[公開読書] コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来—【プロローグ〜第1章】

コミュニティを問いなおす—つながり・都市・日本社会の未来— http://www.amazon.co.jp/dp/4480065016 2009年8月5日初版 ちくま新書 続きを読む
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白川陽一 @shirasan41

●人間にとってコミュニティとは何か 社会生態学はサル研究を通して重要な視座を与える。河合(1990)は以下を述べる ①人間は父親という存在を発明し家族という社会単位を作った ②人間の本質は、社会とつながる際、中間に家族、村などの集団をつくる(重層社会)ところにある ※以上、P23

2013-11-13 18:01:04
白川陽一 @shirasan41

コミュニティの本質的意味とは「重層社会における中間的な集団」ではないだろうか。つまり、それは個人が社会とつながる際に存在する中間的存在であり、また内部(母親)と外部(父親)の関係をもつものということである。

2013-11-13 18:01:13
白川陽一 @shirasan41

別の表現でいうなら「『コミュニティ』という存在は、その成立の起源から本来的に“外部”に対して『開いた』性格のものである(P25)」ということ。ここから、コミュニティづくりとは外部とつながるという要素が含まれる。換言すると、外部とつながりながら形を保つ動的平衡な存在ともいえる。

2013-11-13 18:01:21
白川陽一 @shirasan41

かつてJ・ジェイコブスは、コミュニティは「定住者」と「一時的な居住者」の融合で安定する「長期間いる人」が継続性を確保し「新参者」が多様性や相互作用を提供する、と述べた。この視点で、コミュニティを動的平衡で捉え直すことも出来る。コミュニティと創造性というテーマも語れるようになる。

2013-11-13 18:01:29
白川陽一 @shirasan41

本書は三部構成 第一部(視座):コミュニティを考えていくための基本となる視座あるいは枠組みを新しい角度から展開 第二部(社会システム):これからのコミュニティひいては日本社会で重要となる「政策」や「制度」のあり方 第三部(原理):コミュニティのベースとなる考え方や理念について

2013-11-13 18:01:48

第一部 視座(P29〜P113)

第1章 都市・城壁・市民—都市とコミュニティ(P30〜P65)

「都市」の意味するもの—都市と関係性

白川陽一 @shirasan41

第一部 視座 第1章 都市・城壁・市民—都市とコミュニティ ●「都市」の意味するもの—都市と関係性 日本の都市はヨーロッパのそれとの根本的な違いがある。違いは、大きく分けて ・ソフト面…人の行動様式や人と人の関係性 ・ハード面…建物の配置や景観など都市の空間的な構造 がある。

2013-11-13 18:02:25

ソフト面の問題(広井; 2005, 2006も参考)

白川陽一 @shirasan41

●ソフト面の問題(広井; 2005, 2006も参考) 日本の東京などの大都市で当たり前のこと。 (1)見知らぬ者同士の挨拶や会話がほとんどない (2)見知らぬ者同士の道の譲り合いは稀であり、駅などでぶつかっても互いに何も言わない

2013-11-13 18:02:45
白川陽一 @shirasan41

(3)「ありがとう」より「すみません」という、謝罪なのか感謝なのか分からない言葉が狭い範囲で使われている (4)都市の中のコミュニケーションといえば「お金」を介した(店員と客)のやりとり。しかしそれは店員の一方通行的な働きかけで、客の応答は限られたもの(ファーストフード店が顕著)

2013-11-13 18:02:57
白川陽一 @shirasan41

対してヨーロッパでは、客が店員に挨拶したり、レストランで食事が運ばれてきた時は「Thank you(中国では謝謝)」に相当する言葉を使うのが普通。日本は、客がまるで「主人」のように振る舞ったり、「赤ん坊」のように面倒を見てもらっている。

2013-11-13 18:03:06

「集団が内側に向かって閉じる」

白川陽一 @shirasan41

●「集団が内側に向かって閉じる」 (1)〜(4)とは、見知らぬ者同士の関係の希薄さ=コミュニケーションの不在を表している。裏を返せば、日本のコミュニケーションは身内に対しては過度に濃密という事である。すなわち、“他人”に対する関係のあり方の違いの「落差」が日本社会では際立っている

2013-11-13 18:03:20
白川陽一 @shirasan41

「日本における人と人との関係のあり方の特徴として、『“身内”あるいは同じ集団に属する者の間では、過剰なほどの気遣いや同調性が強く支配する反面、集団の『外』にいる人間に対しては、無視か、潜在的な敵対関係が一般的となる』という事が指摘できる(P34)」これはいじめの構造にも適用できる

2013-11-13 18:03:28
白川陽一 @shirasan41

「ウチ」と「ヨソ」の意識が強いことは、既に古くから指摘されきた。例えば、中根千枝(人類学者)「タテ社会の人間関係, 1967」や、和辻哲郎「風土, 1979」など。そして、広井は日本社会のこの特徴を「集団が内側に向かって閉じる(広井; 2005, 2006)」と表現した。

2013-11-13 18:03:36

関係性の進化

白川陽一 @shirasan41

●関係性の進化 では、なぜ日本社会はこの様な関係性になったのか。それは古来に育んだ「比較的恵まれた自然環境において、稲作を中心とする、小規模の、かつきめ細やかな集団管理や共同作業、そして同調的行動が求められる集団で形成されるような人々の関係性のあり方(P37)」が影響してるだろう

2013-11-13 18:03:49
白川陽一 @shirasan41

稲作時代の社会構造は身内との恊働性や凝集性が高く求められ、また外部に対して閉鎖的である。これは環境に適応する中で作られたということで、自然環境や生産構造、社会構造が変化すれば関係性も変化する。ちなみに日本人は戦後も都市の中に農村社会を持ち込み、ある時期まで好循環を生み出してきた。

2013-11-13 18:03:57
白川陽一 @shirasan41

しかし、経済が成熟した今「ウチ−ソト」を区別する関係性は、ひとたび集団を離れると孤立拘束感・不安を高め、様々な生きづらさを生み出すようになっている。日本社会の課題は「“個人が独立しつつながる”という、真の意味での『都市的な関係性』を作っていくことが求められている(P39)」。

2013-11-13 18:04:06

ハードあるいは空間面における「都市」

白川陽一 @shirasan41

●ハードあるいは空間面における「都市」 建物の配置、都市の空間的な構造、街並みや景観をめぐる問題もある。景観に関する問題は既に他のところでも指摘されている(2004年の景観法の制定を含めて)。本書に関連するのは「個々の建物が文字通り“孤立”して存在している(P41)」点である。

2013-11-13 18:04:18
白川陽一 @shirasan41

個々の建物が、形状や高さ、色などを含めて周囲との調和や街並み全体からみるとバラバラに存在している。これはそのまま「社会的孤立」と連動しているようにみえる。人の関係性を象徴している様である。 またヨーロッパなどの都市は、少し離れると田園風景が広がる。だが日本はなかなかそうならない。

2013-11-13 18:04:26
白川陽一 @shirasan41

日本の場合、戦後に大都市への人口集中→住宅が郊外に建つ→サラリーマンの通勤時間が長くなるという状況がある。意外にも、東京よりパリの方が人口密度は高い。しかし一見して東京の方が建て込んでいると思われるのは、空間構造のあり方が大きく関係している。

2013-11-13 18:04:35