知里幸恵『アイヌ神謡集』後半

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@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。クマとシャチはアイヌ民族の伝統的宇宙観における、カムイの二大巨頭。両種の神聖視は従来指摘されているように、近隣諸民族に広く分布する。知里幸恵の神謡集にはクマの話がない代わり、このシャチの話がある。

2010-10-14 16:17:36
@paggpagg

これから仕事なので神謡集ツイートいったん中断します。

2010-10-14 16:18:02
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。シャチが人間にクジラを贈る話。もちろんこれは、実際にシャチが獲ったクジラが岸に流れ着くことから。ちなみに狼の食べ残しも利用できた。シャチと狼が高位のカムイとされるのはそういう有難い面にもよる。

2010-10-15 00:29:29
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。この話ではアイヌ口承文学における典型的なヒーロー像のひとつが描かれている。末っ子で、立派な兄姉に可愛がられ、技に巧みだが、それを隠している。いざとなるとその実力を発揮する。

2010-10-15 00:36:55
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。兄姉たちは毎日猟に出かけているが、全く不足らしい。末弟はまだ小さいので猟に参加しない。兄姉たちも心配をかけまいと何も言わない。実は人間界は何かの事情で飢饉になっていて、兄姉たちは食料を贈ろうとしているのだが、そのためのクジラがなかなか獲れないでいる。

2010-10-15 00:39:47
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。兄は6人、姉も6人いることになっている。ここでの「6」は「たくさん」ではなく、具体的な数字としての6だろう(どっちでも同じことだが)。類話でも大抵そうだが、なぜなのかはよく分らない。シャチが群れることは確かだろうが、なぜ6なのか。ちょっと多い気もする。

2010-10-15 00:42:57
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。兄姉たちの様子を見ながらも、末弟はしらんぷりで悠々と彫刻をしている。彫刻はもちろん大事な男性の仕事だが、のんびりしすぎではある。もちろん、これは主人公がわざとゆっくり構えてタイミングを計っているのである。

2010-10-15 00:45:12
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。実は末弟は人間界が飢饉なのも、立派な兄姉たちが人間たちを救おうと奮闘しているのも知っている。「自分の出番かな」と思ったところで、黄金の弓矢を持って出かける。

2010-10-15 00:47:16
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。シャチの世界では女性も猟にでる(実は、人間の女性が猟をすることも別に禁じられているわけではない)。そして虚実混じった幻想的なクジラ猟の場面。実際のシャチがするようにクジラを包囲し、人間がするように矢で射る。するとクジラは上下にはねて矢を避ける。

2010-10-15 00:54:00
@quirigua

今ぐらいの時間につぶやいてくれる@paggpaggさんのアイヌ神謡集がおもしろい。なんとなくポポルブフーに通じるところが・・・ないか。

2010-10-15 01:05:43
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。兄姉たちはこのクジラのせいで全く猟がなかった。。末弟が別の方をみると、親子クジラがいる。狡猾なクジラなんぞほうってこっちを狙うべきだったのだ。末弟は一矢で二頭を串刺しに射殺、1頭を真っ二つに切り、半分を兄姉のほうに投げる。残りは人間のオタスッ村に押し上げる。

2010-10-15 01:11:51
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。シャチがクジラを真っ二つにするような鋭い刀を持っている、という伝承はアイヌ民族だけでなく、近隣諸民族にも伝わる。もちろんこれはシャチがクジラを噛み切ってしまう現実に基づくのだろう。

2010-10-15 01:15:03
@paggpagg

@quirigua ポポル・ヴフもいいですねえ。どなたか解説してください。

2010-10-15 01:16:43
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。ここで登場する「オタスッ」は全道の伝承にみられる定番の地名のひとつ。オタストゥンクル「オタスッの人」、ポイヤウンペ「本島の者」は、叙事詩の二大主人公(同時には登場しない)。前者は後者と違い、叙事詩以外にもさまざまな伝承に登場する。

2010-10-15 01:20:36
@quirigua

ええ!?光栄です!お~い、グアテマラ・グループ!だれかポポル・ブフの解説やってくれ!RT @paggpagg: ポポル・ヴフもいいですねえ。どなたか解説してください。

2010-10-15 01:21:06
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。ここで狂言回しのアトゥイチャクチャクという鳥が登場し、「人間はクジラを鎌なんかで切ってるぞ!」と言いつける。知里幸恵は「ゴメ」つまりカモメだとしているが、よく分らない鳥。もちろん言いがかりであり、人間たちは正装し恭しく宝刀で切り分けている。

2010-10-15 01:27:10
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。さて、「6人の長い兄と6人の短い兄、6人の長い姉と6人の短い姉」の合計24人の兄姉たちは半分のクジラも運べずにいる。末弟は兄姉の非力さに呆れてそのまま家に帰ってしまう。

2010-10-15 01:31:22
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。このあたりはアイヌ口承文学の紋切り型の羅列。素晴らしい。とにかく何事もあとからゆっくり行動し、実は先回りするのが流儀。兄姉たちが知らぬ間に、全て主人公が解決してしまうのである。

2010-10-15 01:33:12
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。日本語文に「私は実に呆れてしまった」とあるが、アイヌ語の意味は今ひとつよく分からない。「嬉しくなってしまった」というような意味か。さて、家に帰って待っていると、当然人間たちからお礼が届く。

2010-10-15 01:38:23
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。神窓のところにあるカネトゥキ「金属の大杯」に酒がなみなみと届いている。神窓はテレポーテーション装置+「ビッグライト」のようなもので、カムイノミのときに散らす数滴の酒が、大量の酒となって届く。

2010-10-15 01:44:58
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。そしてカムイノミで用いた「パスイ」が杯の上を、いったりきたりしている。おそらくちょうどカムイノミのときのパスイの動きと同じだろう。パスイはそのカムイノミの口上を再生してくれる。うーん、便利だ。ボイスメッセージだな。

2010-10-15 01:51:03
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。末弟はカネトゥキの中の酒を、6つの空の酒樽の中に少しずつ垂らす。大量のイナウも届き、部屋中が美しく飾られる。数日後、兄姉たちが半分のクジラをやっと持ち帰り、家の様子に驚く。酒樽も(酒が増えて)満杯になっているので、神々を招いて宴をはる。

2010-10-15 01:55:42
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。宴で末弟は自分の業績を語る。彼は全てお見通しで、人間界の飢饉も知っていたわけだ。そして帰る客たちにはイナウをお土産として持たせる。こうして末弟は地位の高いカムイとして認められる。華々しい社交界・政界デビューである。

2010-10-15 01:59:01
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。カムイと人間の関係は完全にコネ社会、利益誘導の世界である。カムイノミは大規模なお歳暮みたいなもの。カムイも人間も縁故によってさらに地位を高める。縁故だからこそカムイに対しては礼儀が大切となる。

2010-10-15 02:02:33
@paggpagg

アイヌ神謡集第八話。この話のサケヘ(リフレイン)は「アトゥイカ トマトマキ クントテアシ フムフム」。サケヘというのは「枕詞」みたいなもので、意味は分からないものだ。だが、強いて解釈すればおそらく「海の上、きらきらと(?) 巨大なり」というような意味だろう。

2010-10-15 02:08:06
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