掌小説語り~自作つぃのべる集9~

自作つぃのべるまとめです。 2013年3月分
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リュカ @ryuka511

アウトドア派の彼女に誘われてキャンプに来た。キャンプと言えばカレーでしょうと言って、彼女はてきぱきとカレーを作る。僕はペンを手にそんな彼女をスケッチした。写真撮られるより恥ずかしいと笑う彼女。真夏に外へ出るなんてと思ったけど、こんな過ごし方もいいかなって思った。 #twnovel

2013-03-01 22:48:02
リュカ @ryuka511

ご主人様から頂いた懐中時計が動かなくなってしまいました。嫌な予感かまします。ご主人様は優しい紳士、亡くなった奥様の形見の人形の私を大切にして下さっています。けど、最近様子がおかしいのです。ため息ばかりで淋しそう。私を置いてどこかへ行ってしまいそうで不安なのです。 #twnovel

2013-03-03 04:41:17
リュカ @ryuka511

橋の上から川面を眺める。身を乗り出すとふいに声をかけられた。「死は本当に自由かな?」振り返るといつの間にかおでんの屋台を牽いた初老の男が立っている。勧められたおでんを食べると心が軽くなった。お代はいらないよと言われ男も屋台も消えている。おでんの温かさが沁みた。 #twnovel

2013-03-03 23:22:28
リュカ @ryuka511

うちの人を知りませんか?天鵞絨の帽子を被った人なんですが。あら、あの人ったら酒瓶なんか抱えちゃって。仕方のない人。おじいさん、いい加減お酒は止めたら如何です?え?お前は老けたですって?そりゃ私の方が何年も後にここへ来たんですから。淋しくなんかなかったですからね。 #twnovel

2013-03-05 04:27:14
リュカ @ryuka511

人間の君が私を残して死んでしまう事など最初から解っていた。だが今、君の亡骸を前に私はそれを受け入れられずにいる。今の君は生前と変わらず美しい。なのに君は死んでいるだなどとどうしたら信じられるだろう。私の永遠の命を分け与ようと深くくちづけた。どうか目覚めておくれ。 #twnovel

2013-03-06 22:52:46
リュカ @ryuka511

勇者が魔王を討伐した後、独自に反乱軍を率いた男は複雑な気分だった。魔王の支配から解放されたのは喜ばしいが平和と自由を謳歌する人々から彼は距離を感じる。自分は何かに刃向かい戦う事でしか生きている実感を得られないと気付いた。自由なんて退屈だと思う自分が恐ろしかった。 #twnovel

2013-03-07 23:38:46
リュカ @ryuka511

君が描く世界が僕の真実。君の色、君の語り、君の心で彩られた世界はとても居心地がいい。君の心のままに僕は生きる。君が泣きながら描けば僕も泣き微笑みながら描けば僕も微笑む。君の望む結末に向かって生きる僕は君の分身。どうか僕を笑わせて。僕の幸せは君が幸せでいる事の証。 #twnovel

2013-03-08 23:26:31
リュカ @ryuka511

築き上げてきた強固なお城は実は砂のお城だったのです。必死に守ってきたもの信じてきたものは、そこにあると思い込んでいただけだったのです。それは音もなく静かに壊れました。 #twnovel

2013-03-10 01:41:06
リュカ @ryuka511

「大きくなったら結婚しよう」何も知らなかった幼い2人は約束した。だが貴族の令嬢と使用人の青年、許されるはずはない。それでも少女は信じていた。青年は苦悩の末1人屋敷を離れる。上手な約束の破り方をしたとは思えない。だが現実を前に愛を貫く事は出来なかった。 #twnovel

2013-03-10 23:14:07
リュカ @ryuka511

異国で暮らすご主人様は淋しそう。ドレッサーに向かって溜め息ばかり。言葉も習慣も違う国で人形のボクだけがご主人様の友達。ボクの身体が自由に動けばご主人様を抱き締めてあげられるのに。でもボクが人間だったらご主人様とは出会えなかった。歯痒さを抱え傍ながら傍にいる。 #twnovel

2013-03-11 23:31:20
リュカ @ryuka511

この日をこの場所でと以前から決めていた。早春の、海を見渡せる丘の上。初めてのデートの場所。海辺は時折強い風が吹いて、僕らの言葉を途切れさせる。君は何かを察しているように僕をそっと見上げる。風の音が止んだら、君にプロポーズしよう。 #twnovel

2013-03-12 22:42:20
リュカ @ryuka511

船が沈み私は板に必死で掴まり救助を待っていた。そこへ男が私から板を奪おうとする。無我夢中で男を突飛ばし、奪い合いの末男は力尽き海に沈む。私は救助され手当てを受けたが、板を奪い合って付いた傷は今も消えないまま。法が私を罰しなくても、消えない罪と傷は私を苛み続ける。 #twnovel

2013-03-13 22:54:43
リュカ @ryuka511

明日私は告白する。先輩が大好きだって事と、私が余命3ヶ月と宣告された事。ずるいやり方だと思う。だけど、私に生きる希望をくれた先輩にお礼をしたいから。後輩の中に私がいた事を覚えていてほしいから。フラれるのは覚悟した。ただありがとうと大好きを伝えたい。 #twnovel

2013-03-14 23:18:27
リュカ @ryuka511

月の見えない夜でも我々の力は衰えない。そんな夜こそ力を発揮出来て初めて一人前の人狼として認められる。私は今夜、息子に戦いを仕掛ける。私に傷を負わせられれば息子も一人前と認められるが、何も出来なければ里を追われる事になる。手加減はしない。その必要などないだろう? #twnovel

2013-03-15 23:42:50
リュカ @ryuka511

アクセサリー屋で見つけた指輪に君の視線が止まったから、プレゼントしたら凄く喜んでくれた。給料の3日分にも満たない指輪だけど君は今も大事にしてくれてる。安い指輪でごめんなと言うと、プレゼントは金額じゃないのよと微笑む君。僕も値段を付けられない大事なものをもらった。 #twnovel

2013-03-16 23:16:48
リュカ @ryuka511

刀匠は全神経を集中し刃を打つ。この刃に命をかける男達のために、彼もまた刀鍛冶に命をかける。己の命運と誇りをかけた戦いに臨む男達に相応しい刀を。守るべきものを守り抜く力を。鉄を打つ澄んだ音は剣戟の音にも似て、彼らの戦いの凄まじさを響かせる。 #twnovel

2013-03-17 23:02:13
リュカ @ryuka511

魔王の断末魔が響き勇者はその場に倒れ込んだ。魔王を倒したが、仲間は倒れ勇者ももう動けなかった。俺達の旅はこれで最後だろう。世界を救った勇者達は魔王と共に姿を消した、それでいいんだと勇者は自嘲する。魔王を凌ぐ力を持った自分達を、誰も受け入れてはくれないだろうから。 #twnovel

2013-03-18 22:53:45
リュカ @ryuka511

昔、異世界から現れ魔王の脅威から世界を救った救世主。その存在が今求められていた。だが召還士は苦悩する。強制的に呼び世界を救えだなど言えやしない。誰も現れなければいいと思った。他力本願な人間の世界など誰が救うと言うのか。自分達で救えない世界などいっそ滅びてしまえ。 #twnovel

2013-03-19 23:32:57
リュカ @ryuka511

許さなくていいから忘れないでなんて残酷な願いだと解ってる。だけどあなたを残して逝く私を許してなんて言えない。私を忘れないでほしいけど幸せになって。あなたは悲しい顔で笑う。お前とじゃなきゃ幸せにはなれないと。そんな顔しないで。あなたを連れて逝きたくなってしまう。 #twnovel

2013-03-20 23:31:55
リュカ @ryuka511

今は言えない、今言うべき事じゃない、そう思って飲み込んだ言葉が胸の中に溜まっていく。今更言えなくなったそれらはゆっくりと腐敗していく。今頃手の付けられないまでに腐りきってるだろうそれらに見ないフリをする。今にも胸を突き破りはしないかと怯えてる。 #twnvday #twnovel

2013-03-22 09:16:32
リュカ @ryuka511

自室で仕事をしてると決まってコイツは絡んでくる。忙しいけど、最近ずっと構ってやれてないから仕方ない。ちょっと構ってやるか。 #twnovel あいつは自室で仕事してると決まって難しい顔してる。近付くと面倒臭そうな顔で振り返るけど、本当は構ってもらって嬉しいのは解ってるんだにゃ。

2013-03-23 08:33:59
リュカ @ryuka511

満月の夜には何が起きても不思議じゃない。例えば僕の八重歯が大きくなった事、僕に狼の耳が生えた事。 #twnovel 満月の夜には不思議な事が起きる。私の目が赤く染まる事、犬の耳が生えたあなたが美味しそうな事。

2013-03-24 00:27:38
リュカ @ryuka511

悲恋の末に海の泡と消えた人魚姫の話を聞いた人魚の少女は、自分も劇的な恋をしたいと思った。嵐の度に海上に向かっていたある日、船から落ちた人影を見つけた。彼女の好みとはかけ離れた壮年の男だが、溺れた男を放ってもおけず岸へ連れて行き手当てをした。まだ、恋は始まらない。 #twnovel

2013-03-25 23:33:35
リュカ @ryuka511

人魚が助けた男は漁師のようだ。精悍な顔にがっしりした体格は優雅な王子様とは程遠い。それでも男が目を覚ますまで傍にいようと思った。外見で判断してはいけないという亡き父の言葉を思い出す。憧れた出会いとは違うが何故か離れられなかった。男に父の面影を見たのかもしれない。 #twnovel

2013-03-27 09:22:18
リュカ @ryuka511

男が目を覚ますと、人魚の少女はそっとその場を離れた。まだ正体を知られちゃいけない。でも彼の記憶には残らなきゃ。岩陰から様子を伺っていると、男はぼんやりと辺りを見回していたが頭に巻かれた包帯に気付き、一体誰が?と首を傾げる。岩陰から見つめる彼女に男は気が付いた。 #twnovel

2013-03-28 12:00:34