- treeofevil
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「――……」 唇は動いたが、そこからは粘ついた生温い空気しか出てこなかった。 これでは伝わらない。言葉ではもう伝えられない。だから、――精一杯、心から、笑いかけた。
2013-11-18 23:33:52「………っ、」 笑顔。 彼が、なまえもしらない人間君が、最後に浮かべたのは笑顔だった。 なぜわらうの。これから、食べられちゃうのに。僕が、食べちゃうのに。 やめてやめてやめて、そんな顔で、僕を、見ないで、ぼくに笑いかけないで。
2013-11-19 00:16:07僕化け物なのに、化け物になるって、決めたのに。 これじゃあ、本当にたべれなくなるじゃないか。 その笑顔が、ホンモノだって、信じちゃうじゃないか。 やめてやめてやめて。 だまされるのは、もうたくさんなんだ。
2013-11-19 00:20:20頭の中のぐちゃぐちゃを全部吐き出すように、ぜんぶぜんぶ、投げ捨てるように。 手を伸ばして、その薄い肩をわし掴んだ。 せめて楽に殺してあげよう。首を狙えば、狙えば、きっと、すぐに。 すぐに…… 「いただきます」
2013-11-19 00:21:47声がふるえてたのは、きっと気のせい。 そう、僕は『暴食』だから。化け物だから。 傷ついたり、悲しんだり、泣いたりなんて、するはずないから。
2013-11-19 00:22:14骨と皮ばかりの肩が掴まれる。震える声で、見ているこっちが悲しくなるくらい、顔を歪ませている彼が見えないように目を閉じる。見られたく、ないだろう、きっと。 言い聞かせるように、自分は化物だと言っていた彼だから。
2013-11-19 00:58:45死にたいのか、と聞かれたら、生きたい、と答える。生きるためなら何でもする、そうして「暴食」になった。 ――けれど、俺は明らかに助からない重傷で、相手は俺を食べたい、と言う。誰かが生きるための糧になるなら、それもいいか、と思うのだ。
2013-11-19 00:58:56かつて、そうして俺は親友を喰らったのだから、いつか俺が食われるのも当たり前の連鎖じゃないか? いただきます、という声に、ああ、やっぱり律儀だなあ、なんて感想を抱いて。 意識も、視界も、終わりのない暗闇の中に、落ちる。
2013-11-19 00:59:03殆ど肉の無い、筋と皮ばっかりの、小さな体だった。 頭も、足も、胴体も、みんな食べた。 思ってた以上にお腹、空いてたみたいで、骨の一かけらだって残さなかった。 ただ、片腕だけは、彼が自分を撫でてくれたこの腕だけは、どうしてもたべれなくて。
2013-11-19 01:41:42ちまみれの僕の目の前には、ちまみれ腕が一本あるだけになった。 (…あの子は、けっきょく、うそつき、だったのかな) うそつきは、きらい。 でも、うそでも、ほんとうでも、あの時、僕の頭をなでてくれて、きっと僕は、すごく、すごくうれしかったんだ。
2013-11-19 01:42:40頭を撫でられたことなんて、一度もなかったから。 「……最後、会えたのが、君でよかった」 ちまみれの、うで。さいごのあのこ。 さいごのさいごまで、残してしまったけど、ちゃんと全部食べないと、あの子にしつれいだから。
2013-11-19 01:43:29足元につくった大きな黒い穴、僕の大事な『口』。 彼の腕をもった手を、ゆっくりと放す。 一緒に、僕の『Mel』という名前も、中途半端な僕も、捨てちゃおう。 うでは、落ちる、黒い黒い穴の中に、僕のお腹の中に、 . …ばいばい、『人間』。
2013-11-19 01:44:34《以上をもちまして……第六公演は終演致しました…… どなた様もお忘れ物のございませんよう……いま一度、お手回り品をお確かめ下さいませ…… 本日はご来場頂き……まことに有難うございました…》
2013-11-19 05:34:32うん!うん!今回もとっても楽しかったなぁ! −−四つの豪奢な箱たちは 喰い合って!潰し合って! どっちにしたって死ぬだけなのにね! −−パクリと一息に飲み込まれ ふふふふふ! さあ次へ行こう!楽しいことは早くしないとね! −−彼を満たす糧になる あははははははははは!
2013-11-20 20:30:24うん!うん!今回もとっても楽しかったなぁ! −−四つの豪奢な箱たちは 喰い合って!潰し合って! どっちにしたって死ぬだけなのにね! −−パクリと一息に飲み込まれ ふふふふふ! さあ次へ行こう!楽しいことは早くしないとね! −−彼を満たす糧になる あははははははははは!
2013-11-20 20:30:24