第二十二話:金魚すくい 第二十三話:猫又 第二十四話:帽子
- C_N_nyanko
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僕は息をひとつこぼして、男の子の頭を撫でた。男の子は気持ちよさそうに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らす。 君にちゃんと謝れなかったのは、少し心残りだった。 男の子が金の目でこちらを見上げた。 僕は訊いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:17:45「ねぇ君、あんなに嫌うこともないのにね?」 その問いかけに。 『君』は、小さく頷いた。 そういう訳で、僕は今、『新しい君』といる。 君が手紙を添えて送ってくれたツナ缶を、君のご飯に出したところ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:18:00帽子に動物の耳がついた風変わりなデザインのものを、たまに見かける。 ハロウィンの季節なんかにはグッズとして猫耳が付いたものが売られるし、変わった趣味の人そういう帽子を好む。 電車でそんな子と乗り合わせてね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:49:47その子がかぶっていたのはうさぎの耳が生えた帽子だった。見れば、ご丁寧にしっぽまでついている。その子が小柄なことも相まって、まるでうさぎ人間のようだと思った。 コスプレイヤーなのだろうと納得して、隣に座る。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:51:17それにしたってこんな帽子どこから手に入れるんだろうと思って眺めていると、その子がうつらうつらし始めた。お疲れの様子だ。 乗り過ごさなきゃいいけど、と案じていると、視界の端で、ぴくり、と、うさぎの耳が動いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:51:53多分気のせいだろう、と初めは思った。この子の頭が揺れたんだろう、と。 けれどまた、耳がぴくぴく動く。僕はもう目が離せなくなって、ずっとその耳を眺めていた。 やがて目的の駅についた。僕は仕方なく席を立つ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:53:41だけどどうしても気になって仕方なくてね。 少し意地悪かとは思ったんだけど、その耳を思い切り握ってみた。 「ひゃぁっ!」 その子は素っ頓狂な声を上げて跳ね上がって、真っ赤になって僕を睨んできた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:54:02「ごめん」 僕は軽く謝って電車を降りた。その子は少し涙目のふくれっ面で僕を見ていた。 それきり遭遇はしていないけれど、帽子をかぶっている子を見るとあの子のことを思い出す。 人参で機嫌をとれば良かったかな。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-24 00:56:35