「夕焼け 土方歳三はゆく(シナリオ版)」第一章「祇園会の夜」
お待たせしました! 「夕焼け・土方歳三はゆく」【シナリオ版】 第一章「祇園会の夜」第1回 ゆるゆると始めて行きたいと思います。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:02:01① 京三条小橋・旅篭二階の一室 千代、開け放たれた窓際に立ち、下の通りを見る。 ② 旅篭の前の通り 祇園祭宵山の雑踏 ③ ①の部屋 千代、目を西の空に移す。 美しい夕焼け。 千代、溜息をつき、微笑んで呟く。 千代「お兄ちゃん・・・」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:04:43④ 武州多摩郡・石田村に向う道(回想) 歳三、石田散薬の箱を担ぎ、幼い千代の手を引いて歩いて来る。 千代、西の空を見て、立ち止まる。 歳三「うん?どうした」 千代「きれい」 歳三、千代の視線を追い、西の空を見上げる。 美しい夕焼け。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:07:48歳三「ほんと、きれいだ」 二人、暫く、夕焼けを見つめる。 歳三「夕焼けって、なんでこんなに綺麗なんだと思う?」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:10:17千代、一瞬キョトンとする。が、直ぐにニッコリと微笑み、 千代「千代にはよくわからないけど『沈んでいく太陽が最後の力をふりしぼって輝いてるからだ』って、いつか、お信おばさんが言ってた」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:11:48歳三「俺もそう思う。でも、それだけだったら、もっと淋しいもんだろう。でも実際はそんなに淋しいとは感じない。それはなぜか。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:14:21俺はこう思うんだ。なるほど、太陽は沈んでいく。でも、明日の朝になれば、また昇る。それを、見ている俺達も、おそらく、太陽自身も信じて疑わないからだ」 歳三、自分の言葉に酔った様子。 千代、歳三を不思議そうに見つめる。 千代「帰ろう。お腹空いた」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:16:03⑤ 千代のおいたち ・歳三の次兄喜六と妻ナカが、赤ん坊の千代を抱いて帰ってくる。 ナカ「叔母様、こんな可愛い子を残して、 さぞ、お心残りだったでしょうね」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:18:03喜六「ああ、母上の時を思い出すよ。もう 十年以上も前になるが・・・。歳三の事ばかり気にしていた」 盲目の長兄為次郎と十二才の歳三が、出迎える。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:19:51・歳三が千代をあやしている。 ・歳三が千代のおむつを替えている。 ・ヨチヨチ歩きの千代が、石田散薬の箱を背負って歩く歳三の後を追う。 ・夕方、歳三が、石田散薬の箱を手で持ち、眠った千代を背負い歩いて来る。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:21:58・奉公に出る十七才の歳三。 六才の千代が寂しそうに見ている。 ・歳三が座敷で喜六に叱られている。 廊下から、千代が心配そうに見つめている。が、少し、嬉しそう。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:23:34・歳三、日野宿名主佐藤彦五郎宅の道場で、剣術の稽古をしている。 千代、道場の傍で、一人遊んでいる。 歳三、道場から出てくる。 石田散薬の箱を背負い、竹刀を持って門を出ようとする。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:26:24千代、歳三の傍に来る。 歳三、諦めたように嘆息をつき、歩き始める。 ・歳三、他の道場に入って行く。 千代、道場の傍で待っている。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:28:14・千代、棒切れを拾ってきて、歳三相手に構える 歳三、仕方ないなあという感じで、適当に相手をしてやる 歳三の竹刀が、誤って、千代に当たる 歳三、慌てて、千代の傍に駆け寄る 大丈夫だと解ると、怒ったように 歳三「あれくらい、受けとめんか」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:30:10⑥ ①の部屋 千代、窓際に立ち、西の空を見つめている。 西の空、段々濃くなる夕焼け。 千代、微笑む。 ⑦ ②の通り 祇園祭宵山の雑踏。 人混みに紛れ、浪人風の武士が、一人 また一人と、筋向いの旅篭「池田屋」に入って行く。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:32:07⑧ 石田村・橘道庵の塾(五年前) 数人の子供が、読み書きを習っている十四才になった千代が、関流の算学の本を横に置いて、問題を解いている。 道庵が傍に来る。 道庵「どうだ?」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:33:41千代「もうちょっと、もうちょっとで解け そうなんです」 道庵「千代は本当に算学がすきだね」 千代「うん、だって面白いもん」 道庵「窮理学って聞いたことあるか?」 千代「窮理学?いいえ」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:35:29千代「はい。前に一度、地球儀という物を見たことが・・・。でも、そんなの、信じられない」 道庵「その地球が、一日一回、コマみたいに自分で回りながら、一年かかって、太陽の周りを廻っている」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:37:14千代「月は?」 道庵「月は、地球の周りを廻ってるんだ。一月かけてね」 千代「ふーん」 道庵、鉄瓶から出ている湯気を指して 道庵「見てごらん、この湯気の力で、黒船は動いているんだ」 千代「湯気で・・・?」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:39:32道庵「そうだよ。窮理学では、黒船を動かすのに、どれだけ湯を沸かさなきゃならないか、計算できるんだ」 千代「へぇー」 道庵「それだけじゃあないぞ。大砲の角度と火薬の量で、弾丸の飛ぶ距離も計算できる」 #試衛館の青春
2013-07-08 18:41:43千代「面白そう・・・」 道庵「どうだ、やってみたいか」 千代「うん」 千代、勢いよく頷く。 #試衛館の青春
2013-07-08 18:42:57⑨ 土方家・裏庭(五年前) 歳三が濡れ縁に腰掛けている。 千代、帰ってくる。歳三に気付き、 千代「あっ、お兄ちゃん、来てたの?」 家の中から為次郎の不機嫌な声 #試衛館の青春
2013-07-09 18:04:34為次郎「『来てたの』じゃない『帰ってたの』だろう。全く。歳三、お前、この頃、何処で何をしている?」 歳三、千代に肩をすくめて見せる。 千代、微笑む。 #試衛館の青春
2013-07-09 18:06:19歳三、立って、千代に近づき、壁際に 立て掛けてある竹刀を指して 歳三「やるか」 千代「うん」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:07:59⑩ 井戸端 千代が汗を流している。 後ろから歳三が来る。 歳三「ずいぶん腕を上げたな」 千代、振り帰り、嬉しそうに微笑む。 歳三、つり込まれるように微笑む。 歳三「縁談があるんだって?」 千代「うん」 #試衛館の青春
2013-07-09 18:09:35