10周年のSPコンテンツ!
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EnJoe140 @EnJoe140
「夜の街には、あらゆる穴に栓をして歩く男がある。コルクやパテの沢山つまった大きな風呂敷包みを背負って歩く。呼びかけてみても振り返らない。よくよく見ると男の鼻と耳と口には、コルクの栓が詰まっている。男はとっくに死んでいるのだとあなたは知る」
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「あなたは、ナイフ型の携帯電話を手に入れる。切れ味はまるでナイフのようで、あなたはとても満足する。誰もがそいつを片手に歩き回るようになり、誰かが誰かを刺し殺す。当然電話は回収されるが、あなたはそれを当然のことと考える。いずれ勿論、ナイフに携帯電話がつくことになる」
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「僕は彼女の写真を撮るのが好きだ。二百枚に一枚くらいは、コーラの缶が映っている。お前は騙されていると友人は言う。サブリミナル効果がとっくの昔に否定されていることをいくら主張しても聞いてもらえない」
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「盲点の中に虫がいるらしいので引き出してもらう。細長く真っ黒い体をしており、いつまでもどこまでもずるずる抜けて気味が悪い。何が良くもならなかったが、それ以来、たまに盲点が移動するようになった」
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「近所のコンビニエンスストアの清涼飲料水の棚の端には、遊園地と書かれた缶が並んでおり、ほんとに遊園地が入っている。この話を確かめるには、ただその缶を開けてみるだけですむ」
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「今日も母は裏庭で間違ったものを育てている。それは幼い頃のわたしの記憶で、疾うにわたしとは違う形へ成り果てている。母は毎朝そいつとわたしを見比べては、どちらをミソスープの具にするべきかを考えている」
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「NORAD が三度目の降臨を試みるキリストの撃墜を発表したとき、誰もそのニュースを信じなかった。サンタクロースの侵攻をさえ食い止められない軍部の宣撫工作なのは明らかだったし、明日の朝自分たちが目にするものに関しては、誰も疑っていなかったから」
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「彼の人生は140字以内に収まる。それでも随分長いくらいだ。140字以上が必要なものを書こうとし、書けなかった。それで全てだ。なんとまだ70字以上が残っており、残りの数十字が後の人々を苦しめている。たとえば私を」
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「父は大変無口な男で誰もその声を聞いたことがない。最期の瞬間くらい何か言っても良さそうだと枕元に集まってきた親戚たちを、父は迷惑そうに眺めている。恥ずかしそうに一言オギャアと小声で呟き、父は死ぬ」
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「突拍子もない方法で自殺しようコンテスト第一回は失敗に終わる。大熊座の受けた被害はあまりに大きく、コンテストどころではなくなったから。次回以降、暗闇や月や時間を用いた方法は厳禁される。核兵器や生物兵器はその限りではない」
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「私は狙撃手だ。照準の向こうにターゲットが現れるのを待っている。ターゲットの顔を私は知らない。その瞬間が来れば疑う余地なくはっきりとわかるはずなのだ。もう三年もこうしているが、ターゲットが既に過ぎ去ったということはありえない」
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「ある朝目覚めると、僕はいっぱしの男になっている。あなたは総理大臣に任命されましたという葉書を受け取る。アメリカ大統領にスカウトされる。僕は必死に働いて世界はラブとピースに溢れ、みんなとってもハッピーだ。この話は夢落ちじゃない。何故不満があるのかわからない」
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「つくりおきが足りなかったので、息子の弁当箱に台風と稲妻を入れておく。教室は大騒ぎになるだろうが空いているより良いだろう。全身泥まみれになった息子が、髪から滴を落としながら帰宅する。弁当に卵焼きが入っていなかったことに彼は文句を言い続ける」
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「とある文明が滅びたとき、その星の生き物たちは数学方向への脱出を試みた。物質にはもう、希望を寄せていなかったのだ。ある種の数式を書き続けると内実の方が逃げていくのは、その生き物がくすぐったがるせいだともいう」
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「隣のベッドには彼女の全身骨格が転がっている。居間へおりると、食卓の向こうで彼女の幽霊が微笑んでいる。食事の準備を待っているのだ。せめて一緒に歳をとるつもりはないのかという問いに、いつも不思議そうな顔を浮かべる」
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「亀頭にお迎え染みを見つけた時には、これは流石にもう駄目だと思ったものだが、まあどうとでもなるものだ。それよりは、味の変化の方が今は気になる。ちょこちょこ私に走り寄り、一口舐めて顔を顰める。盛大に尻尾を振ってもう一口舐め、顔を顰める。子供ができる気づかいはない」
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「七日目の夜、仕事を終えた神様は行きつけのバーへ立ち寄った。シングルかダブルかを問われ、つべこべいわずに俺がやめろというまで注げとぶっきら棒に返答した。そのままカウンターに突っ伏して、以来そのまま目を覚ますことなく、この星の海はウイスキーでできている」
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「考えても見て欲しい。よりによってマンドラゴラ畑ときている。畝に並んで植わっている。首吊り台の下に生えるとか、犬を使って引き抜くとかはあれは嘘だ。ただし叫ぶ。しかも歩く。勝手に自分で自分を引き抜いて金切り声を響かせる。あいつらを打ん殴って収穫するのが、僕の仕事だ」
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「マーク・カッツは数学者の仕事を三種類に分類したといわれている。i) 間違っている。ii) 自明である。iii) 私がやった。この見解に対する意見を書き記すには、この場所と私の頭はあまりに狭い」
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「時間発電というのは、御存じのように時間の流れで発電するという技術でありまして、正直なところ使いすぎです。最近の統計では時間の流れる速度が大変不安定になっていると言われております。つまり、今この瞬間にも時間が停止するのではないかと我々は危惧しておるわけでして──」
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「電話線が切れているが構わない。何も通じないことには慣れている。もううんざりなのだ沢山なのだ別れてくれと受話器へ向けて私は叫ぶ。いいわよ、と虚ろな声が背後で響き、ブレーカーを破壊し終えた彼女が包丁を片手に戻ってくる」
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「男が一人、密室状態で殺害される。部屋には誰も出入りができず、男は事故で死んだのではなく、自殺でもない。この難事件の真相は次のお話で明かされることが期待されるが、次のお話の方ではこのお話につき合うつもりが全くないのは遺憾なことだ」
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「男が一人、密室状態で死んでいる。密室はあまりに完璧なので、誰も彼が殺害されたことには気がつかず、密室の中身を推測することさえ叶わない。名探偵は一人で涙を流す自分を発見するが、理由については推測できない」
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「この程度の話を私なら、一つ書く間に二つは書けてしまいますなと彼は言う。造作ないことですと爪を磨く。当然その間に四つは書けますなと続ける。無論八つということになる。十六くらいはたやすいことです。言いつつ、爪を磨く速度が速くなる。彼がもう書きはじめているのではと不安になる」
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「男が切株を見つめている。兎が蹴つまづくのを待っているのだ。傍らを自転車に乗った女性が通り過ぎようとして、根を踏み転び、放り出される。打ち所はとても悪い。男は空転する車輪を見つめ続ける。回転はいつか停止する。錆がはしる。ここは浜辺だったのだと男は悟り、砂浜に身を横たえる」
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