グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】#6

2013-10-18 14:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺の商店は返品不可、ワカル……」「言ってみただけだ」ニンジャスレイヤーは歩き出した。フィルギアは肩を竦め、後に続く。背後はカンオケの埋め跡、最初の雨粒がポツリポツリと落ちた、やがて激しく降り出すだろう。「どこ行く?」とフィルギア。ニンジャスレイヤーは答える。「破砕音の方向だ」1

2013-10-18 14:34:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「音がしたって?さっき?」フィルギアは言った。「俺ァ慣れない肉体労働に必死で……ああ、ああ、ああ」駆け出したニンジャスレイヤーの後へ続く。どんどん引き離される。フィルギアは溜息をつく。その身体が歪み、一瞬にして一頭のコヨーテに変わった。コヨーテはニンジャスレイヤーを追う。 2

2013-10-18 14:36:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがてニンジャスレイヤーは目的の場所へ辿り着き、そこから頭上の二階ベランダを見上げた。窓ガラスが割れ、風に煽られた雨が中に吹き込み始めた。「校長室!」追いついたコヨーテが飛び上がり、ニンジャスレイヤーの背中を蹴って跳ねると、フクロウにその姿を変えて、羽ばたきながら上昇した。 3

2013-10-18 14:43:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーも一瞬身をかがめて力を溜めたのち、二階の高さへ跳躍!空中で一回転しながらベランダへ着地、人間の姿に戻ったフィルギアに続いて校長室へ踏み込んだ!「アイツは留守だ」フィルギアは言った。「名士様だ。ネオサイタマでのロビー活動にもご執心なニンジャさ」 4

2013-10-18 14:49:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうは言っても時間は無かろう……」ニンジャスレイヤーの指摘を裏付けるように、ドアノブが外側からガチャガチャと動かされていた。「誰かいるのですか!」廊下から声。建物内の清掃員ないし警備員が異常に気づいたのだろう。「ちと待ってろ!」フィルギアは堂々と応答し、いきなりドアを開けた。5

2013-10-18 14:55:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!?」ドアを内側から急に引き開けられ、声の主は……人の良さそうな清掃員は室内にまろび込んだ。そしてフィルギアにぶつかり、跳ね返って尻餅をついた。「アイエッ?あなた確かナツイ先生とかいう……」「アンタの他に、人は呼んだ?」「アイエッ?」見上げる目は恐怖に見開かれる。6

2013-10-18 15:00:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フィルギアの痩躯がザワザワと音を立てた。清掃員の瞳に映る姿が少しずつ歪むにつれ、その瞳孔は恐怖に収縮していく。「アイ……アイエ……アイエエエエ!?」「お前は何も見なかった。私は誰でもない。いいね?」清掃員を見下ろすのは梟頭の怪物であった。「アイエーイエエエエー!」清掃員は失禁!7

2013-10-18 15:03:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャ!フクロウの……アイエエエエー!」清掃員は失禁しながら叫び出した。梟頭のフィルギアは閉口したように小首を傾げ、その頚椎にチョップを振り下ろした。「イヤーッ!」「アバーッ!」沈黙!「殺ってない、殺ってない」ニンジャスレイヤーを振り返る。8

2013-10-18 15:11:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「目が覚めれば悪夢か何かだと思うんじゃない?善良なモータルはこういうインパクトに弱いものなのだよ。わかるかね……」フィルギアはニンジャリアリティショック反応にしかつめらしく言及しながら、もとの人間の姿に戻った。ニンジャスレイヤーは唸り、探索を開始した。机。棚。クローゼット。9

2013-10-18 15:16:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そう、その通り!実際時間がないンだぜ!次の奴が来たらまた面倒」フィルギアはニンジャスレイヤーと共に物色を開始した。「時間がないから手っ取り早くやったんだ、本来俺は無害なんだ……ワオ!銃創じゃないか!とにかくこの部屋で何かあったんだな!探偵の銃じゃねえの?そっちはどう?」 10

2013-10-18 15:23:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この部屋には先客があった。窓ガラスを割った人間が」ニンジャスレイヤーは言った。「何かが持ち去られている」「ま、ガキが野球して割っちまったッて事はねえだろうし、そうだろうな。俺らの他にこういう真似をしてる奴……探偵……のゾンビかな?ニアミスかな……」「……これは!」11

2013-10-18 15:27:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは机の引き出しの中から、黒くくすんだ円形の物体を取り出した。鎖がついている。フィルギアはそちらを見、「アァ?ペンダント?ちょっとイイな、だけど、俺らは今、貴金属荒らしじゃなくて……」「これはホーリーシンボルだ」「ああ、だからホーリーシンボル……」「鴉の印だ」12

2013-10-18 15:32:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは円形のホーリーシンボルを指先でなぞった。その表面には記念コインめいて、鴉の意匠が施されている。「持ち主がわかる。ニンジャとなったのち、彼は、自身を助けたカラス・ニンジャを象徴する品を身につけていた。一種のモージョーとしてだ」「遺品ッてわけ……」 13

2013-10-18 15:35:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ただの飾りではない」「他に何かねェか?そういうセンチメンタル品もいいんだがよ……時間がねえぞ」フィルギアはキャビネットを蹴倒し、額縁を引き剥がす。「誰だ、ここから持ち去った奴……」「見ろ」ニンジャスレイヤーはホーリーシンボルを両手で支え、表面を金庫ダイヤルのように捻った。 14

2013-10-18 15:41:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

右に数回、左に数回、また右。暗号じみたリズム。やがてカチリと音が鳴り、ホーリーシンボルは化粧コンパクトのように開いた。「探偵ガジェットだ。幸い、彼の用いる符丁は変わらぬままだった」ニンジャスレイヤーは中身をしめす。LANコネクタ端子。フィルギアは口笛を吹く。「同業者万歳かね」15

2013-10-18 15:50:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そういう事だ。知らぬ者には仕掛け自体がわからぬ。そうして秘密を守る」「ハードウェア・プロテクションだ!ヒヒヒ、マジに探偵らしい……」「ディテクティヴ=サンを破った校長が、所持品を押収。これについては用途がわからぬまま、処分を留保して机の中に寝かせていた」彼は仮説を述べた。16

2013-10-18 15:58:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その説を採用しとくか」フィルギアは言った。「多分、大切なデータだぜ!早速UNIXにかけなくちゃ……」彼らは廊下の外に複数の足音を聴く。叫び声を聴きつけてきたか。二者はその他目についた物品を懐へしまい、窓から飛び降りた。雨が強く降っている。走りながら彼らは会話を続ける。 17

2013-10-18 16:16:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……てことは少なくとも、『先客』はディテクティヴ=サンじゃねえわけだ」フィルギアは言った。「自分の物を取り返しに来たなら、わざわざそいつを置いていくわけがねえ」「そうだな」「誰かな……アー、前」前方でライトが揺れる。巡回か。彼らは生垣の陰に身を隠す。 18

2013-10-18 16:23:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とにかくこれでようやく、俺の潔白が証明された」とフィルギア、「そいつはディテクティヴ=サンの品、紛れもない実物だよな」「本人の身につけていた品だ」「だろ!俺は嘘を吐かない」「痕跡を追えるか……」ニンジャスレイヤーは独り言めいて呟く。「やってみる価値はある」 19

2013-10-18 16:36:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とにかくこれでようやく、俺の潔白が証明された」とフィルギア、「そいつはディテクティヴ=サンの品、紛れもない実物だよな」「本人の身につけていた品だ」「だろ!俺は嘘を吐かない」「痕跡を追えるか……」 ニンジャスレイヤーは独り言めいて呟く。「やってみる価値はある」 19

2013-10-18 22:06:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「追跡か」フィルギアは思案顔で、「本当に生きているッてんなら万々歳。初戦でディテクティヴ=サンがしくじった理由を本人に訊いて、対策が立てられるかもしれねえよな。探偵は生きていた。で、邪悪なニンジャであるここの校長を、ニンジャスレイヤー=サンがブッ殺す。俺、喜ぶ。完璧だ」20

2013-10-18 22:13:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「当然殺す。だが、オヌシはそろそろ理由を明かしてもいい頃だ」「理由ね」「そうだ」ニンジャスレイヤーの目は、「忍」「殺」のメンポと頭巾の奥で、確定的殺意の暗い光を帯びている。だが彼は他者の利欲のために殺しのカラテを振るう行為に激しい嫌悪感を持っていた。ましてフィルギアの利欲だ。21

2013-10-18 22:22:25