【ニンジャスレイヤー二次創作】 帰ってきた女 #1

全米を震撼させるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」と、カート・キャノンによる「酔いどれ探偵街を行く」のエッセンスを借りた二次創作です。 気が向いた時に書いているのでまだ続きます。 【#1】http://togetter.com/li/567510 【#2】http://togetter.com/li/635035 続きを読む
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夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

「そうかい、タノシイがやりたくなったらおれに会いにきてくれ。ヨコチョストリートのテンネンって店を探せばいい」 そうするよと答えてシーホースと別れた。もう一度あうことはあるだろうか。 背を向けたところで再びシーホースが声をかけてきた。 26

2013-04-05 00:59:52
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

「あんたのヨメとムスメをこないだみかけたぜ。あいたきゃアサクサに行くといいよ」 ヨメとムスメ、おれにか?おれに家族なんてたいそうなもんがあったか? いいや、あったさ。たしかにおれの人生最良の時は家族がいたときだ。そして仕事もあった。デッガーの仕事だ。 27

2013-04-14 01:53:59
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

ばかものめ、おれはおれ自身で望んでその人生最良の時を捨て去ったのだ。家族を悲しませ、その報いでいまこうして屋根のない地面の上で酒瓶を抱えているのだ。 28

2013-04-14 02:01:06
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

それでもおれの足はアサクサへと向かっていた。会ってどうするかなどアルコールでふやけた脳みそには関係なかったのだ。汗じみたおれに触れるのを避け、サラリマンたちは顔をしかめる。構うものか、道が開けて歩きやすいさ! 29

2013-04-14 02:26:21
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

どこを探すあてもなかったが、おれはアサクサをうろついた。うろついている間に考えた。会わない間にヨメとムスメはどんなになっただろうか?生活はくるしくないか?再婚はしたのか?願わくば幸せであってほしい。 30

2013-04-23 00:01:17
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

ふらふらと歩きつづけ、コケシマーケットの前でヨメの後ろすがたをみつけた。彼女はコケシマーケットのロゴの入ったPVC袋を片手にさげていた。後ろすがただけでもわかる、おれの記憶とかわらず美しい。 31

2013-04-23 22:47:09
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

かみの色は夜空のように黒がふかい。仕立てのいい服からはほっそりした足が生えている。彼女をみている内に、おれは急にじぶんがひどくみじめに思えてきた。彼女にくらべておれはどうだ、ジャケットはよれよれでつぎだらけだ。シャツのえりとそではアカでまっ黒だ。 32

2013-04-23 23:25:29
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

靴にはトークンよりも大きな穴があいている。ようするにおれの着ているものはゴミ捨場のボロなんだ。そうとも、おれはルンペンだ。トミモト・ストリートのマンホールをねぐらにするルンペンなんだ。 33

2013-04-23 23:30:57
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

おれは上着のえりを立ててきびすを返した。そのままトミモト・ストリートまで一直線にもどった。それからタジモ=サンに頼み込んでキャンプ中からまともな服をかきあつめてもらった。 34

2013-04-25 21:15:16
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

「そんなにめかしこんでどうしたんだい?」 キャンプのみんなが不思議そうにたずねてきた。 「やることができたんだ」 そう答えるとみんなは笑って肩をどやしつけてきた。昨日まで死んだ目をしていた男がやることをみつけたというのだ 31

2013-05-01 19:05:26
夏頭悠@にんぱくファイナルR02 @N_Halka

ありがたいことに、それを喜んでくれる。 おれは半年ぶりにセントーにでかけ垢を落とし髭をあたった。セントーの店番はさっぱりさせたおれを見て驚いていた。どうだルンペンだって、身なりをきちんとすればそれなりになるもんなんだ。 32

2013-05-01 21:42:25