WR
2013-05-19 21:14:39「ね、ね。結局あの黒幕ってどんなやつだったの? 風都が嫌いで、こんな街なんか壊れてしまえーって言うような?」 「いや」亜樹子の問いに、翔太郎はそれは違うと首を振る。 「あいつは誰よりも風都を愛していたよ。愛しすぎたからこそ傷つけた。あいつも街も、誰も悪くなかったんだ」14 #WR
2013-05-19 21:15:29「何それ。含まないでちゃんと説明しなさいよ」 「含んでなんかいねぇよ、言葉通りの意味だ。これ以上説明する気もない」 「何よ何よ、どうでもいいことで格好つけちゃって」 「いいだろ何だって。それより亜樹子ォ、いい歳こいて恥ずかしくないのか、ぶーって」 「うるさいわッ!」15 #WR
2013-05-19 21:16:49亜樹子も、彼女たちを背に乗せる照井も、翔太郎が何を隠し、わざわざはぐらかしているのかは分からない。だが彼の憑き物が落ちたように晴れやかな顔を見て尚、突っ込むつもりにはならなかった。翔太郎は未だ痛む傷口を押さえ、去り行くビルの方を向き、静かに呟いた。16 #WR
2013-05-19 21:17:29――ありがとう。未来の俺。そして、最高の……相棒。 ――待ってるからな、”その日”を――。17 #WR
2013-05-19 21:17:44事件の首謀者、二十年後の左翔太郎の最期を見届けたWは、壁にもたれかかってその場に座り込む。 ツインマキシマムを行った挙げ句、相手に内臓をかき混ぜられ、翔太郎の体力はとっくに限界を超えていたのだ。仮面ライダーに変身していなければ、彼もとうにあの世行きだっただろう。19 #WR
2013-05-19 21:20:24[――楽にしてくれ翔太郎。僕が内側から腹の傷を塞いでみる。君は絶対に死なせない] 「済まねぇな、毎度毎度」 会話が止まり、時間だけが静かに流れる。相棒が近くにいるのに、なんだこの虚しさは。翔太郎は静寂に耐えきれなくなり、腹の痛みを圧し殺してフィリップに問いかける。20 #WR
2013-05-19 21:22:34「……なあ。このメモリさ、なんで俺のところに来たんだろうな」 [――その質問、今答えなくちゃ駄目かい? 相当忙しいんだが] 「頼むわ。分からないままじゃ安心して寝られねぇ。まさか、お前が自分の意思で助けに来てくれたのか?」21 #WR
2013-05-19 21:24:09[――一個人の我が儘でメモリの中に意識を綴じ込められるのなら、君に言われるまでもなくとっくにやっているさ。僕の意思じゃない] 「じゃあ誰が」22 #WR
2013-05-19 21:25:33仮面ライダーWの右腕は、顎先に指を乗せ、少し考えてから答える。 [――あくまで僕の推論なんだが、それは”街”の仕業なんじゃないかな] 「街……? 風都がやった……って言いたいのか?」 [――その通りだ]23 #WR
2013-05-19 21:25:48Wの右半身は穴の開いた部屋の外から、半分だけ修復された風都タワーを眺め、話を続ける。 [――『自分の力でひたすら頑張って頑張って、それでもどうにもならなくなった時、その勇気と努力を称え、神の如き偉大な力で世界を救う』――、ある本の中に記述されていた”英雄”の話さ]24 #WR
2013-05-19 21:27:40