夕焼け・土方歳三はゆく【シナリオ版】第三章「油の小路の恋哀し」
○ 壬生旧屯所門前 夕暮れ。雨が降り始める。 千代が一人雨の中に佇んでいる。 子犬が一匹ヨチヨチと歩いてきて、千代の足元に纏わりつく。 #試衛館の青春
2013-08-01 18:57:06千代、暫く子犬を見詰めて、そして、抱き上げる。 千代、子犬をおろし、 千代「早くお家にお帰り。・・・心配してるから」 #試衛館の青春
2013-08-01 18:58:00○ 七条油小路(1) 伊東の死体を前に、歳三、永倉、原田の三人が抜刀で立っている。 歳三、大きく息を吐き、刀を鞘に収める。永倉、原田も、それぞれ刀を鞘に収める。 #試衛館の青春
2013-08-01 18:59:37三人、近くの物陰に、別々に隠れる。 歳三の前、少し離れたところに、千代の背中が見える。 歳三、その背中をじっと見詰める。 #試衛館の青春
2013-08-01 19:00:45○ 七条油小路(2) 駆けて来る複数の足音。だんだん大きくなり、そして、止まる。 隠れていた新選組隊士が一斉に飛び出す。御陵衛士七名。その周りを十六名の新選組隊士が取り囲む。 刀の鞘を走る音。斬り合いが始まる。 #試衛館の青春
2013-08-01 19:02:38歳三、叫び声を聞く。 衛士「この裏切り者!」 歳三、声の方を見る。 斎藤、一刀のもとに声の主を斬る。 そのまま倒れた相を見下ろして立っている。 歳三、斎藤に近づく。 #試衛館の青春
2013-08-01 19:03:49歳三「斎藤・・・」 斎藤、顔を上げ、歳三を見て、微笑んで、軽く首を横に振る。真顔に戻り、 斉藤「それより千代ちゃんは」 歳三、目である方向を示す。 その先に、戦いの輪の外に身を置く、千代が見える。 #試衛館の青春
2013-08-01 19:05:02斎藤「精一杯の抵抗ですね」 歳三「懲罰もんだ」 斎藤「土方さん・・・」 歳三「冗談だ・・・あれでいい」 #試衛館の青春
2013-08-01 19:05:49○ 七条油小路(3) 千代、人を避けながら移動している。 千代の視線の先には、藤堂が居る。 藤堂、新選組隊士と対峙。隊士、刀をおろして立ち去る。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:04:12また、別の隊士と対峙。隊士、前の隊士と同様、立ち去る。 藤堂、永倉を相手に刀を構える。 永倉、立ち去ろうとする。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:05:29藤堂「永倉さん、お気持ちは嬉しいが」 永倉「お前の生命を惜しんでのことじゃない。これ以上、千代ちゃんに辛い目をみせるな」 永倉、小声で鋭く言って立ち去る。 藤堂、呆然と見送る。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:06:44○ 七条油小路(4) 藤堂、歳三を見つけ、刀を構える。 千代、緊張し、凝視する。 歳三、立ち去る。 千代、ホッとして、藤堂から目を離す 千代、藤堂を見失う。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:08:06○ 七条油小路(5) 藤堂、戦う相手を求め、歩き回る。 藤堂、千代を見つける。千代の背中を暫く見詰めている。やがて、意を決したかの如く、隙だらけで、千代の背中に斬りつける。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:10:41原田が少し離れたところで、ふと千代の方を見る。そして、その瞬間を目撃する。 原田「あっ!バカ!平助!何をする!」 原田が叫ぶ。 千代、藤堂の剣を躱し、振り向きざま胴を払い、左肩から右脇腹まで袈裟懸けに斬り下す。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:12:31藤堂、倒れる。 千代、呆然と立ちつくす。 全員、呆然と立ちつくす。 やがて、歳三がゆっくりと千代に近づいて行く。 歳三「千代・・・」 #試衛館の青春
2013-08-02 18:13:41千代の手から刀が落ちる。 千代の身体がグラッとゆれる。 歳三が駆け寄って、抱きとめる。 千代、歳三の腕の中で気を失う。 御陵衛士四名、逃走。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:15:34新選組隊士達、藤堂に駆け寄る。 永倉、藤堂を抱き起こし、 永倉「なぜだ、平助、なんでこんな事を」 原田、沖田、藤堂に縋りつくように、 原田「バカヤロウ!最悪じゃないか」 沖田「酷いよ、平助さん。酷すぎる」 #試衛館の青春
2013-08-02 18:17:14斉藤、立ったまま 斎藤「あの時、俺がお前を斬れば良かった・・・そうなのか、平助」 #試衛館の青春
2013-08-02 18:18:13○ 不動堂村屯所、千代の部屋 失神した千代が寝かされている。 近藤、井上、沖田、永倉、原田、斎藤が、心配そうに千代の顔を覗きこんでいる。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:19:40沖田、歳三の居ないことに気づく。 沖田「土方さんは?」 皆、歳三の居ないことに初めて気づく 近藤「見てくる」 近藤が席を立ち、部屋を出る。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:20:31千代、気がつく。 何かを探すように部屋を見まわす。 井上、優しく微笑み、 井上「千代ちゃん」 #試衛館の青春
2013-08-02 18:21:37千代「源さんおじさん。私、どうしたの?・・・今、夢見てた、怖い夢。斎藤さんが帰って来て、伊藤さん達が近藤さんを暗殺しようとしてるって。それで・・・」 千代、斎藤を見つける。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:23:11千代「あっ、斎藤さん・・・。それは夢じゃなかったのか。じゃあ、どこからが・・・」 斎藤、部屋を飛び出す。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:24:31千代「斎藤さん・・・、まさか、全部、夢じゃなかった・・・?」 沖田、井上、永倉、原田、涙を浮かべ千代を見つめる。 千代「私・・・平助さんを・・・斬っちゃった・・・平助さん・・・殺した?」 #試衛館の青春
2013-08-02 18:25:53沖田「千代ちゃん・・・」 千代「いやぁー」 千代、号泣する。 沖田、永倉、原田、懸命に嗚咽を堪える。 井上、泣きながら千代の身体を抱く。 #試衛館の青春
2013-08-02 18:27:28