新選組~試衛館の青春 第一話「雪のひな祭り」
「そうですか、それでもわかるものなのですよ、そういうことは。まあ、後三年すれば答えの出ることです。楽しみですね」 山南は本当に楽しみだというように微笑んだ。それから思いついたように、 #試衛館の青春
2013-12-04 18:14:56「そうは言っても、土方君を見習ってやたらと喧嘩をするのは感心しません」 すました顔で付け加えた。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:16:08山口は不思議な気持だった。 昨日の自分の姿を思うに、どう贔屓目に見ても褒められたものではなかった。それを、あの素晴らしく強い土方が、三年後には自分を凌ぐとまで言ってくれているという。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:19:04そんな馬鹿なと思う。でも、山南が嘘を言っているとは思えない。また山南に嘘をつく理由もない。 ではなぜ? 自分の何処を見て土方さんはそう思ったのか。 山口は得心がいかなかった。得心はいかないが、悪い気はしない。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:20:27そう、山口は嬉しかった。山南は土方がそれを嬉しそうに言っていたと言った。そしてそれを山口に伝える山南もまた、楽しそうなのだ。山口は初めて他人に認められた気がした。初めて他人に好意的に受け入れられたと感じた。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:21:42皆伝免許をもらったときより嬉しかった。彼らと会ってまだそれほど時間も経ってない。彼らのことは何も知らない。でも、七年間通った道場の誰よりも、この三人に親しみを覚えた。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:22:43前を行く土方と沖田は、楽しそうに談笑している。沖田が何か憎まれ口を利いたんだろう、土方が沖田の頭を小突いた。山南はそんな二人を笑顔で見ている。 こんな関係を築ける道場もあるんだ。 山口は羨ましく思った。 自分もこの仲間に入りたい。 強くそう思った。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:24:25そのとき土方が振り向いた。 「ピン、ちょっと来い」 「はい!」 山口は、飛び跳ねるように駆けて行った。 すれ違った晴れ着の娘が驚いて、持っていた桃の枝を落としそうになった。 積もった雪に、桃の花びらが散った。 #試衛館の青春
2013-12-04 18:26:55「新選組~試衛館の青春」全国の書店で好評発売中です。 上巻 http://t.co/IdxH6Ubi7H 下巻 http://t.co/wd4NBieLwA #試衛館の青春
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