神サバ小話４

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「突然押しかけまして、申し訳ありません」ジブリエルはニコリともせずに言った。全身からピリピリしたオーラが出てて、ぜんぜん申し訳なさそうじゃない。「え、なぁに？俺ちゃん、なんかしたかなぁ？」神もマジでビビってた。「いいえ、なさらなかった事が問題なんです」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 俺にはチンプンカンプンだったから、黙って見てる事にした。「この者に新たな仕事を与えるために、適性を確認しました。しかし…」ジブリエルに突然腕を掴まれて、俺はズッコケた。「教えてください。この者の”利き手”はどちらですか？どのような能力がありますか？」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 神は俺の両手を見て、ペロッと舌を出した。「てへぺろ！」「てへぺろで済む話ではありません。あなたから与えられた力によって、天使は生き方を左右されるのです。おわかりですか？」ジブリエルの口調は丁寧だったけど、明らかに怒ってた。そういや、俺は何ができるんだ？ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ボクだってさぁ、完全じゃないんだよねぇ。忘れちゃう事だってあるよぉ！」神は頬をぷうっと膨らませた。「ふざけるな！」ジブリエルは怒鳴った。それから、俺の方を見て微笑んだ。「ユリエル、あなたも怒っていいんですよ。創造主には、創り出したものへの責任がある」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl …つまり、アレか？俺には力がないって事か？神が創る時に忘れたから？ひでぇ話だな！けど、怒る気になれなかった。俺は失敗したけど、力がなくても今までやってこられた。ぶっちゃけ、どうでもいい。「ユリエル、ごめんねぇ」神は椅子から降りて、俺の前まで歩いてきた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「お詫びと言っちゃナンだけどさぁ、なんでも好きな力をあげるよ！どんなのがいい？」神はチラッとジブリエルを見た。「ねぇ、これでいいかなぁ？」「良くはありませんが、他に手立てはないでしょう」腕組みしたジブリエルに見下ろされて、神は肩を竦めた。「ですよねぇ」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 力なんていらない…俺はそう言おうと思った。俺は神の期待に応えられなかったクズだ。ダチだって少ない。今さら天界に戻って、何ができるっていうんだ？けど、ふと頭の中にラフィエルのおっさんの言葉が響いた。「楽園に収まり切らなくなった子達だ。地上に行くんだよ」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「俺…地上に行きたい」「え、地上ぉ？」「うん、地上に…」神はキョトンとしていた。ジブリエルは右手をかざして、出てきた書類をパラパラとめくりながら頷いた。「よろしいのでは？残念ながら、今の天界にはこの者に就かせる仕事がありません。しかし、地上でしたら…」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ジブリエルはフッと笑った。「地上でしたら、楽園での不始末をあなた自身の手で贖う事ができるかもしれない。楽園を後にした者達の行く末を、見届ける覚悟はおありですか？」俺が頷くと、神は俺の腹に両手を当てた。「じゃっ、力を与えるよぉ！うまく使いこなしてねっ！」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl で、俺は力と３人目のダチを手に入れた。ジブリエルに言ったら、否定されたけどな！そういや、神はまた失敗した。俺には"利き手"がない。だから、目を閉じて右足をタンと踏み鳴らす。目を開けると、青い空が広がっていた。俺は地上の空気を思いっきり吸い込んだ。（終） #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 僕は時々眠ってしまう。きっと、混沌に身を浸している間に、眠り癖がついてしまったのかもしれない。目を開くと、すぐ側にミシェルの寝顔があった。僕らが生まれた時みたいに。あの時と違うのは、僕の左側で眠るミシェル。ミシェルと繋いでいる手。そして、僕の心だ。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ミシェルの金色の髪は美しい。何よりも。昔は見ているだけであんなに心が騒いだのに、今は安らぎを感じる。白い頬にかかった髪をそっと払う。ピクッとミシェルが身じろぎする。ああ、僕に合わせて寝たふりをしていたんだ。僕はミシェルの耳元で囁く。「ミシェル、起きて」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 瞼を開き、赤い瞳が僕を見る。「ごめんね、ミシェル」「怖かった」「僕はちゃんと目覚める。君を一人にはしない」「信じていた、でも…」昔の君なら、感情を言葉にはしなかっただろう。そして、僕も昔なら言わなかった事を言う。「側にいる。君が僕の手を離さなければね」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 僕の手を離さなければ…か。嘘つき！ミシェルに愛想を尽かされたら、僕はミシェルの足元に縋って、涙ながらに懇願するだろう。君の側にいさせて…と。僕の心は脆い。君がいてくれなければ、僕の心は傷だらけになって腐ってしまう。僕はミシェルの右手を優しく握り締めた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ルキフェルが眠ってしまった。私に身体を預けて。抱き上げて、身体を横たわらせた。目は固く閉じられ、何も見ていない。口は閉ざされ、何も語らない。右手に触れる。温かい。左手に触れる。柔らかい。この手は多くのものを創ってきた。その創造物はどれも美しかった。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl しかし、最も美しいのは…愛おしい姿が涙で歪んで見えた。私は叫びたくなった。私を見て！私に語りかけて！私に触れて！…そう、そなたは当たり前のように私に与えてくれた。失われた時、私はその尊さに初めて気がついた。私はルキフェルの横に身体を横たえ、目を閉じた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 頬がくすぐったい。声が聞こえる。「ミシェル、起きて」目を開くと、ルキフェルが私を見ていた。「ごめんね、ミシェル」「怖かった」「僕はちゃんと目覚める。君を一人にはしない」「信じていた、でも…」 気が狂いそうだった。「側にいる。君が僕の手を離さなければね」 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「離さない。二度と」そなたは、何もできない私を必要としてくれた。惨めな私を救ってくれた。私には与えられるものが何もない。求める権利などないのかもしれない。けれど…。私はルキフェルの左手を強く握り返した。「だから、私を置いて行かないでくれ」(終) #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢これが『暑い』という感覚ですか？なんて、無駄な…！｣冷房が効かないアパートの一室で、長身の男がダラリとソファーに身を横たえていた。額には汗がにじみ、銀縁の眼鏡は熱気でくもり、洒落た柄のネクタイは緩められ、ワイシャツの襟元はボタン二つ分開かれていた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢しゃーねぇだろ！人間の体はよぉ、感覚がねぇと、うっかり死んじまうくらいに弱いんだから｣大きな目をした少年が、男を雑誌で扇いでやっている。｢口はいいから、もっと手を動かしなさい。それから、貴公も…悪ふざけは大概になさい。さもなくば、それなりの制裁を…｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢ふぅん、制裁ねぇ？そいつは結構！コケッコー！｣男の胸の上で寛いでいた猫のぬいぐるみは、のそのそと男の顔の横に移動してフワリと丸まった。｢おっさん、やめてやれよ。ジブリエルがマジ死にそうなんだけど｣｢どうしよっかなぁ｣ぬいぐるみは男の頬を突きはじめた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢おやめなさい…｣男が首を振ると、猫のぬいぐるみものそのそと移動する。｢マジやめろよ！あとで殺されるぞ！｣少年は猫のぬいぐるみを抱き抱えて、男の顔から引きはがした。ぬいぐるみは舌打ちしてから、ニヤリと笑った。｢ジブリエル、イイこと教えてあげよっか？｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢くだらない話だったら、承知しませんよ？｣｢ううん、超役立つ話！男性よりもさ、女性の体の方が暑さに強いんだよ｣｢ご冗談を…｣少年はぐんと体を伸ばして、右腕を上げた。｢はいっ！はいっ！俺も知ってる！知ってるぅ！女は筋肉が少ないからだよな？｣｢大正解！｣ #神サバ小話