茂木健一郎さん:第961回「英語ができることと、グローバルは違う」+第962回「国が、決めることじゃないから」+第966回「何を欲しているのか、自分との対話で知る」

 茂木健一郎さんのツイートはいつも興味深く拝読していますが、個人的に興味がある英語について、それが英語ができるとは何かについてなどですので、個人的にも後々読み返したこともあり、まとめてみます。  続く第962回も関連性が深いと感じたので、合わせてまとめにしてみました。  第966回は飢えと必要性の点が興味深かったので追加収録。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(4)しばらく前にも、大学入試にTOEFLを義務づけるという構想が報道された。しかし、それぞれの大学がどのような試験で英語力を見るかということは、本来各大学の自主性に任せられるべきことであって、国が号令をかけて「義務づける」ような性格のことではないと思う。

2013-06-06 07:57:14
茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(5)センター試験は5年後をめどに廃止するという日経報道。では、それまでの受験生はどうなるか? 本来、来年度の入試から、センター試験は使わない、という大学が出てもいいわけで、そのことで、初めて多様性が生じ、実質的な競争も始まるのではないか。

2013-06-06 07:58:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(6)先日ハワイ大学のカレッジの一つに行ったときに、日本からの留学生が、「英検の取得級でも願書を出せる」と言っていた。へえ、面白いな、と思ったが、本来、英語力を見る方法は多様であり、各大学が工夫して競えば良いだけの話である。一律にTOEFLを義務づけるのは競争原理が働かない。

2013-06-06 08:00:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(7)もともと、日本の教育には、競争原理が働きにくい。文科省が「検定教科書」や「教育指導要領」で標準化を図っている。それは一時期には一定の成果を上げたのかもしれないが、今の時代に必要なのは、多様性、自律性、そして競争であろう。そのスタートは、来年度からでもできる。

2013-06-06 08:01:35
茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(8)入試を多様にするということは、偏差値支配からの開放をも意味する。それぞれの入試の基準がばらばらになってしまったら、一律のスコア、一律の偏差値で大学を序列化することもできなくなってしまう。そこから、真の意味での競争が始まる。偏差値競争は、意味のないあだ花に過ぎぬ。

2013-06-06 08:02:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

くき(9)日経の、「センター試験廃止へ 文科省、複数回の新テスト検討」という見出しは、報道機関としては過不足のない表現だが、その背景にある「国が決める」というマインドセットこそが、問題の本質だと感じた。本当のニュースは深層に隠れており、私たちを不自由にしているものは別にある。

2013-06-06 08:05:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート962回「国が、決めることじゃないから」でした。

2013-06-06 08:05:33

字下げ等を入れつつ、一つにまとめてみます。

 日経が、大学入試センター試験を廃止して、複数回のテストの導入を検討していると報じた。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0505N_V00C13A6MM8000/?dg=1

 まず、現行の大学入試のあり方に問題があることを関係者が認識していること自体は、良いことだと考える。その上で、センター試験を廃止して、複数回のテスト(アメリカのSAT型、あるいは、イギリスのA levelやO level型?)を導入するだけでは、大学入試は根本的には変わらないと考える。依然として二次試験を課したり、複数校の併願ができない状態では、本質は変わらない。

 実は、大学入試に関する一連の報道には、前提になっているマインドセットがある。それは、国(文科省)が率先して、大学入試のあり方を一律に決めていくという発想。私は、日本の高等教育の改革のためには、このマインドセット自体を変えることが必要だと考えている。

 しばらく前にも、大学入試にTOEFLを義務づけるという構想が報道された。しかし、それぞれの大学がどのような試験で英語力を見るかということは、本来各大学の自主性に任せられるべきことであって、国が号令をかけて「義務づける」ような性格のことではないと思う。

 センター試験は5年後をめどに廃止するという日経報道。では、それまでの受験生はどうなるか? 本来、来年度の入試から、センター試験は使わない、という大学が出てもいいわけで、そのことで、初めて多様性が生じ、実質的な競争も始まるのではないか。

 先日ハワイ大学のカレッジの一つに行ったときに、日本からの留学生が、「英検の取得級でも願書を出せる」と言っていた。へえ、面白いな、と思ったが、本来、英語力を見る方法は多様であり、各大学が工夫して競えば良いだけの話である。一律にTOEFLを義務づけるのは競争原理が働かない。

 もともと、日本の教育には、競争原理が働きにくい。文科省が「検定教科書」や「教育指導要領」で標準化を図っている。それは一時期には一定の成果を上げたのかもしれないが、今の時代に必要なのは、多様性、自律性、そして競争であろう。そのスタートは、来年度からでもできる。

 入試を多様にするということは、偏差値支配からの開放をも意味する。それぞれの入試の基準がばらばらになってしまったら、一律のスコア、一律の偏差値で大学を序列化することもできなくなってしまう。そこから、真の意味での競争が始まる。偏差値競争は、意味のないあだ花に過ぎぬ。

 日経の、「センター試験廃止へ 文科省、複数回の新テスト検討」という見出しは、報道機関としては過不足のない表現だが、その背景にある「国が決める」というマインドセットこそが、問題の本質だと感じた。本当のニュースは深層に隠れており、私たちを不自由にしているものは別にある。

第966回「何を欲しているのか、自分との対話で知る」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート966回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日ふと思ったこと。

2013-06-10 07:33:06
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(1)ボストンから帰ってきて、ずっと忙しくて、なんだか消耗していた。それで、昨日、新潮社の池田雅延さんから、小林秀雄先生は落語の『火焔太鼓』が大好きで、特に亭主が大金をもらってきて、ほら、と見せるときのおかみさんの反応をおもしろがっていた、と聞いた時に、はっとなった。

2013-06-10 07:34:54
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(2)『火焔太鼓』のこの場面はおもしろくて、古道具やの亭主がまたおんぼろの太鼓を買ってきた、と不機嫌だったおかみさんが、思わぬ大金で売れたので、「あらおまえさん、さすがだねえ」みたいにころっと変わってよろこぶところが、なんともぽかぽかして、ほほえましい。

2013-06-10 07:36:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(3)それで、消耗して歩きながら、なんとはなしに、『火焔太鼓』のあの最後のクオリアが今のぼくには必要なんだなあ、と思った。それで、眠る前に、イギリスのコメディYes MinisterのA Question of Loyaltyの回を見た。最後にぽかぽかする場面がある。

2013-06-10 07:37:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(4)Jim Hackerが、官僚たちの抵抗を押し切って改革をすると宣言する。官僚たちは、もうこれでダメだ、辞任必至だ、などと脅かすが、首相から来た手紙は、今度の日曜Checkers(郊外にある首相専用の別荘)でランチをとろう、という意外なもの。Hackerほくほく。

2013-06-10 07:39:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(5)『火焔太鼓』の最後のおかみさんの反応と、A Question of Loyaltyの最後の場面は、緊張していたのが思わずうまくいって、ほくほくする、というクオリアが似ていて、ああ、ぼくは消耗する中で、そのような「心の栄養素」を欲していたんだなあ、と思った。

2013-06-10 07:41:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(6)Specific appetite, ないしはspecific hungerというのがあって、恒常性を保つために、ある特定の栄養素の入った食物を欲する。人間の場合実験的に確立しているのは塩分など一部だけのようだが、体感的には、もっと広い範囲に、成立しているように思う。

2013-06-10 07:43:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(7)例えば、何とはなしにカレーが食べたいと思う。あるいは、サラダが食べたいと思う。このような時には、(そのメカニズムはまだ明らかにされていないが)、その食物に含まれる栄養素に対するspecific hungerが成立しているように思われる。

2013-06-10 07:47:12
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(8)そして、食物だけでなく、精神の栄養についても、specific hungerはあるように思う。なんとはなしにベートーベンが聴きたくなる。漱石が読みたくなる。それは、心の恒常性を保とうという脳の働きであるように思う。そんな時の対象物は干天の慈雨となる。

2013-06-10 07:48:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

なじ(9)何を欲しているのか、自分との対話で知る。恒常性を維持するために、不可欠な心の働き。パーティーの喧噪から出て外の空気を吸いたいとか、もう飲み会はいいからホテルまで歩いて帰っちゃおうとか、そういうことを含めて、何を欲しているのか、自分との対話で知ることことが大切だ。

2013-06-10 07:50:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート966回「何を欲しているのか、自分との対話で知る」でした。

2013-06-10 07:50:41
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