アステルパーム氏による東方考察合同誌2査読まとめ
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0.はじめに
考察合同2を入手.また今晩にでも査読風感想をお送りします.前とは違って数も増えたので,もうちょっとシステマティックにする予定.特に自分の方法ではフォローできない文系組に対しても何とかする方法を模索中.
2013-08-29 15:23:19お送りする査読風感想とは,前回合同から行っているもので,同じ論文誌に投稿した立場から目的は各論文について,「内容とロジックについて理解する」ことを目的としてコメントをするものです. 去年の様子はあおこめさんによるまとめをご覧ください.http://t.co/MnEFyqcfON
2013-08-29 21:13:44これは一般的な査読論文誌におけるレビューシステムを念頭に置いたものです.レビューとはある論文に対して,同じ分野の専門家がコメントを行い,その論文をより良くするor質を保つために却下するシステムです.
2013-08-29 21:16:35そのため,非常に物言いがストレートになりますので,感想をお送りする前に各著者に対して,確認のリプレイをお送りすることにしています.
2013-08-29 21:16:39また,今回からの試みとして,レビュー点数をつけてみようと思います.総合点は50点で,25点が平均点となるよう努力するつもりです.以下に点数項目を示します.
2013-08-29 21:20:15[書式]目的にあった書式となっているか,誤字脱字の量 [構成]読者に配慮した構成となっているか,文章量は適切か [新規性]まだ誰も考察していな部分を扱っているか,著者のオリジナリティが感じれられるか
2013-08-29 21:21:11[統合性]参考文献の数は十分か,それは適切に引用されているか,過去の文献をまとめることで,良いレビューとなっているか [インパクト]レビュアーが受けたインパクト
2013-08-29 21:21:171. Die, リトルナイトバグと昆虫の行動制御, pp.179-188
それでは 考察合同誌Vol. 2 Die リトルナイトバグと昆虫の行動制御 pp. 179-188 の査読風感想をお送りします.
2013-08-29 21:29:12概要 リグルの能力を,行動制御物質を用いる観点及び無線誘導を用いる観点から考察した論文.前半部の概説の出来が非常に良い.これはこれまで概説物を数多く執筆してきたDieならではのものだろう.後半部のリグルの能力考察については幾つか疑問があるものの,概ね受け入れられるものだった.
2013-08-29 21:29:25この論文のオリジナリティは非常によく資料を読んだ上でのリグルの能力解説だろう.単に「フェロモンです」ではなく,既知の文献をよく示した上で解説を行うことで,大きな説得力を生んでいる.
2013-08-29 21:31:11また,個人的に嬉しいのは前回合同で指摘した点である,既存論文の解説とリグルの能力考察のバランスをうまくとっていることである.本論文は前半部と後半部のバランスが良く,どちらも書かしてはならないものとなっている.
2013-08-29 21:33:51では各部分について.アブストラクトl3 「行動物質を用いる場合と~の2つが考えられることがわかった」 この論文ではこの2つの観点から考察を行ったものであるため,「わかった」とするのは疑義を生じる.
2013-08-29 21:36:20「わかった」とするならば,リグルの能力と比較してこの観点から作ったモデルが,十分彼女の能力を説明していることを示すべきである.本論文にはそのような比較はなく,あくまで2つの観点からの考察にとどまる.
2013-08-29 21:37:21同様の指摘は例えばp 179 左l5「考えられる」などでもあり,真に論文風の書き方をするならば何がどこまでどのくらいわかっており,そうでない部分はどこなのかを明確にするべきだろう.
2013-08-29 21:40:31論文の引用について 本論文では非常に多くの良書を紹介すると同時に論文引用を行っているが,そのタイミングについていくつが疑問がある.
2013-08-29 21:43:50例えばp180左l11「E. Verschaffeltによって~」には引用が付いているのに,p181 右「~Karl von frischである」には引用がついていない.論文内ルールを決めて,運用を行っても良かったかもしれない(例えば人物の業績にはきちんと引用を付けるなど)
2013-08-29 21:44:53p181左l16「これらの昆虫の"匂い"に関する~先のとおりである」ここで,匂いの定義が明確で無いために”先の通り”がイマイチ理解しづらい.おそらくここでの匂いとは”昆虫が受容する大気中に拡散したある種の化学物質”のことだと思うが,これまでには誘引物質についてしか言及していない
2013-08-29 21:48:16p181 左l181「アレロケミカル」とp184左l24「アレロケミカルと呼ぶべき~」この2つのフレーズの関係は非常に惜しい.本論文により,自分はリグルの行動を説明するのは「フェロモン」ではなく「アレロケミカル」と呼ぶべきなのだと理解し,感銘を受けた.
2013-08-29 21:51:43