オレの妹がカリフなわけがない！#22-23

カリフラノベ『オレカリ（略称）』 @caliphnovel

「オレの妹がカリフなわけがない！」 #２２

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藤田の顔から一瞬笑みが消えたが、すぐに百％作り笑いの凄惨な笑顔を浮かべ、藤田は黙って背を向けて付いて来い、というように歩き出した。 それにしても広い。部室に入ってから、オペラハウスのような大講堂の最上階の奥にしつらえた部長室に着くまでエレベーターで昇らないといけない。１

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生体認識のセキュリティーをクリアした藤田についてオレたちは部長室に入った。 「よく来たな、垂葉。ところで隣の女はなんでここにいるんだ？」 眉を顰めて藤田に一瞥をくれ、無碍が尋ねた。 「…」 「…」 オレと藤田に答える暇を与えず、メクが口を切った。２

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「あっ、お初にお目にかかります。私、越誉メク、と申します。何の因果かこの天馬と幼なじみだったばっかりに、コミ障のこいつの世話係のようなことをしております」３

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「 こいつが、あんな奴ら、いえ、こいつが言ったんですよ、あんな奴らの呼び出しに応ずるなんてもう真っ平だ、と言うのえ、演劇部部長さんのお誘いをシカトするなんて失礼だ、お話だけでも伺いなさいと諭したところ、私が付いて来てくれるなら行ってもいい、と言うので、私が連れてきたんです」４

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あっ、このやろう、オレを悪者にしてちゃっかり自分を売り込みやがった。 「お前が、垂葉の幼なじみ？ということは愛紗の幼なじみでもあると？」無碍が尋ねた。 「ええ、このコミ障兄妹は昔からずっと私が世話を焼いてきたんですよ」 「じゃあ愛紗のこともよく知っているのだな？」５

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「ええ、地味で目立たない娘ですけど、根は良い娘ですわ」 「いや、繰り半月の兜を被ってカリフを名乗る生徒会長って、全然地味じゃないし、グローバルに目立ちまくってるぞ！…いや、愛紗のことをよく知っているというのは好都合か…」 無碍が相好を崩す。 「メクさんもよくいらっしゃいました」６

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「垂葉、お前を今日呼んだのは、学園祭で我が演劇部が上演するアクション活劇《世界皇帝ムーゲの華麗な冒険》に出演してもらうためだ。メクさんにも是非加わって欲しい」 「はぁ？アクション活劇？！ 《世界皇帝ムーゲの華麗な冒険》？？！！ 話が全然見えないんですけど？！」 思わず言うオレ。７

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「世界を手中に収めるために日夜深謀遠慮をめぐらす無碍様の考え、お前如きに分かるはずがない」と藤田。 「お前、深謀遠慮をめぐらしてるの？！しかも日夜？！世界を手中に収めるために？！」と無碍に向かってオレ。 「ふん」 オレたちをせせら笑うように鼻を鳴らし、無碍は話し始めた。８

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「《世界皇帝ムーゲの冒険》は、石造財閥次期総裁のこの私が 生命情報操作技術革命で人類を救って世界皇帝ムーゲ一世に推戴されるまでの血湧き肉踊る波乱万丈の冒険を描く感動の対策で、石造財閥中核企業《リヴァイアサン》の動画部によって世界に配信されるのだ！」９

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「本来はこの《世界皇帝ムーゲの冒険》の第一幕は私が君府学院の生徒会長になるところから始まるところだったのだ。ところがあいつの思わぬパフォーマンスにしてやられて生徒会長の座を奪われてしまった。しかし想定外の出来事にも臨機応変に対応できるのが世界皇帝の器であるこの私だ♪」１０

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「カリフを名乗る妄想少女が、この私のカリスマに触れて狂気から目覚め、世界を救う私に仕える忠実な魔法戦闘美少女に生まれ変わり、私を支えて戦い、ご褒美に世界皇帝となった私の妻の座を射止める、という筋書きに脚本を書き換えたのだ」 「無碍様の妻ですって？！」 藤田が話の腰を折った。１１

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「あの生意気な妄想娘を妻に？！この私という者がありながら！！」 藤田が口を挟む。１２ （#２２ 終わり　#２３に続く ）

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「オレの妹がカリフなわけがない！」 #２３

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「子孫を残すことは 石造財閥総裁としての義務、妻はその道具に過ぎぬ。それに妻と言っても、世界皇帝となる私に相応しい正妻はヨーロッパの皇女ぐらいしかいない。あの女はまぁ、妾のようなもの」 「おお、結婚もしないうちに妾を作る！人を人とも思わぬ超高校級の鬼畜外道の発想！流石無碍様！」１

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得意気に言い放つ無碍を藤田が潤んだ目で見つめる。 「お、お前ら、人の大事な妹を勝手に妾にする気かぁー？！」 「ふん、何を逆上している？私たちは今、アクション活劇《世界皇帝ムーゲの冒険》の話をしているのだ」 「嘘だ、さっきからの思わせ振りな会話、どう考えても現実の話だろう？！」２

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「ええぃ、ウザイ！目的を忘れるな。お前の目的は何だ？時代錯誤のカリフの妄想に取り憑かれた哀れな妹の目を醒ますことだろうが。だから私がこの劇で、未来の世界を征するのは時代遅れのカリフ制でなどなく、新自由主義の合理的経 営を行うグローバル企業石造財閥であることを教えてやるのだ」３

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確かにオレも父さんと同じく、カリフなんてものは時代錯誤だし、ましてやJKがなるものではない、やめさせることこそが兄の務めだとは思っている。 でも無碍のヤツに、カリフは時代遅れだ、今は合理的な新自由主義の時代だ、と天馬家千年の使命を一言で切り捨てられるとなんだか悔しい。４

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「ともかく、お前は、《愚かな妹を妄想から救い出す兄》という、素晴らしい配役だ。これはブロンズクラスの落ちこぼれのお前がプラチナクラスの妹を見返してやる一生に一度のチャンスだぞ。 その代わり、お前はこの《世界皇帝ムーゲの華麗な冒険》の脚本作りに協力するのだ。」５

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「どうもカリフを名乗ったのはあいつの突然の思いつきではなく、天馬の家に伝わる昔話に基づいているらしいではないか。石造財閥の情報網はなんでもお見通しなのだよ。だからあいつを妄想から覚めさせ、この私にひれ伏させる為には、天馬の伝説を知るお前の協力が必要なわけだよ、垂葉君。」６

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「メクさんも、垂葉君の幼なじみとして協力してくれますね？」 無碍が猫なで声になる。 「もちろんです。なんでもいたします。えぇ、こいつは保護者として、私が責任をもって言うことをきかせますので、安心してお任せください」 オレは何か言おうとしたが、メグが一人で仕切ってしまった。６

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いつの間にかオレの世話係から保護者に昇格してるし。 「そうですか。それは助かります。垂葉君、君は良い幼なじみを持ちましたね。 話は纏まりました。君たちは今日から正式に君府学院演劇部員です。 では入部手続きなどについては、藤田、お前に任せるぞ」 「御意」７

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こうしてオレとメクは成り行きで演劇部員になり、《世界皇帝ムーゲの華麗な冒険》の脚本作りを手伝わされることになったわけだ。８ （#２３ 終わり　#２４に続く）