島耕作というメロドラマ(専務 島耕作)

漫画の「専務 島耕作」を見ました。専務編だけで島耕作の感想を述べるのは不適切だと思いますが,凄く面白くて酷かったので感想を述べさせてください。
3

専務 島耕作のネタばれ注意

kikanet@森 @kikanet1

漫画の「専務 島耕作」を見ました。結論を言うと「面白かった」が「ひどかった」。面白かった理由が完全なファンタジーのメロドラマであった点。ひどかった理由は中身が無い事。 #島耕作

2013-08-25 21:31:04
kikanet@森 @kikanet1

専務編だけを見て感想を語るのはあまり良く無い事は分かっているが,凄く面白かったのでツイート。島耕作についてはあらすじを調べた事があるが「下品で気持ち悪い」という印象だった。でも,実際読んでみると明確な目標が見えた。

2013-08-25 21:43:14
kikanet@森 @kikanet1

「超絶ラッキーな男のメロドラマ(衝撃な展開の連続)」なんですよね。そのためにいろいろな要素(リアルさ,葛藤=ストーリーの停滞)などを省略する。

2013-08-25 21:49:35
kikanet@森 @kikanet1

第一巻で隠し子が事故で死亡する。登場人物の死には意味があるものと意味のないものが存在する。例えば,前者は家族を殺された恨みから息子が復讐をする物語などであり,後者は役割を失った登場人物が用済みに合う物語など(ハッキングの勝利と同時にハッカーが殺されるなど)である。

2013-08-25 22:16:59
kikanet@森 @kikanet1

隠し子の死は明らかに用済みの処理である。死ぬ理由もなく,死んでから主人公が新しい決意をすることは無い。それどころか,隠し子の死の直前の台詞に「Thank You」と言わせて,耕作の免罪符としている。これはひどい。 #島耕作

2013-08-25 22:25:38
kikanet@森 @kikanet1

当然,娘の死の直後は落ち込んだ描写が見受けられるが,その後に耕作は赦されたと自己肯定して元気になる。そして,専務編では二度とその娘のことは思い出さない。「テロの跡地のフリーダムタワー」の話があった時も飛行機で死亡した娘を思い出さない。 #島耕作

2013-08-25 22:32:03
kikanet@森 @kikanet1

インドでも観光地を中心とした安易な文化説明に終始している。深い考察や鋭い視点が無い。インド人の日常を見るのではなく,インド人の非日常である観光をした気分しか残らない。ガンジス河の沐浴が日常とは思えない。川に落ちたコインを回収する少年の話ぐらいしか日常っぽくない。 #島耕作

2013-08-25 22:42:49
kikanet@森 @kikanet1

「外国について勉強中」と言う電機メーカーの女性取締役が外務大臣に就任。ストーリとしてもひどい。川口順子氏をモデルにしているようだが,外務大臣という主要閣僚は政治経験,大臣経験が必要。国民に納得してもらうにはサプライズで許されるレベルでない。 #島耕作

2013-08-25 22:52:52
kikanet@森 @kikanet1

で,(高速増殖炉は将来に有望な分野!)といってみたりする。で,五洋電機との合併では,(有機ELはすごい。五洋電機にはもっと価値がある)と言って価格を吊り上げる。 #島耕作

2013-08-27 20:55:03
kikanet@森 @kikanet1

高速増殖炉は動かず,五洋電機はそんな価値が無かった。漫画なのは重々承知で言うが,耕作はこの責任を取ったのかと訊きたい。ストーリー上の降格とかでなく,作品上の責任である。言い換えるなら完全無欠の島耕作像の崩壊でもある。 #島耕作

2013-08-27 20:59:36
kikanet@森 @kikanet1

ここらが重要なのであるが,島耕作は実はリアルな作品ではない。経済の勉強になるとか,サラリーマンの処世術を学べるとか聞くが,(自分が読んだ「専務島耕作」において)そんなものはない。ウィキペディア以下の知識しか得られない。 繰り返すが,島耕作はファンタジーなのである。 #島耕作

2013-08-27 21:03:46
kikanet@森 @kikanet1

そう考えると,かなり恣意的に島耕作の前には作者の弘兼憲史氏のバリアが存在する。島耕作が犯した罪をあたかも外部のせいにしたり,島耕作に対する攻撃をブーメラン的に跳ね返したり。恣意的な偶然を作ったり。その力は凄いものがある。 #島耕作

2013-08-27 21:09:40
kikanet@森 @kikanet1

恐ろしいのはその上でリアルなものであると錯覚してしまう事でもある。ふと,島耕作のようになりたいと思ってしまう事もある(不倫とかじゃなく生き様として)。しかし,同じ生き方をすると破綻する。なぜなら,作者による不幸のバリア(主人公補正)が存在しないから。 #島耕作

2013-08-27 21:15:21
kikanet@森 @kikanet1

やっぱり,この漫画はジェットコースター的な非日常を消費するためのものでしかなく,サラリーマンのドラゴンボールみたいなものである。誰もサイヤ人(孫悟空)になれないし,なろうとしてはいけない。島耕作も同じく。 #島耕作

2013-08-27 21:19:01
kikanet@森 @kikanet1

その上で,島耕作にあこがれる人たちの一部はかなり不幸なんじゃないのだろうか。結局,島耕作は無条件に成功して,読者は成功者と敗北者に分かれる。結構これはひどい話でもある。 #島耕作

2013-08-27 21:27:32
kikanet@森 @kikanet1

作者もことについて完全に自覚している。最終話に島耕作は「この作者が書き続ける限り作品は続く」みたいなことを言っている。一気にメタ的(メタフィクション)な視点を導入することで,作品と読者に大きな距離感が生まれる。 #島耕作

2013-08-27 21:38:32
kikanet@森 @kikanet1

この瞬間,島耕作にのめりこんでいた読者はいなくなるし,独り立ちしなくてはならない。 以上が「専務島耕作」の感想である。本当に娯楽として,お話として十二分に楽しめたが,それ以上のものは無かった。機会があればヤング島耕作から,社長島耕作まで読もうと思う。 #島耕作

2013-08-27 21:42:00