リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ ＃４
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「グヌーッ」マスター・ヴォーパルは唸った。「ツケで許してやるというのに、こんなところでケチをするでない！いや待て、ヌンチャクならば四方刃ヌンチャクと短銃ヌンチャクがあるぞ！」「過不足無し」ニンジャスレイヤーは言い、その場で中腰姿勢を取ると、一通りのヌンチャク・ワークを行った。22
2013-11-11 16:26:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「……よかろう」マスター・ヴォーパルは渋々頷き、懐から借用書を出すと、数値を書き加えた。「後はお前次第だ。利息もキッチリつけるぞ。どんどん返して元本を減らせ。忠告だ、師としての！」彼は借用書をニンジャスレイヤーに突きつけた。ニンジャスレイヤーはそれを受け取り、懐にしまった。 23
2013-11-11 16:34:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「インストラクションを感謝する。センセイ」ニンジャスレイヤーはマスター・ヴォーパルにオジギをした。マスター・ヴォーパルは欠伸をした。「債務履行！絶対だぞ」「承知した」「ならば、とっとと行け」「うむ」ニンジャスレイヤーは踵を返し、駆け去った。老人は腹を掻き、くしゃみをした。 24
2013-11-11 16:39:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
普段はこの時間でも人通りの多い地域であるが、数ブロックに渡り、人の気配が無い。強い雨の為か。それもある。だが、道沿いのバーや深夜ゴフク、流しソーメンの店々も、この日は示し合わせたように営業を見合わせていた。 27
2013-11-11 17:50:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
理由は……見よ。水色の巨大招き猫を屋上に戴く会員制クラブ「猫チャン蜜」。招き猫の手の巨大コーベインを。そこに異物がある。コーベインを礫台じみて、大の字に身体を拡げたニンジャの死体があった。両手足首にはスリケンが深々と突き刺さり、これが何らかの不条理事故でないことは明らかだ。 28
2013-11-11 17:55:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
下の無人ストリートに次々にヤクザリムジンが乗りつけ、ダークスーツとサイバーサングラスを身につけた同じ背格好の者らが続々と降りてきた。彼らのネクタイには「天下」の漢字を意匠的におさめたエンブレムの刺繍がある。アサルトライフルで周囲を警戒しながら、彼らは招き猫を確認した。 29
2013-11-11 18:00:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
彼らが皆同じ顔立ちをしているのは偶然ではない。兄弟でもない。顔色の悪さは病気ではない。ネオサイタマの闇社会ではクローン技術が実用化されている。彼らはクローンヤクザなのだ。「ドーモ」「ドーモありました」「あれにありました」「センセイ」彼らが上を指し示す中、リムジンから更に一人。30
2013-11-11 18:06:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
クローンヤクザのLED傘の下、黒いミリタリーコート姿のニンジャ……然り、ニンジャだ、ニンジャ頭巾にメンポ、酷薄かつ鋭い眼光、ニンジャでなくば何であるか……は、まずは己のニンジャ視力で死体を確認し、そのあと、注意深くスコープを取り出して拡大観察した。「……アイスジャベリン」 31
2013-11-11 18:13:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
アイスジャベリンはコリ・ニンジャ・クランのニンジャソウルを憑依させた白装束の一門。アマクダリ・セクトの中でも斥候や暗殺者として、組織内でよく知られるニンジャだ。「……」ミリタリーコートのニンジャはスコープ越しに眉根を寄せる。アイスジャベリンのメンポが無い。剥ぎ取られている。32
2013-11-11 18:19:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
何故だ？答えはすぐにわかった。アイスジャベリンの口には豚足が詰め込まれ、ワイヤーで固定されていた。あきらかな悪意。アイスジャベリンを殺した何者かは、ニンジャ暗殺者の符丁を知り、それをあえてなぞって見せているのだ。しかもアイスジャベリンは爆発四散していない。おそらくは衰弱死。 33
2013-11-11 18:23:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「ひでえな」ニンジャは顎で合図した。クローンヤクザが彼のミリタリーコートを脱がせた。中から現れたのは、リベットつきのベルトを複数巻きつけた特徴的なニンジャ装束だ。背中には「トクシュブタイ」のカタカナ。彼の名はファイアブランド。アマクダリ・セクトの中枢のニンジャである。 34
2013-11-11 18:29:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ニンジャが一般市民に殺される事など、通常ありえない。即ち、その犯人もまたニンジャ。何らかのトラブル。抗争。アマクダリへの反逆。看過できるものではない。ニンジャを相手にするとなれば、犠牲者よりも手練れのニンジャが必要である。ファイアブランドのような中枢（アクシス）のニンジャが。35
2013-11-11 18:34:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
アイスジャベリンの死体が発見されるや、即座に緘口令が敷かれ、マッポ権力によって地域住民は一箇所に集められた。彼らの中で必要な者は自我科の緊急処置を施され、ホテルで一泊したのち、明日には通常の生活に戻るだろう。直接の発見者を初めとする何人かは冷たいところで寝ている。36
2013-11-11 18:39:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「もう少しばかり……イヤーッ！」ファイアブランドは「大出火センス」のネオン看板を蹴り、「猫チャン蜜」の屋上に着地した。「……天気のよろしい時にやって欲しいもんだぜ」彼は足場を無雑作に伝い、コーベインに磔になったアイスジャベリンのもとへ辿り着いた。「おお、おお、ブザマだな」 37
2013-11-11 18:42:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
さて、誰がやったか。ファイアブランドは恐怖で見開かれ濁っているアイスジャベリンの双眸を、そして豚足を見ながら考える。アマクダリ・セクトに明確に敵対するニンジャはそう多くない。愚連隊であるサークル・シマナガシは掃討戦によって地下へ潜伏した。早晩殲滅されることだろう。……ならば。38
2013-11-11 18:50:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ファイアブランドはアイスジャベリンの片手のスリケンを引き抜き、あらためる。死体の手がダラリと垂れ下がる。ならば、答えを出すのは容易ではなかろうか？奴だ。ファイアブランドのニンジャ第六感がザワついた。この位置はまずい。ニンジャスレイヤー……「イヤーッ！」39
2013-11-11 19:00:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
その瞬間！水色の招き猫の腹を突き破り、ジゴクめいた赤黒の腕が飛び出した！そして、招き猫に密着するように立っていたファイアブランドの喉笛に、真っ直ぐに襲いかかったのだ！ 40
2013-11-11 19:01:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ファイアブランドの瞬間的な警戒が彼の命を救った。彼は反射的に身をのけぞらせ、このアンブッシュに対応した……メンポで保護されていない顎下の肉がニンジャ頭巾の一部ごと削り取られ、血が夜空に尾を引いた。「グワーッ！」ファイアブランドは下へ落下、リムジンのルーフに叩きつけられた。41
2013-11-11 22:44:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
飛び出した腕はそのまま招き猫の腹を下へと裂き開いた。縦に裂かれた燃える傷口を押し拡げ、赤黒い臓物めいて、ニンジャスレイヤーが出現した。彼は屋上の縁に直立。そこから下のファイアブランドを見下ろした。赤く光る両目が死神めいてファイアブランドを捉え、決して逃すことはない。 42
2013-11-11 22:51:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「カハッ……カハッ。撃ち落とせ。コロセ……」ファイアブランドがかすれた声を吐き、インカムで指示した。「「「ザッケンナコラー！」」」周囲に展開していたクローンヤクザ部隊が一斉にアサルトライフルを頭上へ向け、集中砲火を浴びせる。BRATATATATATAT……「Wasshoi！」43
2013-11-11 22:56:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ニンジャスレイヤーは回転跳躍！巨大招き猫が、コーベインが、磔のアイスジャベリンの死体が、銃弾の嵐の中、ズグズグに崩れてゆく。回転しながら落下するニンジャスレイヤーの周囲で火花が弾け、銃弾を跳ね返している事が判る。鍛錬されたニンジャ動体視力の持ち主であれば見える。ヌンチャクだ。44
2013-11-11 23:01:10