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白髪を腰まで伸ばした女が、道の脇に建てられた石碑を撫でている。ここに夫の名前が、刻まれておるのです。女は涙ながらに言うと、頬擦りをした。そんな夢を見たと友人に話すと、白毛女が来たんだなと、笑っていた。そういえば、先日まで大陸へ出張に行っていたのだった。 #twnovel
2013-11-17 11:16:35高層マンション建設予定地の工事を始めてほどなくのころ、掘り起こした土地から巨大な蒟蒻のようなものが沸いて出た。産廃が溜まっていたんだと業者は処理し、マンションは完成した。しかし入居者はいない。近隣からも多数の住民が引っ越した。あれが何か、知っていたから。 #twnovel
2013-11-17 11:19:55離れないで離れないで離れないで離れないで離れないで……電源を切っても、バッテリーを抜いてもかかってくる電話は、覚えのない女の声。俺は携帯の会社も、番号もアドレスも変えた。すると自宅の電話にかかってきた。君は誰だ?女は答えた。忘れたの?嫁だと言ってくれたのに。 #twnovel
2013-11-17 11:23:24シンデレラだって魔法は12時までと決められていたし、この魔法にも期限があるに違いない。 #twnovel 「知らないです」「そんな、心の準備ができないじゃないですか!」「そもそも魔法とかかけた覚えないんですけど」私は仕方なく魔法を学ぶ決心をした。ここまできたら道連れにします。
2013-11-17 11:23:48きのうはあさってよりも遠く、おとといは再来年よりももっと遠い。時は、自分のしっぽをのみこんだ蛇がぐるぐるまわっているようなものであり、今か未来かなんて区別できるものではない。要するに何が言いたいかというと、お誕生日おめでとう。君の存在する瞬間に出会えたのが奇跡。 #twnovel
2013-11-17 11:35:23紅葉は、樹のなかから色づいてくる。枝を折ったり、幹を傷つけてはいけない。桜守だった祖父の言葉をとうの昔に忘れた母は、家に陽があたらぬと嫌がって、枝を切ってしまった。母はあれから、寝付いてしまった。俺も昔、同じことになった。粥を煮ながら、父がひとりごちた。 #twnovel
2013-11-17 11:43:00これから君は、催しという名の戦地に行くのでしょう。君はいつも笑いながら思い出を語ってくれるよね。だけど今回は激しく、厳しい場所だと聞きました。だけど大丈夫。君ならきっと、それを乗り越えて楽しめるはずです。行ってらっしゃい。また楽しい話を聞かせてね。 #twnovel
2013-11-17 11:58:35大事業家にして大芸術家であるJ氏は、その仕事の合間に情熱的な叫びを発する。「創造するためにこそ破壊が必要とされるのだ。創造的破壊こそが」弟子の一人が辺りを見回して答える。「ですが先生、ここにはもう破壊できるものが残っておりません」 #twnovel
2013-11-17 12:25:05僕は、ひとりの夜が嫌いだ。両親が帰ってこない日は、無理にでも他人の家へ行く。寂しがり、だなんて言われてるけど、本当は違う。 #twnovel #ツイノベホラー ごとり、と部屋の前で音がした。外から、エンジンの音。しまった。「お坊っちゃん遊びましょお?」強引に扉が開かれる……
2013-11-17 12:50:15その指に触れられるといつも、思考回路はマーブル模様を描いて甘く溶ける。ゆるやかにうねって流れて、その指の跡から沁み入り、呪縛に変容して拡散してゆく。毒しか感じないほどの甘味に絡め取られて浸かりきって、いつか朽ち滅びるときまで。 #twnovel
2013-11-17 13:16:17「空が灰色だよ」と世界は綺麗じゃない汚い物だと、でも闇にも染まりきれないから、灰色だと曇り空に例える。君は、僕に笑顔を向けて微笑んだ。「だから、君を守るためにココに来たんだ」 ふと、周りを振り返ると世界は君と僕だけしかいない、灰色の世界に成り果てていた。#twnovel
2013-11-17 13:25:42縁日ですくった人魚を水槽に放した。ヒラヒラ揺れる彼女の尾びれは日に日に赤さを増していく。足が欲しいわ。呟く人魚。屋台の主人に相談したなら小さな瓶をくれた。#twnovel 一滴たらせば物語がはじまります。ただし貴方の役柄はわかりませんが。これで5度目。僕は未だ王子にはなれない。
2013-11-17 14:30:57#twnovel 夕暮れが近づくと古びた段ボール箱を持って河原に出かける。鉄橋の下の草むらに箱を置き中に入って再生ボタンを押すとスピーカーからは録音しておいた子猫の悲しげな鳴き声が響く。こうして僕は毎日出逢いを待っている。今日こそ優しくて可愛い女性が僕を拾ってくれますように、と。
2013-11-17 14:51:25今日も夕陽が沈んで行く。此処は俺だけの秘密の場所だ。この丘にトレーラーを停める時は、此処の夕陽が見たい時なんだ。朱の色を刷毛で刷いたようなこのグラデーションを見てみろよ。嫌な事なんて忘れちまうぜ。自分にイライラする時なんぞは良く来るんだ。俺にとっての癒しの場所さ #twnovel
2013-11-17 15:23:20食い道楽で、金はあるだけ使っちゃうあんただったけど、お不動さんへのお詣りは、欠かせたことはなかったなあ。おかげでふたりちんまりやってた食堂は、常連さんで繁盛しました。あんたにお礼言ったんじゃないのよ。お不動さんよ。お盆と彼岸は、ふたりでお詣り、行きましょね。 #twnovel
2013-11-17 15:30:45#twnovel 辛く悲しい事が次から次へと脳裏をかすめていた。やっとの事で20kmを通過。すると今度は幸せだった頃の想い出が現れては消えて行った。そして40km地点。頭の中にはもう何も浮かんでいない。やがて道路の白線が空に繋がった。すると意識の塊は脳内で溶け、自分は天に昇った。
2013-11-17 15:31:22踊り浴衣は派手な柄だと相場は決まっていたけれど、毎年見かけるあの子はいつも、真っ白な浴衣に同じ帯。僕は母さんなんであの子は、白い浴衣なのと訊いてみた。母さん、ホロリと涙を流して部屋から出て来なかった。外じゃかわさきが流れている。袖しぼる。袖しぼる。 #twnovel
2013-11-17 15:34:36芸者の癖にとバカにしながら、父ちゃんは母ちゃんの稼ぎを拝借して、飲んでかけて散財して、喧嘩ばっかりしてたなあ。今じゃ父ちゃんが先になくなって、母ちゃんすっかり暗くなって心配だわ。ねえ、父ちゃん。少しでいいから、母ちゃんの夢に出てきてくれない? #twnovel
2013-11-17 15:41:35魂のいちばん柔らかい部分に突き立てることしかできない爪を持っていることは出会う前から知っていた。彼に見い出されたことと、その爪を受け続けることとが同じ意味を持つのだとしたら、その痛み受け止めそこなうことのないように、彼に触れるとき、密やかにその爪を砥ぐ。 #twnovel
2013-11-17 16:16:19#twnovel もしもあの時彼に声をかけていたら、人生は変わっていたかもしれない。もしもあの時、道を左に行っていれば。もしもあの時。もしもあの時に溺れて沈んでいきながら、「もしもあの時」は過去ばかりを振り返っているだけとわかった。次の瞬間、ベッドの上で目覚めた。まだ、生きる。
2013-11-17 17:03:04#twnovel 真っ黒な塊がたまに威嚇するように、棘をだす。刺さったら、苛々という毒を出す。そして霧状になった毒は、音と一緒に拡散するんだ。猛毒だよ。だって、心を侵すんだもの。薬はある?問いかけた僕に簡単だよと君が笑った。ほら、たった五文字で寛解する。治癒はしないけどねって。
2013-11-17 17:06:08キッチンメイドの朝は早い、朝一番にお屋敷にいる主達の目覚めの一杯を用意する為に誰よりも早く起きる。「今日の紅茶も、美味しいわ」と、主達が笑顔なるのを浮かべ、愛情をポットに込める。私が、いつか貴方のお側でお給仕が出来る事を夢見て。#twnovel
2013-11-17 17:08:39【聖女30】母親がマリーとジャクリーヌを交互に見比べる。マリーに言わせるとそのまなざしが違うというのである。といっても、シャルル以外には言ったことがない。しかし寡黙というにはあまりも無口すぎて、ただ頷くだけであって本当に四女の言葉を聴いているのかわからない。 #twnovel
2013-11-17 17:30:47さよならと言ったキミの背中が小さくて不安になった。守らなきゃいけないものを手放してしまった私には何もなくて途方に暮れた日々を過ごした僕。さようならは、切なくて、悲しくて、脆かったの。さよようなら、さようなら皆さん。さようならと言いながら彼女は、星屑なった。#twnovel
2013-11-17 17:32:35月の綺麗さを一律に「綺麗ですね」で表現することは、月に対して失礼ではありませんか? もちろん美しさを評じることの無粋さは理解しておりますが、それにしても一律なのはあんまりです。友人としての「好き」と恋人に対する「好き」とでは違うのでしょう? 私は貴方が好きです。 #twnovel
2013-11-17 17:40:00