黒と白~斎藤一~

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説です。 ~内容~ 伊東の間者となる密命を受けた斎藤一は、残酷と知りながらも千鶴の想いに応える。 僅か二ヶ月の甘い日々に、斎藤は自ら終止符を打つ。 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

やけに機嫌の良い伊東さんは、俺の前にしゃがみ込み、 抱えていた花を差し出した。 「誰かが持って来てくれたみたいよ。きちんと切りそろえてあるの。 門のところに置いてあったんですって」

2013-11-20 17:56:55
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「まだ咲いていたのねえ」 伊東さんが花を愛でたりする姿は、剣士らしからぬ品がある。 しかもこの人は風雅だと思わざるを得ない才も持っている。

2013-11-20 17:57:09
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「そうだ、斎藤くん。花言葉ってご存知?」 「いえ」

2013-11-20 17:57:20
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「例えばこれは、勿忘草。 その名の通り、わたしを忘れないでくださいっていう意味と」 伊東さんは俺の目を覗き込むようにして言う。

2013-11-20 17:57:39
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「真実の愛、なんて意味もあるわ」

2013-11-20 17:57:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

花を俺の前に置き、立ち上がる。 「そのお花は、努力家の斎藤くんにあげる」

2013-11-20 17:58:10
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

伊東さんが去ったあと、残された花を手に取る。 「勿忘草……」

2013-11-20 17:58:24
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

呟いた瞬間、小さなつむじ風が通り抜けた。 俺は飛ばされぬよう花をぐっと握り、改めてその青紫を見つめる。

2013-11-20 17:58:41
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

これは多分、雪村が持って来たのだ。 謂れのない確信が俺の中に芽生える。

2013-11-20 17:58:58
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

どこかで、俺たちがここにいることを聞き及んだのか。 危険を冒してまで届けてくれた「勿忘草」は、 雪村の言葉を語っているのだ。

2013-11-20 17:59:14
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「私を忘れないでください。 ……真実の、愛」

2013-11-20 17:59:26
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

この花は、一緒に包んだ簪に描かれていたのと同じものだと思う。

2013-11-20 17:59:39
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

静かに笑みが漏れる。 「知って知らずしてか。俺たちは同じことを思っていたのだな」

2013-11-20 17:59:52
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

慶応二年六月____ 手の中で風に揺られる花は、雪村の笑顔を運んできた。 ____了。 http://t.co/66QUOXkXpF

2013-11-20 18:00:42
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

【後記1】 Twitterで文章を書く。 ツイートごとに場面を切り替えたり、 情景をはしょって、どこまで「小説」っぽくできるかという課題がありました。 原文はもっと細かいことを入れていたりしますが、長々とした文はTwitterには不向きで、

2013-11-20 19:15:23
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

【後記2】 それっぽくなるかどうかは挑戦でした。 薄桜鬼というステージがあって、皆様に想像して頂いて成り立つ創作でした。

2013-11-20 19:16:49
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

【後記3】 わたしなりの斎藤さんは、 貫き通せばわたしの誠に、本物に、なったでしょうか。 場面は慶応2年2月から6月。 伊東さんらの分離の一時を、20日間、約18000文字で綴りました。 とりあえずの完走ですが、 リプで支えて下さったことにこころから感謝致します。

2013-11-20 19:23:44
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