茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1004回「不適応、いいじゃん!」

脳科学者・茂木健一郎さんの8月9日の連続ツイート。 本日は、今日、走りながら考えていたことです。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1004回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、今日、走りながら考えていたことです。ところで、連続ツイートは、10日、11日と「プチ夏休み」をいただくので、次回は12日です!

2013-08-09 08:37:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(1)人間の認知に関する科学的説明というものは、散文的である。それはどういう意味かというと、大筋においては正しいのだけれども、そこからの私的な跳躍、はみ出しはないということだ。それで、人間の認知の進化を促したのは「適応」への淘汰圧であるという説明も、散文的。

2013-08-09 08:38:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(2)知性が進化してきたのはなぜか、という問いに対する科学の答えは、「環境への適応」ということになるだろう。ここに言う環境とは、「自然環境」も含まれるし、人間がつくる社会も含まれる。知性が高いほど、環境にも適応できる、という話に、大筋ではなる。

2013-08-09 08:40:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(3)環境に適応できる人は、それだけ多くの生きるリソースを自分に集めることができるし、繁殖のためのよい伴侶も得ることができ、結果として子孫も残すことができる。大筋で言えばこのようなストーリーが生物学の基本原則だけれども、正直言って、どこかつまらないよね。

2013-08-09 08:41:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(4)最近流行りの「新自由主義」的な考え方も同様。市場で、みんなが知恵を尽くして競い合う。その中で、すぐれた商品やサービス、ビジネス・モデルを提出した人が「勝者」となり、経済的な見返りを得る。敗者、弱者は適応できなかったのだから、ある程度の不利益は仕方がない。そんな考え方。

2013-08-09 08:43:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(5)進化論の「適者生存」も、新自由主義における市場における競争でも、やっかいなのは、それが大筋において「正しい」ということ。しかし、それは例外が存在しないということを意味するのでもないし、不適応の人が価値がない、ということでもない。そこを勘違いしてはいけない。

2013-08-09 08:44:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(6)ぼくがこの問題を深刻に考えるきっかけは、最近、私の知る極めて賢い人のことを考えていた時のことだった。その人は、どうも社会に不適応だ。なんだ、本当に賢いと、不適応になるんじゃん、と思った。ここで言う賢さには、誠実さや、深さや、かけがえのない個性を含む。

2013-08-09 08:45:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(7)小学校や中学校の時に学校に通えなくなったり、会社で回りとうまくいかなかったり、そもそも仕事してなかったり、彼女いなかったり、彼氏いなかったり、不適応な人の中には、とても面白い何かが潜んでいる。一方、適応している人の中には、小賢しさを感じることもある。

2013-08-09 08:46:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(8)ぼく自身も複雑な事例。ある意味では世間に適応していると言えるのだろうけど、一方で、肝心な部分で不適応だったりする。そして、自身をふり返って改めて思うことは、適応しているところもいいけれども、不適応な部分の中に、自分にとって大切なことが含まれているということだ。

2013-08-09 08:47:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

ふい(9)適応することや、市場における競争を否定しているわけではない。それは実際的には大切なことだし、そのための努力は尊い。一方、適応できたからといって天狗になっちゃいけないし、不適応もそれはそれで素晴らしい。このツイートは、不適応な人、あなたの中の不適応へのエールです。

2013-08-09 08:49:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1004回「不適応、いいじゃん!」でした。

2013-08-09 08:50:08