「夕焼け 土方歳三はゆく(シナリオ版)」第一章「祇園会の夜」
千代「まだ、早いよ」 歳三「そんなことないだろう。江戸ならともかく、この辺の村じゃあどこでも、お前くらいの齢の娘なら、もう大方、嫁入先が決まってるぞ。より好みなんかしてやがると、売れ残っちまうぞ」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:11:01千代「いいもん、お嫁になんか行かなくても・・・」 歳三「困った奴だな」 歳三、ホッとしたように微笑む。 千代、いたずらっぽく微笑み、 千代「私のことより、お兄ちゃん、もう二十五だよ。自分のお嫁さんの心配でもしなよ」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:12:38歳三、怒ったように 歳三「何を言いやがる。俺のことはいい。俺には大望がある」 歳三、胸を張る。 千代、微笑む。真顔に戻り、小声で、 きっぱりと言う。 千代「千代にも大望がある」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:14:30歳三「えっ」 千代「大望とは言えないかもしれないけどやりたいことがあるの」 歳三「やりたいこと?」 千代「うん、学問。窮理学っていう学問がしてみたいの」 歳三「窮理学?」 歳三、驚いて呆然となる。 やがて、フフフと笑い、 #試衛館の青春
2013-07-09 18:16:38歳三「何を言い出すのかと思ったら・・・千代、お前は女なんだぞ」 千代、少しムッとするが、直ぐに、いたずらっぽい表情になって、 #試衛館の青春
2013-07-09 18:18:38千代「だからどうだって言うのよ。女が学問して何処が悪いの。もし、それが、だいそれた事だって言うなら、百姓が武士になろうというのは、もっと、だいそれたことじゃないのかな」 千代、ちょっと意地悪く微笑む。 歳三、不機嫌に黙る。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:20:09⑪ 土方家・一室(五年前) 千代が為次郎と向い合せに座っている 二人の横に喜六とナカが座っている 千代「どうしてもダメ?」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:24:36為次郎「当たり前だ、長崎へなんて・・・窮理学?なんだそれ?」 喜六「全く、道庵先生も無責任な・・・」 千代、肩を落とし、部屋を出る。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:25:51⑫ ⑪の前の廊下(五年前) 千代、部屋から出て、ふと顔を上げる 歳三が粕谷大作と話している 大作、千代に微笑みかけ 大作「どうだ、千代、俺んとこへ来て、手伝ってみないか」 千代、力なく微笑んで、頷く。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:27:22⑬大作に付いて医学修行 ・千代、廊下の拭き掃除をしている。 ・千代、庭の薬草の手入れをしている。 ・庭、歳三が竹刀を二本持って入って来て、出迎えた千代の足元へ、一本を放って寄越す。 千代、拾って構える。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:32:23千代、打ち込んで行くが、難なくかわされ、したたかに打ち据えられる。 ・千代、本を見ながら、薬草を摘む。 ・千代、大作の指導の下、薬箪笥の整理をしている。 ・千代、薬研を使っている。 ・千代、部屋で、医学書を読んでいる。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:34:21・大作、部屋で本を読んでいる。 庭から、歳三が千代に稽古をつけている音が聞こえている。 千代が打たれて倒れる音。 歳三の怒鳴り声。 大作、顔を上げ、庭の方を見やり、首を横に振り、微笑んで呟く。 大作「今日は、俺は叱れないな」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:35:45・千代、大作が患者のケガを縫っている横で介助している。 大作、縫い終わり、千代と代る。 千代、後の処置をする。 ・庭、歳三と千代竹刀を持って対峙。 千代、一本取る。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:37:27歳三「あっ」 千代、嬉しそうに微笑む。 歳三、満足そうに微笑む。 歳三「まぐれだけどな」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:38:27・千代、患者を診察している。 大作、後ろで満足そうに微笑む。 ・千代、部屋で和算の問題を解いている なかなか解けない。 ひらめいて、筆を走らす。 解き終わり、満足そうに微笑む。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:39:43⑭ 粕谷大作宅・庭(三年前) 歳三と千代が竹刀を合わせている。 鍔迫り合いから、千代、歳三に竹刀を打ち落とされる。 歳三「よし、今日はこれくらいにしよう」 千代「有難うございました」 千代、ペコリと頭を下げる。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:41:52二人、並んで井戸端に歩いて行く。 歳三「まだ、窮理学がしたいか?」 千代「えっ」 歳三「長崎へ行きたいかって訊いている」 千代、大きく頷く。 歳三「行って来い」 千代「えっ」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:43:21歳三「その腕なら大丈夫だ。自分の身は、自分で守れる」 千代「お兄ちゃん・・・」 千代、歳三を見つめる。 歳三、微笑んで頷く。 千代、真顔で頷き返す。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:44:41⑮ 長崎・窮理学塾 授業風景 男の塾生達の中で、千代が、真剣な表情で講義を聞いている。 ⑯ 長崎・病院 ・千代が女の子を診察している。 ・千代が怪我をした男の子の傷を縫っている。 ・千代、先輩医師の手術をメモを取りながら見学している。 #試衛館の青春
2013-07-10 18:49:27⑰ 長崎・満開の桜の木の下 千代、一人、手紙を読んでいる。 読みながら、微笑みがこぼれる。 読み終えてたたむ。差出人「歳三」の文字が見える。 千代の後ろを、二人の男が、桜を見ながらゆっくりと通りかかる。 #試衛館の青春
2013-07-10 18:50:56、 男A「京はどうなっとっとですか」 男B「なんか物騒になって来てます。日本中から食い詰め浪人が集って・・・。安心して町歩けまへんわ」 男A「お上は、何もせんとですか」 #試衛館の青春
2013-07-10 18:53:40男B「京都守護職様お預りの新選組というのが取り締ってはおるんやけど、わたしら京のもんに言わしたら、不逞浪士といったいどこが違うんやいうことですわ」 男A「そんな、気の毒な・・・」 #試衛館の青春
2013-07-10 18:55:17男B「いや、ほんま。不逞浪士とみたら、手当り次第斬りまくって、それで足りんと、仲間内でも殺し合いや」 男A「仲間内でも?」 男B「局中法度たらいう、きつい規則があって、ちょっとでも違反したら、切腹やいうんやから・・・」 #試衛館の青春
2013-07-10 18:56:55男A「それは、身内に厳しかいうこって、良い事じゃなかですか」 男B「まあ、そういう見方もおますかいなあ。ほんでも、度越しとりまっせ。 #試衛館の青春
2013-07-10 18:59:22中でも、副長の土方ちゅう男、血ィも涙もない冷酷な男で、この男に嫌われたら最後、なんのかんの理由つけて殺されるそうでっせ。敵に対しても、勿論容赦ない。新選組の鬼の副長いうて、敵味方から恐れられてますわ」 男A「ほう」 男達、通りすぎる。 #試衛館の青春
2013-07-10 19:01:17